「2010年代」の最強投手は…?
12月も折り返し地点が近づき、気が付けば2020年もすぐそこ。いよいよオリンピックイヤーがやってくる。
こうした区切りにあまり深い意味はないのだが、今年で「2010年代」が終了。特にこの10年は分析技術が進化したこともあって、野球のスタイルや作戦・戦術、また局地的なトレンドの移り変わりも激しかったように思う。選手に求められる役割なども都度変わってくるなか、時代に適応しながら継続して結果を残し続けてきた選手というと、どんな名前が挙がってくるのだろうか。
というわけで、今回は2010年~2019年の通算成績に注目。打者編につづいて、今回は投手の各部門をランキングでまとめてみた。
シャーザーが二冠!
▼ 2010年代・勝利数トップ5
1位 161勝 マックス・シャーザー(25~34歳)
2位 160勝 ジャスティン・バーランダー(27~36歳)
3位 156勝 クレイトン・カーショー(22~31歳)
4位 155勝 ザック・グリンキー(26~35歳)
5位 148勝 ジョン・レスター(26~35歳)
この10年では4名の投手が150勝以上をマーク。1勝差の争いを制したのはシャーザーだった。
思えば、この1位と2位は2010年から2014年の5シーズンをともにデトロイトで過ごしたチームメイトであり、そのチームには“最強打者”の方で取り上げたミゲル・カブレラもいた。いま思い返して見ると恐ろしい。
左腕のトップは3位にランクインしたカーショー。ここ数年は故障のため登板数は減少傾向にあったが、それでも年平均15勝以上を挙げているのは立派だ。
そして、4位はグリンキーと、1位・2位に続いて3位・4位も“元チームメイト”という構図に。グリンキーはここ10シーズンの間に6球団を渡り歩き、そのうえで155勝をマークしているのだからこれもすごい記録だ。
▼ 2010年代・奪三振数トップ5
1位 2452個 マックス・シャーザー(25~34歳)
2位 2260個 ジャスティン・バーランダー(27~36歳)
3位 2179個 クレイトン・カーショー(22~31歳)
4位 2010個 クリス・セール(21~30歳)
5位 1872個 ザック・グリンキー(26~35歳)
勝利数に続いて、こちらもシャーザーがNo.1に。それどころか、トップ3がまったく同じ並びとなった。
勝ち星では1差と僅差になったが、この奪三振部門ではシャーザーが断トツ。2012年から8年連続で200奪三振以上をマークし、そのうち5シーズンは250超え。2018年はシーズン300奪三振も記録している。
また、勝利数ランク外から唯一食い込んできたセールは、デビューからの2シーズンはリリーフでの起用がメインだった。そんな中で2015年・2017年と2度の奪三振王に輝くなど、ハイペースで三振を量産して4位に入った。
防御率は断トツのカーショー
▼ 2010年代・防御率トップ5
1位 2.31 クレイトン・カーショー(22~31歳)
2位 3.03 クリス・セール(21~30歳)
3位 3.06 ジョニー・クエト(24~33歳)
4位 3.10 ジャスティン・バーランダー(27~36歳)
5位 3.12 マックス・シャーザー(25~34歳)
※1400投球回以上
防御率部門では、カーショーが唯一の2点台で堂々の1位。2.31という圧巻の成績を残した。
2位のセールはカーショーに勝つことは難しかったかもしれないが、今季の不調(=防御率4.40)がなければ2点台は狙えたところ。
また、意外だったのは、上位常連のバーランダーとシャーザーを抑えて3位に入ったクエト。好不調の波が激しいイメージもあったが、2位とも僅差という好成績を残している。
▼ 2010年代・セーブ数トップ5
1位 346セーブ クレイグ・キンブレル(22~31歳)
2位 301セーブ ケンリー・ジャンセン(22~31歳)
3位 273セーブ アロルディス・チャプマン(22~31歳)
4位 257セーブ フェルナンド・ロドニー(33~42歳)
5位 217セーブ ジョナサン・パペルボン(29~35歳)
セーブ部門で上位に入ったのは、いずれも若くしてクローザーの位置を掴んだ投手たち。なかでもキンブレルはひとり飛びぬけた成績を残している。
続くジャンセンとチャプマンに関しては、抑えに定着したのが2012年と少し遅れた分が痛かったか。それでも、トップ3に入ってくるというのは立派である。
そんな若い投手たちのなかで、この10年で10球団を渡り歩いたロドニーの257セーブというのも触れないわけにはいかない。33歳という年齢からこれだけのセーブを積み上げたことに大きな価値がある。
5位のパペルボンに関しても、2016年のシーズン終了後に35歳の若さで引退した投手。実働7シーズンで217セーブを挙げ、トップ5に入ってきた。
投手編でも“最強投手”をひとり挙げるとするならば、やはり勝利・奪三振の二冠に輝くシャーザーが一歩リードのようにも見えるが、そのシャーザーと各部門で競ったバーランダーも、圧倒的な防御率を誇るカーショーも見逃せない。ちなみに、個人的にひとりだけ選ぶとしたら、カーショーを推したい。
このオフには“投手史上最高額”の超大型契約が話題を集めるなど、「2020年代」も目が離せないメジャーリーグ。“次の10年”の主役に躍り出る選手はいったい誰なのか、今から楽しみだ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)