「6.19」に向かって…
プロ野球の開幕が6月19日に決まった。球音が消えた“非日常”から一転、ここから景色は変わってくる。
本番まですでに1カ月を切っており、選手の動きとともに「日常」が徐々に戻る。6月2日からは12球団一斉に、練習試合もスタートし、調整ペースは一気に上昇。レギュラークラスの選手は別として、ポジションの確約されていない選手にとっては、サバイバルに再び号砲が打ち鳴らされる。予定されるのは、1チーム計12試合。限られた機会で、最大限のアピールが求められる。
タイガースで言えば、し烈を極めそうなのが開幕ローテーション争いだ。
当初の開幕前だった3月時点でも混戦模様だった上に、現在は少なからず顔ぶれにも変化が見える。23日に65日ぶりとなる集合練習が再開された際、矢野監督はあらためてエース・西勇輝の開幕投手を明言。ただ、その他については明言することなくサバイバルを一層、強調した。
カギ握る、「投手力」の運用
ここで整理してみよう。
実績で言えば、昨年9勝の青柳晃洋、次代のエース候補である髙橋遥人の名前が挙がり、春季キャンプでアピールに成功した新助っ人のジョー・ガンケルが続く構図。チームの活動休止前まで、実に6試合をまたいで連続無失点を20イニングまで伸ばしていた11年目の秋山拓巳も、頭一つ抜け出そうとしていた。
限りある外国人枠を活用し、ガンケルとの併用プランを温めていたロベルト・スアレス、地道に結果を残す左腕の飯田優也も奮闘。そして、忘れてならないのは8年目を迎えた藤浪晋太郎だ。
3月の時点では競争に加わっていたものの、二軍戦でも失点するなど決め手を欠き、同月下旬には新型コロナウイルスに感染し約2週間の入院を余儀なくされた。
ブランクなどもあって自主練習再開後も鳴尾浜で汗を流しており「脱落」にも見て取れたが、今月19日に甲子園組へ合流。24日に行われたシート打撃では、打者5人から4奪三振の快投で早速、存在感を示した。近年は不振に喘ぎ、背水の決意で臨んだシーズンを前にしてのコロナウイルスに感染。退院後に発した「野球で取り返したい」という言葉を全身に刻みつけ、腕を振る背番号19が本来の力を発揮すれば、先発ローテ入りは一気に近づいてくる。
他にも、3月上旬は中継ぎ待機していた岩貞祐太が先発に再転向。1球の重み、怖さを知ったブルペンでの経験も武器に争いに割って入る勢いでいる。
鳴尾浜に目を移せば、ベテランの中田賢一と岩田稔が控え、故障組では21歳の才木浩人、そしてオネルキ・ガルシアも着実に復帰への歩みを進める。
豊富な顔ぶれを見れば、6月19日以降もローテーションの陣容は固定されず、先発陣の競争は続いていくと予想する。例年よりも先発投手は開幕までにイニングを消化することが難しいため、シーズン当初は小刻みな継投が増える可能性も十分。リーグ屈指の陣容を誇る心強いブルペン陣の存在だけでなく、開幕ローテから漏れた投手が「第2先発」として重宝されることもあり得る。
潤沢な「投手力」の運用が、開幕ダッシュのカギを握りそうだ。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)