2019.09.14 14:00 | ||||
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昨季飛び出した34年ぶりの記録
プロ野球の2019年シーズンにおけるハイライトのひとつは、ノーヒットノーランではないだろうか。
昨季は、千賀滉大(ソフトバンク)、大野雄大(中日)と、ふたりのノーヒットノーラン達成者が現れた。それも、9月6日に千賀が達成したわずか8日後の9月14日に大野が達成。同年同月に複数の投手がノーヒットノーランを達成したのは、1985年以来34年ぶりのことだった。
ちなみに1985年には、6月4日に郭泰源(西武)が、その5日後の6月9日に田中幸雄(日本ハム)が達成している。
そもそも、ノーヒットノーラン自体、そう頻繁にあることではなく、何年も達成者が現れないシーズンが続くことも珍しくない。以下は、そのレアな大記録を、2000年以降のシーズンに達成した投手たちだ。
【ノーヒットノーラン達成者】※2000年以降
2000年 4月 7日:バンチ (中日)対横浜
2000年 6月20日:エルビラ(近鉄)対西武
2002年 8月 1日:川上憲伸(中日)対巨人
2004年10月 4日:井川 慶(阪神)対広島
2006年 5月25日:ガトームソン(ヤクルト)対楽天
2006年 9月16日:山本 昌(中日)対阪神
2012年 4月 6日:前田健太(広島)対DeNA
2012年 5月30日:杉内俊哉(巨人)対楽天
2012年10月 8日:西 勇輝(オリックス)対ソフトバンク
2013年 6月28日:山井大介(中日)対DeNA
2014年 5月 2日:岸 孝之(西武)対ロッテ
2018年 7月27日:山口 俊(巨人)対中日
2019年 9月 6日:千賀滉大(ソフトバンク)対ロッテ
2019年 9月14日:大野雄大(中日)対阪神
達成者は20シーズンで14人。そのうち、中日の投手がなんと5人を占める。また、中日のほか、セ・リーグ球団の投手が10人と、自身も打席に立たなければならないという面もあるにせよ、DH制がないセ・リーグの投手のほうがパ・リーグの投手に比べてノーヒットノーランを達成しやすい側面はありそうだ。
2018年CSで魅せた巨人・菅野智之
一方、上記のリストには入っていないが、近年でインパクト抜群だったのは、菅野智之(巨人)。菅野は、レギュラーシーズンではなく、ヤクルトと対戦した2018年CSファーストステージ第2戦に登板し、CSファイナルステージ進出をノーヒットノーランで決めた。
「ポストシーズン初」「平成最後の」といった形容句をつけられ、メディアでも大きく取り上げられたことを覚えている野球ファンも多いだろう。
このときの菅野は、レギュラーシーズン最終盤から中4日の登板が続いていた。その試合の立ち上がりには変化球主体の、のらりくらりといった投球スタイルで入ったのも、省エネを考えてのことだったのかもしれない。
ところが、ヤクルト打線が2巡目に入ると一転して直球主体の投球を披露。そして、3巡目になると再び変化球主体の投球に変えた。捕手・小林誠司のリードの影響もあっただろうが、まるで自分で自分をリリーフしているような変幻自在の投球術によって、大一番での勝利を、ノーヒットノーランという大きなおまけつきでチームにもたらした。
この年は、投手3冠に加えて2年連続での沢村賞に輝き、菅野が球界最高の投手に成長したシーズンであった。しかし、昨季は11勝を挙げながらも前年より大きく成績を落とし、本人としては不本意なシーズンだったはずだ。
菅野は、再び輝きを取り戻すべく、大胆なフォーム改造に取り組んでいる。あのノーヒットノーランを超えるような投球でファンを魅了してくれるのか――。まだ先は見えないなかだが、シーズン開幕を心待ちにしたい。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)