コラム 2020.06.30. 07:00

改めて考える「4番打者」の存在【白球つれづれ】

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ホームランを放ち、ベンチ前で迎えられるロッテのレアード=ZOZOマリン【写真は2020年】

白球つれづれ2020~第26回・開幕ダッシュと4番打者


 開幕から数えて9試合、いわゆるスタートダッシュを決めたチームと誤算に沈むチームの明暗がはっきりしてきた。

 今季は例年の143試合から120試合に短縮された分、余計にいち早く波を掴んだチームが有利と指摘されてきたが、セ・リーグでは巨人とDeNA、パ・リーグでは8連勝のロッテと三木肇新監督の下で躍進を狙う楽天が飛び出した。


 逆に黒星地獄に悩むのが阪神とオリックス。今季のペナントレースはコロナ禍もあり、セは関東中心、パは同一カードの6連戦が組まれるなど変則的な日程となっている。好不調の要因は多岐にわたるが、ホームでじっくり戦える東日本勢が白星を積み重ね、ビジターの連戦を強いられる西日本勢の苦戦も一つの特徴か。出遅れ組には今後の巻き返しを期待したい。

 オリックス相手にプロ野球史上初の同一カード6連戦6連勝(そもそもこうした日程が珍しいのだが)を決めたロッテの貯金は早くも「7」。この間、逆転勝ちと1点差勝ちが共に5試合と接戦に強さを発揮している。

 日替わりにヒーローが現れる好循環だが、中でも4番を任されるB・レアード選手の働きが目覚ましい。開幕からコンスタントに打ち、29日現在(以下同じ)の打撃成績は「.344」で「5本塁打」、「8打点」。28日の試合でも同点の8回に決勝弾で“寿司ボーイ”の威力を存分に発揮した。

 そこで全球団の4番打者の働きに注目してみた。


それぞれの4番打者


 巨人の岡本和真選手は、ここまで打率.472と12球団トップの働き。DeNAの新4番・佐野恵太選手も開幕から9戦連続安打中。楽天打線を引っ張る浅村栄斗選手は28日の日本ハム戦で3安打7打点の大暴れを演じている。

 2年連続本塁打王の西武・山川穂高選手にもエンジンがかかってきた。宿敵のソフトバンク6連戦に5本塁打13打点の大爆発で早くも二冠を視野に捉えた。このカード、逆に相手の4番、W・バレンティン選手は徹底マークにあい、2発こそ放ったがそれ以外は沈黙。特に山川が4戦目から先制口火の2ホーマー、逆転の3ラン、同点の一発と勝利に直結したのに対して、バレンティンは同じ3戦で10打数ノーヒット、4番の差がはっきりと明暗を分けた格好だ。

 下位に沈むチームの4番を見ていくと、その差は歴然としている。最も惨状を呈したのは阪神で、開幕カード3戦目から新外国人のJ・ボーア選手を外してJ・マルテ選手を起用。この助っ人も打率こそ3割をマークするものの、ここまで1本塁打3打点ではピストル打線の解消とはいかない。

 広島の鈴木誠也、ヤクルトの村上宗隆両選手は気を吐いているが、前後の打者が非力ではマークがきつくなる。日本ハムの中田翔は上々の滑り出しを見せ、オリックスの超大物新外国人、A・ジョーンズ選手は可もなく不可もない滑り出し。ただ、ジョーンズがチームの救世主となるにはさらなる爆発力が求められる。




「4番」としての矜持


 巨人の岡本と西武の山川は昨年の悔しさをバネに打撃改造に取り組んできた。共にシーズン途中で4番を外される屈辱を味わっている。特に山川の場合はタイトルホルダーでありながら、打率の低さが問題視された。そこで昨オフから取り組んだのが、左足を高く上げる打撃フォームからすり足にするもの。上体のブレを少なくしてより確実性を増すためだ。

 岡本もまた同じような改造を行った結果、2人とも本塁打の打球方向が左翼一辺倒からセンター中心に変わってきている。天性の素質に加えて、人一倍の努力が出来るのも不動の4番の条件である。

 指揮官の慧眼に目を見張るのがDeNAの「つなぎの4番」佐野だろう。チームリーダーであり、不動の4番だった筒香嘉智選手のメジャー挑戦で空いた穴に昨年まで代打要員だった佐野を大抜擢、しかも主将の大任まで任せた。前後にN・ソト、新外国人のT・オースティン、J・ロペスに宮崎敏郎ら打棒自慢の各選手が揃っているとは言え、この決断が今の「新マシンガン打線」を作っている。

 近年は「2番打者最強説」も話題になるが、やはり4番打者はチームの顔であり、総大将だ。まだまだ始まったばかりで2~3試合固め打ちをすれば個人成績はどうにでも動く。この先、どの4番がスランプに悩みだして、誰がさらに暴れまくるのか? 夏の陣の命運も4番が握っている。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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