昨季奪三振率10.69を誇る若き「幕張のドクターK」
2019年シーズン、大きな飛躍を果たした選手のひとりが「幕張のドクターK」とも呼ばれるロッテの種市篤暉投手(21)。昨季、高卒3年目だった種市は26試合(先発17試合)に登板し、8勝2敗2ホールド、防御率3.24の好成績を残した。
なかでも目を引く数字が、「10.69」という高い奪三振率だ。昨季は千賀滉大(ソフトバンク)が奪三振率11.33のプロ野球新記録を樹立したが、種市の数字も千賀のそれに見劣りしないものがある。その種市は、自主トレを行っていた1月に「160キロを目指している」と語り、球速アップを目標のひとつに掲げていることが報じられている。
プロでの種市の最速は153キロ。2種類のスライダー、千賀の「お化けフォーク」を思わせるフォークと直球との組み合わせにより、次々と三振を奪っていくさまは爽快だ。もちろん、投球の軸であり本人がもっともこだわっている球種はストレート。その球速が上がれば、さらに奪三振率が上がる可能性は高い。
もちろん、ただ球が速ければいいというわけではないし、球速は出なくてもプロできっちりと実績を残している投手も多い。とはいえ、「豪速球」「快速球」といった言葉の響きには他にはない魅力があり、小細工なしの直球勝負も野球ファンを興奮させるものだ。
2016年CSで大谷翔平が160キロ台を連発
では、種市が目標に掲げている160キロを先んじて達成し、野球ファンを大いに興奮させた「先輩」たちを振り返ってみよう。以下は、日本球界において球速160キロを記録した日本人投手の球速ランキングだ。
【日本人投手球速ランキング】
1位:165キロ 大谷翔平(日本ハム)2016年10月16日
2位:161キロ 由規(ヤクルト)2010年8月26日
2位:161キロ 千賀滉大(ソフトバンク)2019年3月29日
2位:161キロ 国吉佑樹(DeNA)2019年4月6日
5位:160キロ 藤浪晋太郎(阪神)2016年9月14日
日本球界最速記録を持つのは大谷翔平(米エンゼルス)。その球速は、由規(ヤクルト)、千賀、国吉佑樹(DeNA)が持つ2位の161キロを大きく上回る165キロだ。
その大記録が飛び出したのは、2016年のパ・リーグCSファイナルステージ第5戦だった。勝てば日本シリーズ出場が決まる大一番、大谷は「3番・DH」で先発出場。しかし、7-4でリードしていた9回、栗山英樹監督は大谷のDHを解除させてマウンドに送り込んだ。
すると、先頭の松田宣浩(ソフトバンク)への初球でいきなり163キロ、3球目に164キロをマークし、球場をどよめかせた。そして、迎えた吉村裕基(ソフトバンク)に投じた初球が165キロに到達。続く本多雄一(ソフトバンク)の打席でも165キロを記録するなど、まさに圧巻の投球で三者凡退に抑え、日本シリーズ出場に花を添えた。
その大谷も含め、日本人投手が160キロ以上の球速を記録したのはいずれも2010年代。体格や技術の向上、投球フォームやトレーニングの研究が進んだことがその背景にあるのだろう。近年は日本人投手の球速が急激に上がってきている印象だ。
果たして、種市もこのランキングにその名前を刻むことができるのか。21歳の若き奪三振マシーンの成長に期待したい。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)