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どうか謝らないで…広島・赤松真人が見せた雄姿に「ありがとう」

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試合後の引退セレモニーで、家族から花束を贈られる広島の赤松真人

「ありがとう」、私のヒーロー:広島・赤松真人


 プロ野球の2019年シーズンが閉幕。今年も熱い戦いが繰り広げられたなか、多くの名選手たちがユニフォームを脱ぐ決断を下した。

 秋といえば、野球界にとって出会いと別れの季節。球界のあすを担う金の卵たちがドラフト会議で大きな注目を浴びながらプロへの門を叩く一方、新たに入ってくる選手がいるということは、チームを去る選手が出てくるのも事実だ。

 かつては大きな期待を背にプロの世界へと飛び込んだ選手たちも、いずれはユニフォームを脱ぐことになる。今回は、今季限りで現役引退を決断した選手たちにスポットを当てて、彼らを長く見守ってきた方々にペンを執っていただき、それぞれの思い出とともに引退する選手のことを振り返ってもらった。


「野球選手としての赤松」を見たい


 病名を公表するというのは、ある種の覚悟を必要とする。公表したその日から「○○病と闘う人」という目で見られる。その重圧は計り知れない。

 2016年12月に胃がんを患っていることを公表した時から、赤松真人を語る時には「胃がんと闘う」という言葉が常に付いてきた。

 その年、カープの25年ぶりリーグ優勝を機動力で支えたこと。鮮やかな盗塁。初のコリジョンルール適用によるサヨナラ勝ちをした6月14日の西武戦で、そのヒットを打った張本人であること……。そうした「野球選手としての赤松」を語る前に「胃がんと闘う赤松」が語られた。

 むろん、治療は大変であろうし、それが最優先事項であることは言うまでもない。けれども、病気のみに焦点を当てて赤松を語るのは何だかちょっと違う気もしたし、申し訳ない気もした。「現役を続けながら復帰を目指す」という道を赤松が選んだ以上、「野球選手としての赤松」を見たいという思いが強くなっていったのである。


甲子園に帰ってきた赤松


 病名公表から約1年半が過ぎた2018年シーズン初め。赤松は二軍の試合に代走などで出場し始めていた。

 東京在住の人間がカープ二軍の属するウエスタン・リーグの試合を観に行くのは、一軍の試合に行くよりも大ごとである。日程とにらめっこし、4月29日に行われる甲子園球場での対阪神戦に行くことを決めた。

 しかし、その試合で赤松の姿が見られる保証はどこにもなかった。現にその前の数試合、赤松は出場していなかった。具合でも悪いのだろうか。それでも試合前の練習には出ているかもしれない。一縷の望みを託して、朝一番の新幹線に飛び乗った。

 大型連休が始まったばかりということで、二軍の試合とはいえ甲子園には結構な人数が集まっていた。早速バックネット裏に席を取ると、ちょうどカープの守備練習が行われている最中であった。背番号38はグラウンドにいた。

 もともと細身の選手ではあったが、更に一回り細くなったようにも思えた。外野に走っていき、フライを捕球する赤松。しかし、投球動作に移ろうとした時、その右手からポトリとボールが落ちた。抗がん剤治療の副作用として手足の痺れが残っている、とインタビューで語っていた赤松。その影響だろうか、或いは単なる落球だろうか。そんな心配をよそに、赤松は練習を終えベンチに笑顔で戻ってきた。

 いよいよスターティングメンバーの発表。球場にウグイス嬢のアナウンスが響く。

 「1番・センター、赤松」

 ワアアッという大歓声が、カープファンからも、そして赤松の古巣である阪神ファンからも上がった。「赤松!おかえり!」という声。涙ぐむ38番のユニフォームを着た女性。病名公表以来、初めての赤松スタメン出場であった。

 その前日に一軍の試合で丸佳浩が負傷し、急遽岩本貴裕が一軍登録されたという事情もあったであろう。とにもかくにも赤松が帰ってきたのである。


その笑顔が見られただけで満足だった


 試合が始まった。1回表、先頭打者として打席に立つ赤松。阪神の先発・岩田稔の2球目を叩いた打球はセンターフライとなったが、スイングにも力が戻ってきていた。ここまで戻すのにどれだけの苦労があったのだろうか。

 守備に就いている時には、ライトの庄司隼人やセカンドの美間優槻が何となく赤松を気にかけてフォローしているようでもあった。

 3回裏、この回の阪神の先頭打者・江越大賀のフライを赤松は前進して追いかけたが、結局は美間がバックして捕球した。しかし、次打者の島田海吏のフライは、誰がどう見てもセンターの守備範囲。赤松は難なく捕球し、また観客席から歓声が沸いた。

 4回表の2打席目でサードゴロに倒れた赤松は、そのまま交代してベンチに下がった。この時も終始赤松は笑顔だった。


 この日のカープの先発・福井優也は制球が定まらず、5回を投げて3失点。一方の打線は岩田、馬場皐輔、呂彦青らの阪神の投手リレーの前に沈黙し、スコアボードに0を重ねていた。観客席ではカープのユニフォームを着た男性が、スマホで何かを見ながら吐き捨てるように呟いた。

 「あっちは『逆転のカープ』やのに、こっちはあかんな」

 同じ頃にマツダスタジアムでは一軍のデーゲーム、しかも同じ阪神戦が行われており、5回裏に菊池涼介の2点タイムリーでカープが逆転したところであった。

 その言葉を聞いた時、カープにあっちもこっちもあるかいな、と思った。現に赤松の後を受けてセンターの守備に就いた堂林翔太だって、美間だって、ついこの間まで「あっちのカープ」にいた人たちだ。




 しかし、じきに私は、パラレルワールドにいるような錯覚に陥った。もし16年のオフに健康診断を受けていなかったら、赤松は今も一軍の試合で塁上を駆け抜けていたかも知れない。でも、「40歳までに胃カメラを飲んでいなかったら、僕は死んでいた」と赤松自身が語った状況になっていたのかも知れない…。

 その時に胃カメラを飲むことを選んだことにより、今ここにいる赤松。どちらもあり得た世界であるが、後者が現実である。でもその現実の中で、赤松は笑っていた。その笑顔は、野球ができる楽しさ嬉しさが抑えきれないという笑顔だった。その顔が見られただけで、私は満足だった。

 その後、赤松はファームでの出場回数を重ね、18・19年シーズンで計104試合に出場、盗塁も7回決めた。今シーズン限りでの引退を決めた赤松は、9月27日の引退セレモニーで「一軍を目指し頑張ってきましたが、一軍に上がれず引退試合となってすみません」と語った。

 どうか謝らないで欲しいと思った。二軍の試合での数々のプレーに、きっと多くの人が励まされたはずだから。私もその一人である。


文=オギリマサホ

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