コラム

侍ジャパン・稲葉篤紀監督と五輪延期余波【白球つれづれ】

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侍ジャパンの稲葉監督と金子コーチ

白球つれづれ2020~第13回・課される2つの使命!?


 今年夏に予定されていた東京オリンピック・パラリンピックが新型コロナウイルスの感染拡大により2021年夏に延期された。これに伴い、世界中のスポーツが延期や中止の事態に追い込まれている。

 日本のプロ野球も最初は3月20日に開幕予定だった。その後の情勢を判断して4月24日を基本線とする案でまとまったが、これとて実施を危ぶむ声が聞かれる。メジャーリーグに至っては5月開幕案が今では7月以降にずれ込むという見通しがもっぱらだ。

 各競技団体は五輪の延期に伴い、強化スケジュールや予選方法の見直しに迫られているが、我らが侍ジャパンも例外ではない。稲葉篤紀監督以下スタッフの契約は本来なら今年の五輪終了時まで。そこで新たな対応に迫られることになった。

 すでに、侍ジャパンの山中正竹強化本部長は「引き続き、お願いしようと思っている。稲葉監督にはこれまでの積み重ねがあり、ステップバイステップで順調に来ている」と全幅の信頼を寄せており、稲葉監督も続投に前向きな姿勢と言われている。

 17年7月に代表監督に就任。同年のアジアプロ野球チャンピオンシップの優勝を皮切りに18年の日米野球で5勝1敗の好成績。昨年11月にはプレミア12大会でも侍ジャパンを10年ぶり世界一に導いた。ソフトバンクの周東佑京選手の俊足に着目した一芸主義や、西武の外崎修汰選手を内外野問わずにユーティリティープレーヤーとして活用するなど、ち密な世界戦略は高く評価されてきた。しかし、今後1年の延期は稲葉ジャパンにとって大きな難題も抱え込むことになる。


4年に1度のビッグイベント


 最大のポイントは来年1年間の中にふたつのビッグイベントを迎えることだ。現時点で3月開催が決まっているWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)と7~8月に予定される五輪野球。前者はバリバリのメジャーリーガーも出場する真の世界一決定戦、後者は金メダルの名誉がかかっている。まして東京開催なら日本の悲願と言ってもいい。

 今季も五輪に備えて、本来なら3月開幕予定だったために選手は早めの調整を強いられた。それならWBCでも同じと考える向きもあるかもしれない。だが、長丁場のペナントレースをにらんだ調整と目の前の世界一の戦いでは仕上げの強度も心身の緊張もあまりに違う。ここでピークを迎えた選手が再び4カ月後の五輪に照準を合わせるのも至難の業だ。

 さらに秋の日本シリーズまで考えると代表選手は例年の何倍もの苦労を強いられることになる。それを束ねる稲葉監督以下のスタッフも同様だ。

 球界では今年夏の五輪で金メダルを獲得して稲葉監督は来季から日本ハム監督に就任することが既定路線のように語られていた。昨年のペナントレース5位に終わった栗山英樹監督は退団を決意して「進退伺」を出している。球団はこれを拒否して今季の続投が決まった。加えて稲葉ジャパンのスタッフを見ると日本ハムの色の濃い内閣だ。

 稲葉自身が現役引退後も日本ハムのSCO(スポーツ・コミュニティー・オフィサー)を務めるだけでなく、ヘッド格の金子誠は現役の日ハムコーチ、投手コーチの建山義紀氏も日ハムOB。仮に稲葉が古巣の監督に就任してもスムーズに移行できる下地は敷かれていると見られていたわけだ。ところが、今回の五輪延期とそれに伴う侍ジャパン監督続投は思わぬ波紋を広げる。

 もし、今季も日本ハムの成績が振るわなかった場合に現首脳陣の処遇はどうするのか? 仮にWBCも五輪でも思うような成績があげられなかった時に稲葉監督の評価にどう影響を及ぼすのか?

 五輪選手選考のため、キャンプから精力的に動いてきた指揮官も、練習すらままならない現状ではお手上げ、海外視察だって当分は出来ない。今は1年の延長を前向きにとらえて準備するしかない。

 打倒メジャーのWBCと国民の宿願でもある金メダル奪取。ひとつだけでも胃の痛くなるほど身を削る監督業。稲葉に重い十字架が課せられる。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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