史上初!育成ドラフト指名選手の首位打者
今季は5年ぶりのリーグ制覇を果たした巨人。大黒柱の坂本勇人がプロ13年目にしてキャリア最高の40発を放つなど、リーグMVPに輝く大活躍を見せたのをはじめ、投手では山口俊が投手三冠を達成。コンディション不良で苦しんだ菅野智之に代わって奮闘した。
ほかにも、FAで加入した丸佳浩に2年続けて30本塁打をクリアした岡本和真など、主軸が期待に応える活躍を見せたなか、チームの未来を背負って立つであろう若手もアピール。なかでも注目したいのが、高卒1年目ながら一軍でプロ初安打もマークした山下航汰だ。
大阪出身・右投げ左打ちの外野手。176センチ・80キロとプロでは小柄な部類に入る体躯も、内に秘められたパワーが最大の魅力で、高校通算本塁打は「75本」という堂々たる数字を誇る。しかし、やはりそのサイズもネックとなったのか評価は高くなく、ドラフトでは「育成1位」という指名に。まずは3ケタの番号からのスタートとなった。
それでも、開幕後はすぐにプロの水にも慣れていき、5月には月間打率.378の活躍でファームの月間MVPも獲得。すぐに支配下契約を勝ち取って見せる。ファームでのアピールが実を結び、シーズン終盤には一軍デビューのチャンスも。打率こそ.167と一軍の壁にぶつかったものの、育成契約からはじまった高卒1年目のシーズンに支配下を勝ち取り、1年目から一軍戦に出場を果たして2本の安打を放ったというのは、大きな収穫だったことだろう。
イースタン・リーグでは90試合の出場で打率.332(319-106)をマークし、見事に首位打者のタイトルも獲得。これは育成ドラフトで指名された1年目の選手としては、史上初という快挙である。
ますます来季以降への期待が膨らむところだが、ここでひとつの疑問が。過去の“イースタン首位打者”はその後、一軍でどんな活躍を見せたのだろうか。直近10年間で調査してみた。
やはり活躍者は多数も…?
今回は過去10年(=2009年から2018年)のイースタン首位打者に注目。彼らが何年目に首位打者に輝き、その翌年の成績はどうなったのか。また、プロでの通算成績もあわせて紹介していこう。
<2009年>
フアン・ムニス(ロッテ/1年目)
[翌年成績] 14試 率.136(22-3) 本0 点1
[通算成績] 14試 率.136(22-3) 本0 点1
<2010年>
森岡良介(ヤクルト/8年目)
[翌年成績] 52試 率.256(86-22) 本0 点6
[通算成績] 557試 率.241(1204-290) 本7 点97
<2011年>
銀次(楽天/6年目)
[翌年成績] 126試 率.280(432-121) 本4 点45
[通算成績] 1028試 率.295(3723-1100) 本28 点418
<2012年>
隠善智也(巨人/6年目)
[翌年成績] 1試 率.000(1-0) 本0 点0
[通算成績] 79試 率.265(117-31) 本0 点7
<2013年>
荒木貴裕(ヤクルト/4年目)
[翌年成績] 55試 率.275(149-41) 本2 点12
[通算成績] 474試 率.238(905-215) 本2 点104
<2014年>
高濱卓也(ロッテ/7年目)
[翌年成績] 33試 率.286(42-12) 本0 点4
[通算成績] 195試 率.222(374-83) 本3 点28
<2015年>
青松慶侑(ロッテ/11年目)
[翌年成績] 一軍出場なし
[通算成績] 26試 率.214(42-9) 本1 点5
<2016年>
井上晴哉(ロッテ/3年目)
[翌年成績] 35試 率.230(113-26) 本0 点11
[通算成績] 373試 率.260(1223-318) 本52 点198
<2017年>
高濱祐仁(日本ハム/3年目)
[翌年成績] 一軍出場なし
[通算成績] 4試合 打率.154(13-2) 0本塁打 0打点 0盗塁
<2018年>
石川慎吾(巨人/7年目)
[翌年成績] 55試 率.257(70-18) 本4 点10
[通算成績] 274試 率.223(534-119) 本12 点53
このなかでは銀次や井上晴哉が後のレギュラーへと飛躍を果たし、荒木貴裕や石川慎吾といったところも代打の切り札的な役回りで一軍に定着。過去20年まで広げると青木宣親の名前も出てくるように、飛躍のキッカケとした選手も大勢いる。
一方で、なかには「二軍では安定して能力が発揮できるが…」というタイプも。一軍で定位置を掴むためには、もう一歩・二歩の成長が不可欠。まだ若い山下には是非とも乗り越えてもらいたいステップだ。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)