コラム

西武浮上のカギ握る機動力【プロ野球界の“異変”を追う】

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西武は「70周年シリーズ」で特別ユニフォームを着用 (C) Kyodo News

第4回:影を潜めた攻撃力


 パ・リーグで3連覇を狙い、今年こそソフトバンクを撃破して日本一を誓う西武が思わぬ苦戦を強いられている。

 春先に行われたオープン戦や開幕直前の練習試合では圧倒的な強さを発揮していたが、ペナントレース本番になると勝率5割ラインを行ったり来たり。ライバルのソフトバンクが一時の不振を脱却すると一気に首位戦線に駆け上がったのとは対照的な滑り出しだ。

 「今は我慢の時、5割ラインをキープしていれば、いずれチャンスは来る」と辻発彦監督は浮上の時を虎視眈々と狙うが、ここまでの戦いを見る限り昨年までの王者の野球とは程遠い。看板である破壊力満点の攻撃力が影を潜めているからだ。

 数字上から昨年との違いを探ってみる。 

19年:打率.265(1)/756得点(1)/174本(2)/134盗塁(1)
20年:打率.251(2)/128得点(3)/ 24本(5)/ 16盗塁(5)
※数字は19年=全日程終了時、20年=7月22日現在
※カッコ内はパ・リーグでのチーム順位

 143試合を戦った前年とまだ30試合に満たない今季との比較には無理もあるが、注目してほしいのはカッコ内の数字。今季はどのあたりに苦しんでいるのか、参考にはなるはずだ。


辻野球の生命線


 近年の西武は“打高投低”のチームである。投手力の強さのメドとなるチーム防御率は、昨年が「4.35」なら今季も22日現在で「4.67」と、いずれもリーグ最下位である。そんな弱体投手陣をものともせずに爆発的な攻撃力で制してきた。

 中でも辻野球の生命線とも言うべきなのが俊足強肩の野手を多く揃えた守りと機動力。西武打線と言えば山川穂高、中村剛也両選手に代表される豪快な打棒をイメージされがちだが、それは強みの半分。脇役たちがそつのない走塁を見せ、常に次の塁を狙うスピードが大量得点を生む秘訣でもあった。

 昨年は盗塁王に輝いた金子侑司が41盗塁。以下、源田壮亮(30盗塁)、外崎修汰(22盗塁)、木村文紀(16盗塁)に今季からメジャーに挑戦する秋山翔吾(12盗塁)と、実に5選手が10盗塁以上を記録している。ちなみに昨年最もチーム盗塁数が少なかったのはDeNAの40個で金子ひとりにも届かない。

 これだけの選手が塁に出てはかき回すのだから、相手投手からすれば打者だけに神経を集中できない。当然ストレート主体の配給が多くなれば山川、森友哉選手らの餌食になる確率は高くなっていったわけだ。

 ところが、今季はチームの売りである爆発力が影を潜めている。前述の数字が示す通り、盗塁数と本塁打数がリーグの下位に低迷。投手陣の不安定を考えれば、よくこの数字で勝率5割ラインを行ったり来たりの状態でいられるほどだ。


王者の強みと包囲網


 開幕前から今年の西武の死角は秋山の抜けた穴と指摘された。当初は俊足の金子を一番打者に抜擢したが不振と首の故障で現在は二軍調整。代わって新外国人C・スパンジェンバーグ選手を起用するが、安定性に欠けるため7月10日からは4年目の成長株・鈴木将平が大任を担っている。

 まず核弾頭役が定まらなかったことに加えて2番を任される源田の不振が続いている。加えてクリーンアップで山川の前後を打つ森と外崎の調子も中々上がってこない。これでは指揮官が目指すスキのない機動力も他を圧する爆発力も期待できない。

 当然、パ・リーグを連覇するチームに対して他球団の研究は進んでいる。上位打線に左打者が多いことと機動力を封じるために左腕の先発を用意する。本塁打王の山川や打点王の中村には例年以上に厳しい内角攻めが目につく。

 開幕直後のオリックス戦で若月健矢捕手の強肩に機動力を封じられたのも出端をくじかれた。この若月は昨年のリーグ盗塁阻止率ナンバーワン。ソフトバンクの甲斐拓也捕手と共に今後も西武の脚封じに立ちはだかるだろう。だが、こうした包囲網を突破しない限り浮上もまた見えて来ない。

 打線は水物、調子の波もあるが足にスランプはないと古くから言われる。西武がこれから上位争いに食い込んで王者の強さを発揮するには、まず各主力が打率と出塁率を上げて塁上を駆け回ることが必要不可欠。ライオンズ創立70周年の記念イヤーに、このまま低迷するわけにはいかない。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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