コラム

日米球界、危機の中にある違い【非常事態下のベースボール】

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MLBのロブ・マンフレッド コミッショナー

第3回:NPBとMLB


 エンゼルスのJ・マドン監督が報道陣との電話会見で二刀流復活を期す大谷翔平選手について言及。コロナウイルスの感染が全米に広がる中でMLBはすでに、オープン戦の中止と26日(現地時間)に予定されていた開幕戦の延期を決めているが、エ軍の地元・アナハイムに戻って調整を続ける大谷に関して「日本に戻る許可は得ている」と語った。


 本人が帰国するかは明らかにされていないが、同監督は大谷の今後に対して「今回の延期で投手として開幕に間に合うかも知れない。当初より投手としての出場が増えることになるだろう」と明るい見通しも明らかにしている。

 右ヒジの手術に次いで、昨年秋にはヒザの手術も行った大谷は、今季のアリゾナキャンプでも、投手としてはスローペースから徐々に段階を踏んで慎重な調整を行ってきた。

 元々、首脳陣の青写真では5月中旬に投手として本格復帰を予定していたが、メジャーの開幕も4月より5月以降にずれ込むことが有力視されている。中には7月開幕説も流れているほどだ。

 ファンにとっては待ち遠しい本番も大谷にとっては調整時間が増えたことになる。こうなれば、いきなり快刀乱麻のピッチングとど迫力の打撃で二刀流の神髄を見せてもらいたいものである。


課題と向き合う好機に


 同じコロナ危機に悩む日本では、4月の開幕を目指しているため、米国のようにキャンプ地に残って調整を続ける者、地元に戻って休養に充てるなどの「仕切り直し」とは行かない。数多くの練習試合を継続して緊張の糸を切らさないように首脳陣はコンディション維持に腐心している。

 今や、世界中を恐怖に陥れるコロナ・パンデミック。2月から本格流行の日本に対して米国は3月からとあって、野球選手の調整法は一概に比較できないものの、それ以外の危機管理の違いは興味深い。

 MLBでは、すでに個々の調整を強いられるメジャーリーガーに対して週に1100ドル(約11万7700円)の手当て支給を決めている。また、MLBと選手会で新型コロナウイルスに苦しむ人々へ慈善団体を通じて100万ドル(約1億700万円)の寄付を発表。さらに開幕が延期されたことを受けて全30球団が球場の従業員らに対して各100万ドルの寄付も明らかにされた。

 変わったところでは、レッズのT・バウアー投手がキャンプ地のアリゾナでチャリティー草野球大会を開催、この模様をウェブページに流して寄付金を募っている。日本でもアスリートによるチャリティーや支援活動は年々、盛んになっているが米国のチャリティー文化と意思決定の速さは目を見張るものがある。

 では、MLBはなぜスケールの大きい果断の策を速やかに実行できるのか? 日本の野球機構(NPB)とは懐具合が格段に違うからだ。

 野球を興業として見た場合、収益の道はチケット、グッズ、スタジアム飲食、スポンサーに放映権などが主な柱である。文献によれば1995年時点でMLBとNPBの収益に大差はなかったという。それが昨年のNPB決算は5億7000万円の黒字に対して、MLBはケタが違う。同年の収入は107億ドル(1兆1700億円)に達している。

 放映権やグッズの独占契約を長期間結ぶことで巨万の収益を手に。さらに日本や英国などで主催ゲームを行うグローバルビジネス、ネットで世界中に売り込むオンラインビジネスなど、新しい時代への対応を着々と進めている。

 一方、NPBの場合は収益の道が限られている。各球団からの拠出金と日本シリーズ、オールスターゲームの主催などが主財源で米国方式のビジネスも模索しているが、まだまだ道半ばが現状だ。同じコミッショナー職でもMLBが強いリーダーシップを有するのに対して、NPBは12球団の利害を調節する行司役の感は否めない。緊急時にこそ強いリーダーが求められる。

 日本、いや世界を揺るがす危急の時にスポーツ界は何を発信して、どんな独自の打開策を示すことが出来るのか? 日本球界にとって今回の非常事態は今後の課題に向き合うまたとない時なのかもしれない。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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