チャンスで打ちたい
プロ野球がいよいよ開幕する――。当面、ファンは球場で声援を送ることができないが、選手たちは「野球ができる」喜びを胸に、熱いプレーを届けてくれるに違いない。プロ18年目となるヤクルトの雄平も、その一人だ。
通算1000安打まで残り142安打と迫っている雄平。3月に取材した際、「142本を今年中に打ちたい」と決意をにじませていた。この目標をクリアするため、1打席に対する思いを雄平はこう話してくれた。
「打ってダメな打席は基本的にはないですし、例えば大敗していても、最後の打席で打つことで次の試合につながることもある。でも、できたらチャンスで打ちたい」
レギュラーとして定着した14年から5年連続で得点圏打率3割台をキープ。勝負所で強さを発揮してきた雄平だが、昨季に限っては得点圏打率.207と低迷。その悔しさを晴らしたい思いがある。
「6番で出ていて、クリーンアップが歩かされることもあるし、チャンスの場面も多くなる。チャンスメイクというより還す役割を意識してずっとやっています。去年、得点圏で全然ダメだったので、そこは課題としてやっています」
バレンティンが抜けてチームの得点力不足が懸念される中、4番には20歳の村上宗隆が座る。若き大砲の後を打つ5番か6番に座る可能性が高い(開幕戦は6番)だけに、実績十分なベテランの役割は重要だ。
必要とされる選手でいたい
今月25日には36歳の誕生日を迎える。野球選手としてはベテランと呼ばれる年齢だが、早くからグラウンドで練習を始め、試合でも溌剌とプレーする姿は誰よりも若々しい。
「(現役を)長くやりたい。体は現実的に元気なので。長くやりたいからトレーニングもちゃんとやりますし、自分のできる限りのトレーニングをやって、何年後もできるようにやっています。とにかく必要とされる選手でいたい」
雄平が思う「必要とされる選手」とはどんな選手なのか。それは、自身が挙げた課題と直結している。
「必要とされる選手というのは得点圏で打って、勝負強いバッター。ベテランになってくるとすごく大事になってくると思いますし、もちろん打率とかはありますけど、勝負所で強い選手になりたいと近年思ってやっています」
自身の課題を明確にし、果敢に挑む。そんなひたむきな姿勢が雄平の魅力であり、ファンの心を惹きつけるのだろう。そして、朽ちることのない野球への思いが、雄平のプレーを生み出す原動力だ。
「(野球は)難しいから、楽しいです。上手くできないからこそできたときに嬉しいし、できなくても、もっと上手くなりたい、と毎日思っています」
シーズンは143試合から23試合減って120試合となった。試合数が削減されれば、それだけ目標とする142安打への道も険しくなる。しかし、そんな難局も乗り越えられる力強さが、雄平の言葉から感じられる。
かつてない状況下で迎える開幕。終わりなき野球への情熱と共に、背番号「41」はグラウンドに立つ。
取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)