昨年の甲子園で“最速151キロ”をマーク
新型コロナウィルスの感染拡大によって、“無観客”での開催で検討を進めること発表された第92回選抜高等学校野球大会。プロ野球の開幕延期も決まり、3月11日に予定される最終決断に注目が集まる状況だが、出場選手の中からプロ注目の逸材を紹介していきたいと思う。第2回は世代ナンバーワンの呼び声高い本格派右腕だ。
▼ 中森俊介(明石商)
【投 打】右投 左打
<2019年秋季大会成績>
7試合(41回1/3)被安打35 奪三振43 与四死球14 自責点9
防御率1.96 / 奪三振率9.36 / 与四死球率3.05
今年の高校生投手の中で、現時点で名実ともにナンバーワンと言えるのがこの中森だ。過去3度出場した甲子園で既に通算5勝をマークしている。スピードも1年夏に145キロ、2年春に147キロ、そして昨年夏には大台を突破する151キロをマークした。
2年夏の甲子園で150キロ以上のスピードをマークしたのは安楽智大(済美⇒楽天)の155キロ、田中将大(駒大苫小牧⇒楽天)、大谷翔平(花巻東⇒日本ハム)、奥川恭伸(星稜⇒ヤクルト)に次ぐ5人目で、過去の4人はいずれもドラフト1位でプロ入りを果たしている。
しかし、昨年夏の中森は決して本調子だったわけではない。右肘に不安があったためだろうか、初戦の花咲徳栄戦ではスピード、コントロールともにもうひとつで、続く宇部鴻城戦では先発を回避。151キロをマークした八戸学院光星戦もリリーフでの登板だった。
秋もその影響が残り、兵庫県大会の決勝、報徳学園戦では序盤に4点を失い4回途中で降板している。ただ、そんな状態でも修正して、ある程度のピッチングができる完成度があるのが、中森の強みだ。近畿大会の初戦では東山を相手に11奪三振完投勝利。準々決勝の大阪桐蔭戦では西野力矢に逆転スリーランを浴びて3対4で敗れたものの、強力打線を6安打に封じ込めている。
チームに流れを呼び込む“大きな強み”
冒頭ではスピードについて触れたが、それ以上に光るのが高校生離れした投球術である。組み立ての軸となる変化球はスライダーだが、場面に応じてスピードと曲がりの大きさに微妙に変化をつけることができている。また、試合の勝負所でギアを上げて、チームに流れを呼び込むことができるのも投手としての大きな強みである。
フォームに関しても、無駄にひねったりかついだりする動きがなく、スムーズな流れで腕が振れるのが長所。メリハリと躍動感があり、好調時のピッチングは見ていて爽快さを覚える。ただその一方でもちろん課題もある。
本人も体の柔軟性が乏しいと語っているように、不調時には下半身の粘りが感じられない。それを補おうとして腕の振りに頼ったことが昨年の右肘の不調に繋がった可能性も考えられるだろう。
早くから甲子園で活躍しており、完成度が高いことで今後の成長を懸念する声も聞こえてくる。しかし、前述したようにそんな中でもしっかりスピードアップしてきているところはさすがという他ない。さらに言えば、プロでもなかなか身につけることが難しい落ち着いたマウンドさばきに加えて、クレバーさを既に備えていることは大きな魅力である。
自身4回目の甲子園となる今年の選抜大会。粗を探すような“外野の声”を封じ込める快投を見せてくれることを期待したい。
記事提供:プロアマ野球研究所