コラム

広島・鈴木誠也に見る落合超えの可能性【記録から見る19年の球界】

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第4回:最強の右打者へ


 今や、稲葉ジャパン不動の4番打者。広島の鈴木誠也が初の首位打者に輝いた。最高出塁率のタイトルと併せて2冠だ。今秋に行われた国際大会の「プレミア12」でも世界一に貢献してMVPを獲得、よほどのことがない限り来年の東京五輪でも4番の座に君臨することになるだろう。

 東京の二松学舎大付属高からカープのユニホームに袖を通して7年目。まだ25歳なのに、今季の首位打者のタイトルはとてつもない記録と勲章を鈴木にもたらした。すでに2016年から打率3割超えをマークして今季まで4年連続。高卒4年目以内という早期から4年以上、この記録を継続した選手は過去に4人しかいない。

 中西太(西鉄)、掛布雅之(阪神)、イチロー(オリックス)と松井稼頭央(西武)だ。イチローの場合はプロ3年目から7年連続で記録し、そのままメジャーに行ってしまったので別格だが、名だたるスーパースターの仲間入りを鈴木も果たしたと言える。さらに右打者に限ると、1955年~58年の中西以来61年ぶりの快挙であることを付け加えておきたい。

 若くして「安打製造機」の定評もあるが、今季終了時の通算打率は.3173(2111打数670安打)となった。これもまた凄い数字だ。通算2000打数以上の打者で歴代11位に躍り出る。トップは「.353(3619-1278)」のイチロー。以下、「.337(2208-743)」のバース(阪神)、「.329(4395-1446)」の青木宣親(ヤクルト)らの名前が並ぶが、ここでも右打者に限ると、ローズ(横浜)の「.325(3929-1275)」と、ブーマー(阪急他)の「.3174(4451-1413)」に次ぐ3位だ。

 特筆すべきは、落合博満(ロッテ他)の「.3108(7627-2371)」を抑えて日本人の右打者では最高打率に躍り出たことだろう。


首位打者だけでなく…


 ちなみに右打者限定では、ミスタープロ野球の長嶋茂雄(巨人)の生涯打率が「.305」で、元祖ミスター赤ヘルの山本浩二は「.290」。野球選手の成績とは、上り坂もあれば下り坂もある。晩年に数字が落ちてくるとは言え、25歳の鈴木は、これから“全盛期”と“円熟期”を迎える。野球というスポーツは左打者有利に出来ているにもかかわらず、右打席でこれだけの成績を残せるのは稀有な才能と言っていいだろう。

 加えて、鈴木には安打だけでなく長打力もある。広島の球団本部長である鈴木清明は「(近い将来)三冠王をとる可能性がある」と語る。今季は28本塁打87打点に終わったが、キャリアハイは30本塁打(18年)、95打点(16年)。本塁打がもう少し量産できれば、必然的に打点もついてくる。三度の三冠王を記録する落合の牙城は高いが、今後の成長を考えれば決して夢とは言えない。

 12月には球団野手歴代最高の2億8000万円(1億2000万円増)で更改した。さらに前新体操日本代表の愛理夫人(旧姓畠山)とハワイで挙式、最高の形で令和元年を締めくくった。

「個人的には良かったけれど、チームは4位に終わってしまったのが面白くない。このチームにお世話になっているので優勝できるよう頑張ります。家族が出来て守るものもありますから」

 今季はシーズン序盤、極度の不振に喘いだ時期がある。チームの柱でもあったベテラン・新井貴浩の引退や開幕直後に勝てない日々が続いたことで、4番の重圧に本来の打撃を見失っていた。そんなピンチを自ら打開していったのだから、来季以降は貴重な財産となるだろう。

 毎年、恒例となっていたソフトバンク・内川聖一らとの自主トレを「卒業」し、新春には久しぶりに堂林翔太らのチームメイトを連れて汗を流すと言う。チームのリーダーというだけでなく、球界を背負って立つ船出と言えそうだ。

 2年連続の首位打者と王座奪還へ、そして東京五輪の4番として金メダル獲得へ。鈴木が確かな足跡を残せば記録もまたついてくる。レジェンドへの旅は、すでに始まっている。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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