セ・リーグの新人王候補は…?
当初の予定から遅れること3カ月…。プロ野球の2020年シーズンが、6月19日(金)に幕を開ける。
開幕の延期にはじまり、ペナントレースも短縮されて120試合制に。ほかにも、一軍登録枠や外国人枠の特別ルールなど、これまでになかった要素が多々絡み合い、例年以上に想像のつかない戦いとなる。
そこで、今回は開幕直前の特別企画として、2020年の「新人王争い」に注目。アマチュア野球の識者としてドラフト会議中継にも出演するなど、野球ファンにお馴染みのスポーツライター・小関順二氏と西尾典文氏をゲストに迎え、練習試合を踏まえたうえでの“新人王予想”を繰り広げてもらった。
まずは、セ・リーグの新人王について大予想!
心配も多い巨人先発陣の救世主に?
―― まずは、昨季のリーグ王者・巨人から。2年目ですが、戸郷翔征(18年6位/聖心ウルスラ学園)が開幕ローテに入って来そうです。
西尾:まだちょっと1シーズンは持たそうな気がするんですよね。線も細いですし、投げ方もアームっぽいところがあるので、どこかでケガをしそうという不安がちょっとあります。
小関:たしかに、あまりフォームが良くないので、1シーズン投げる安定感という点でどうかなと。ボールは速いですけど、変化球がフォームで分かってしまうようなところもあるので、新人王を獲得するほどの活躍というと…。
―― ほかの選手はどうでしょうか。
西尾:投手では、堀岡隼人(16年育成7位:青森山田)が面白いと思います。一軍での実績はないですが、フォームにクセもなく、二軍では結構良いボールを投げてました。一軍でリリーフとして開花する可能性はあるかもしれないですね。野手では、山下航汰(18年育成1位:健大高崎)が面白いと思っていたのですが、有鈎骨骨折があって長引きそうなのがちょっと残念ですね。
小関:昨年のドラフトも高校生中心で将来性を重視したものでしたから、今年の新人王が巨人からというのはちょっと厳しい気がしますね。
右の大砲に注目
―― DeNAはドラフト2位の坂本裕哉(立命大)が開幕ローテに入って来そうです。
西尾:大学の先輩・東克樹と同じ左腕ということで期待されているのかなと思うんですが、大学時点では大分差があるなという印象でした。なので、どうしてもその時のイメージに引っ張られてしまいますね…。
小関:私も坂本は大学時代から見る機会が多かったんですけど、同じくあんまりピンとこなかったんです。
西尾:先輩の東と、あとは上茶谷大河もケガをしていますから、チャンスはあるでしょうね。
―― 野手ではどうでしょう。
西尾:個人的には、伊藤裕季也(18年2位/立正大)に新人王の可能性を感じますね。ただ、使ってもらえるか、が問題。ポジションがセカンドにサード、ファーストですから。そこにはソト、宮崎、ロペスがいます。ベテランのロペスをちょっと休ませようとか、誰かが怪我した時にチャンスが巡ってくれば、伊藤はおもしろいと思いますね。
―― 伊藤の守備はどうなんですか?
西尾:守備範囲は広くないですけど、悪くはないんですよ。セカンドをやらせるなら、ソトよりは良いと思います。
小関:フルシーズン起用したら、20本塁打以上を打つ力はあると思いますよ。
阪神「高卒コンビ」の期待は来年以降?
―― 続いて阪神ですが、巨人と同じように昨年のドラフトは高校生中心でした。
西尾:唯一の大学生指名だった6位の小川一平(東海大学九州キャンパス)は、良い球を投げていてすごく好きな投手なんですが、体がまだできていないので、1年持つと思えないんですよね。大学も強豪というわけではないので、そこまで鍛えられていないというところも。投げ方含め、素材は良い投手ですが、「今年の戦力」かと言うとそうではない気がします。
小関:大学時代は怪我もあったり、熊本地震もあって十分な実践経験を踏めていないというのと、まだ体の線が細いというのは不安要素ですね。体が出来れば変身する気がしますけど。
―― ほかの選手はどうですか?
西尾:上位指名の西純矢(1位/創志学園)と井上広大(2位/履正社)はめちゃくちゃ楽しみです。今年の新人王かと言われると難しいとは思いますけど。西はシーズン終盤には上の方で出てくるかもしれないですね。井上も二軍の練習試合で存在感を見せています。西は来年、井上は再来年の新人王を狙えるんじゃないかと思っています。
小関:西は1年目から3勝くらいして目立っちゃうと、オフがちょっと心配になったりもしますが、来年以降が楽しみですね。
“大本命”?広島の森下は…
―― 広島には、早くから新人王の大本命と目される森下暢仁(1位/明治大)がいます。練習試合では少し打ち込まれるシーンもあったようですが…。
西尾:ちょっと不安ですが、普通に考えれば新人王の大本命で間違いないと思います。佐々岡真司新監督が欲しいと言って獲得した選手ですから、すぐに使われるのは間違いないでしょうし、我慢もしてくれると思います。去年は上茶谷大河(DeNA)と松本航(西武)が大卒1年目で7勝しましたけど、2人と比べてもスピードがあって、完成度も高い。今季は120試合に短縮されてしまいますが、例年だったら2ケタ近く勝てる力があると思いますね。
小関:大本命は揺るがないですよね。練習試合では打たれていますけど、大卒投手ですから色んなことを試しながら投げていると思うんですよ。感覚的に、このくらいだと打たれるんだな、とか。なので結果に関しては何とも思わないんじゃないですかね。フォームが良くて、球は速い、カーブはキレる、変化球は一通り持っている。こういう投手がプロで全く期待外れになる、というのは考えづらいです。
―― 2年目の島内颯太郎(18年2位/九州共立大)、3年目の山口翔(17年2位/熊本工業)はどうでしょうか?
西尾:島内はこの前ちょうど二軍で投げているのを見ましたけど、球は速かったですね。2人とも新人王を獲るかと言われると厳しいですが。
小関:山口も球は速いんですが、フォームに粘りがないというか、球持ちがよくないというか。淡々とあっさり投げてる気がしますね。150キロを投げても打たれてしまうような。
対抗は中日から
―― 中日は練習試合でもルーキーが積極的に起用されていましたね。
西尾:野手だとドラフト4位の郡司裕也(慶応大)、投手だと3位の岡野祐一郎(東芝)ですかね。この2人は森下の対抗になると思っています。岡野は森下に比べるとスピードも含めて全てちょっとずつ落ちるんですけど、社会人であれだけ結果を残してるので安心感はありますよね。コントロールもいいですし。郡司はどんどん使って欲しいですね。バッティングはかなり良いので。
―― 郡司が新人王を獲るとすれば、どれくらいの活躍が必要ですか?
西尾:100試合くらい出て打率.260、10本塁打くらいですかね。
―― まぁまぁハードル高いですね!(笑)
西尾:我慢して使えば、10本くらいは打てると思います。インサイドワークが課題とも言われてますけど、それってチームがいかに我慢できるかだと思うんですよね。阿部慎之助だって、初めの頃はケチョンケチョンに言われてましたから。郡司は高校~大学と強いチームでやっていましたから、使っていけば解決する問題だと思います。本人の問題というより、チームの覚悟の問題のような気が。
小関:私も郡司は1年目からレギュラーで使うべきだと思っています。慶応大でいろいろなタイプのピッチャーをリードしてきましたし、バッティングは4年の秋になって抜群によくなりましたよね。
―― 小関さんは2位の橋本侑樹(大商大)も評価されていますね。
小関:スライダー、カーブと縦の変化球が非常によくて、スピードもまぁまぁある。そしてフォームがいい。僕は先発で使うと面白いと思っているんですけどね。中日は若い投手が良いですが、そこに入っていく力は十分あると思っています。
―― 注目のドラフト1位・石川昂弥(東邦)は1年目からは厳しいですか?
小関:一軍でシーズン100安打できるかどうかを一軍定着の目安として考えているのですが、そう考えると6~7年目くらいまでかかるんじゃないかと思いますね。巨人の岡本和真でも、100安打を打ったのは4年目でしたからね。
―― 中日は野手を育てるのに時間がかかるイメージもあります。
西尾:そうですね。だからこそ早く使わないといけないですよね。なので、郡司も使って欲しいです(笑)
―― 最後に、根尾昂(18年1位/大阪桐蔭)は来年以降に期待でしょうか?
西尾:そう思います。来年以降だと、ドラフト5位の岡林勇希(菰野)も期待したいですね。
ダークホースはヤクルトの異色左腕
―― 最後はヤクルトです。注目はなんといっても奥川恭伸(1位/星陵)ですね。
西尾:開幕が遅れたので、ひょっとしたら出てくるかもしれないですね。7月に下で投げさせて、早ければ8月に一軍で…という感じだと思うので、新人王となるとちょっとどうかなと思いますが。
小関:球は速い、変化球は凄い、コントロールはいい。投手としての能力の高さが抜けていますから、1年目から出てきてもおかしくないですね。チームも投手力に課題があるので、監督も早い時期から使いたがると思います。故障の心配があるので、そこをどう抑えるかが大事になりますね。
西尾:去年も甲子園の後に調子を落としていましたし、この春も出遅れてましたよね。若干上半身が強いフォームということもありますし、あまり1年目から無理はさせて欲しくないですね。2年目からバリバリ一軍で、という感じが良いのかなと思います。なので、今年の新人王としてはちょっと推し辛いですよね。
―― 甲子園のスターですから、どうしても松坂大輔や田中将大の系譜で見てしまいがちですが、1年目から彼らのような活躍を期待するのはちょっと酷ですか?
西尾:能力的には問題ないと思います。しかし、彼らのようなタフさはないですよね。まぁ時代が違うというのもありますが。
―― 2位の吉田大喜(日体大)はどうですか?
西尾:先発の枚数が足りないので、3位の杉山晃基(創価大)も含めて1年目から戦力になると思います。吉田は大学で無理をさせていないので、良い意味では言えば使い減りしていないんですが、1年目からシーズンを通して投げられるかなという不安も。
―― ほかに注目している選手はいますか?
西尾:新人王というところで言えば、面白いのはソフトバンクから移籍した長谷川宙輝(16年育成2位/聖徳学園)じゃないですかね?リリーフで使われそうですが、私は先発をやらせてみたら面白いと思っています。フォームもいいですし、球もかなり速くなりましたからね。ダークホースだと思います。
小関:長谷川が新人王を競うような活躍をしたら、やっぱりソフトバンクって凄いですよね(笑)
西尾:十分ある気がします。本人は東京出身でファンクラブに入っていたほどのヤクルトファンだったみたいですし、移籍を経ての開花に期待しています。
セ・リーグ新人王予想まとめ
【本命】
森下暢仁(広島)
投手/1年目・22歳
【対抗】
郡司裕也(中日)
捕手/1年目・22歳
【注目選手】
伊藤裕季也(DeNA)
内野手/2年目・23歳
橋本侑樹(中日)
投手/1年目・22歳
岡野祐一郎(中日)
投手/1年目・26歳
長谷川宙輝(ヤクルト)
投手/4年目・21歳