シーズンプレビュー【NL西地区 編】
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、開幕を見合わせていたメジャーリーグの2020年シーズン。本来の予定から遅れること約4カ月、いよいよ現地時間7月23日(日本時間24日)に開幕が決定。異例の“60試合制シーズン”が、ついに始まる。
というわけで、新シーズンの見どころや注目ポイントを地区ごとにチェックしていこう、というのがこの企画。ラストはナ・リーグ西地区を取り上げる。
展望の前に、まずは昨年の順位をおさらいしておこう。
【2019・NL中地区順位表】
1位 ドジャース(106勝56敗)
2位 Dバックス(85勝77敗)
3位 ジャイアンツ(77勝85敗)
4位 ロッキーズ(71勝91敗)
5位 パドレス(70勝92敗)
ドジャースが地区7連覇中
▼ ロサンゼルス・ドジャース
昨季は2位に21ゲームの大差をつけ、地区7連覇を達成したドジャース。しかし、プレーオフでは地区シリーズでナショナルズに敗れ、1988年以来の世界一はまたも夢に終わった。
今度こそ戴冠を狙う今季は、レッドソックスからムーキー・ベッツを獲得。強力な打線はリーグでもNo.1の呼び声が高い。
一方、投手陣はエースのクレイトン・カーショーを中心に盤石のはずだったが、新加入のデビッド・プライスが今季の欠場を発表。そうとも言い切れなくなった。救援陣も、守護神のケンリー・ジャンセンが昨季自己ワーストの防御率3.71、セーブ失敗も自己最多の8回と苦戦。一抹の不安が残る。
▼ アリゾナ・ダイヤモンドバックス
昨季は3年連続となるシーズン勝ち越しを果たしたダイヤモンドバックス。しかし、首位・ドジャースとの差は、前年の「9.5」から「21」ゲームにまで広がっている。
打線は内外野を守れるクテル・マルテが急成長。今季はパイレーツから移籍してきたスターリング・マルテと組む「Wマルテ」に要注目だ。
投手陣は、ジャイアンツから獲得した通算119勝左腕のマディソン・バムガーナーに、エースとして大きな期待がかかる。ただし、まだ30歳と老け込む年齢ではないが、2016年を最後に2ケタ勝利から遠ざかっているのは気掛かりだ。昨季途中まで在籍したザック・グリンキーの穴は大きいが、若手の台頭が待たれる。
“2強”の壁は高い?
▼ サンフランシスコ・ジャイアンツ
2010年代に3度のワールドチャンピオンに輝いたジャイアンツだが、2017年から負け越しが続く。13シーズンにわたり指揮を執ったブルース・ボーチー監督が退任したこともあって、チームは転換期を迎えている。
昨季ナ・リーグワースト2位の得点数に終わった打線は目立った補強なく、エバン・ロンゴリアやハンター・ペンスなど、主力選手の高齢化が引き続きの課題だ。
投手陣も、バムガーナーがライバル球団のダイヤモンドバックスに移籍。ローテーションは30代が中心となりそうで、こちらも若手の台頭待ち。救援陣も昨季クローザーを務めたウィル・スミスがFAでチームを去り、代役候補が34歳のトニー・ワトソン。通算30セーブと経験はあるが、昨季の防御率は4点台と心許ない。
▼ コロラド・ロッキーズ
2018年に91勝を挙げてポストシーズンに進んだロッキーズだが、昨季は勝利数を一気に「20」も減らしてしまった。
打線は今季もノーラン・アレナドを中心にリーグ屈指。一塁を守るダニエル・マーフィーは移籍1年目の昨季、期待に応えられず不本意なシーズンを送っただけに、ナショナルズ時代に見せた打撃を取り戻せるかどうかがカギとなる。
昨季ナ・リーグワーストの防御率5.56に終わった投手陣。なかでも最大の誤算だったのが、2年前に17勝を挙げてエースの働きが期待されたカイル・フリーランドの不振だ。昨季は3勝11敗で、防御率は2.85から6.73まで落ち込むという大スランプ。上位進出に向けて、フリーランドの復調は絶対だ。
▼ サンディエゴ・パドレス
2010年を最後に勝ち越しシーズンがないパドレス。昨季は勝率5割ちょうどでオールスターを迎えたものの、後半戦に失速した。
大型契約で加入したマニー・マチャドは期待を裏切ったが、一方でフェルナンド・タティスが大活躍。故障で84試合の出場に終わったが、いずれ「40-40」を達成できる選手になるだろう。
投手陣はジョーイ・ルケーシーが10勝を挙げたが、これがチームの勝ち頭とは寂しい限り。そのルケーシーを含め、昨季我慢して起用した若手投手が成長の跡を見せてくれれば、リーグ平均レベルの先発陣にはなりそうだ。
【まとめ】
上でも少し触れているが、ドジャースが7連覇中というこの地区。戦力を比較してみても、今季もこの流れは止まらないだろう。
ただし、今年は60試合制という異例の戦い。2年前に優勝を争ったロッキーズが開幕ダッシュを決めれば、最大のライバルとなる可能性はある。
文=八木遊(やぎ・ゆう)