大瀬良と西が開幕戦でチーム1号本塁打
6月19日の開幕戦で注目を集めたのは、それぞれ開幕投手を務めた西勇輝(阪神)と大瀬良大地(広島)。とはいっても、ファンを驚かせたのは、本業の投球ではなく打撃であった。
5回、DeNAに1点のリードを許していた大瀬良は、一死三塁の場面で中堅前への適時打を放ち、自らのバットで試合をふりだしに戻してみせた。すると、9回、二死一塁の場面で再び打席に立つと、今度は逆方向への2ラン本塁打をマーク。この日の大瀬良の打撃成績は3打数2安打1本塁打3打点。7回にもきっちり犠打を決めるなど大活躍し、投げても9回1失点の完投と、投打で暴れまわった。
一方の西も、それこそ野手顔負けの打撃で魅せた。3回、二死走者なしの場面で初球をとらえると、高々と舞い上がった打球はうれしい自身プロ初本塁打となった。しかも、そのあたりは完璧なもの。
大瀬良の本塁打は、投手からすればいわゆる「不運」としか言いようのないものだったが、西の一打は左翼ポール上部を直撃する特大アーチ。しかも、球界のエースともいわれる相手先発・菅野智之から放った一打ということもあり、虎党に限らず、多くの野球ファンを驚かせた。
また、5回一死二塁の場面で再び打席に立った西は、今度は左中間を鋭く抜く適時二塁打を放つ。この日の西は勝利投手にはなれなかったものの、大瀬良に負けず劣らず投打でチームに貢献した。また、その西に触発されたのか、この日は菅野も5回に西から右前打を放つなど、両先発投手の打撃での活躍が光る伝統の一戦となった。
危惧されるセ・リーグ中継ぎ陣の登板過多
昨オフには巨人・原辰徳監督の「セ・リーグもDH制を導入すべき」という提案が大きな注目を集めたが、大瀬良や西の活躍によって、多くのファンが「やっぱり投手が打席に立つ試合も面白いかもしれない」と思ったことだろう。
ただ、今季は新型コロナウイルスの影響により、ルール等に大きな変更があるシーズン。とくに懸念する声が多いのが過密日程だ。交流戦後の短期の休みや球宴休みもなく、選手の負担が増加することは確実。とくに、DH制がないセ・リーグの投手は、打席に立たなければならないことによってパ・リーグの投手以上に負担が増す。
加えて、延長戦が12回から10回までとなったことで、その分「仕掛け」が早くなり、中継ぎ投手を早め早めに投入することも予想される。それこそ、DH制がないセ・リーグでは、投手に打席がまわった場面で代打を送ることで、中継ぎ陣の登板過多が危惧される。
近年の日本シリーズや交流戦でパ・リーグに圧倒されていることで、先の原監督の提案のように、セ・リーグにもDH制を導入すべきだという声も増えている。DH制がない野球にも独自の魅力があることは間違いないが、蓄積された疲労によって、今季の日本シリーズでもセ・リーグ球団がパ・リーグ球団に圧倒されるようなことがあれば、再びDH制導入をめぐる議論が活発になるかもしれない。
それでも、投手の意外性ある一打が試合の流れを変えるのは、セ・リーグならではのもの。そして、投手交代の駆け引きも醍醐味のひとつ。そんな野球もまた面白いと思うのである。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)
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(※6月23日13時訂正)
大瀬良投手の本塁打の箇所に不適切な表現があったため、差し替えさせていただきました。大変失礼致しました。訂正してお詫び申し上げます。