白球つれづれ2020~第30回・実力者たちの新たな挑戦
メジャーリーグが、いよいよ開幕した。
通常シーズンより4カ月遅れで試合数はわずかに「60」。コロナ対策として長距離移動は避けて地区を3つに分けて開催したり、ナ・リーグでも指名打者制が採用される。メジャーでは珍しくない投手の舌なめやヒマワリの種を吐き散らす行為ももちろんご法度など、異例ずくめのシーズンだ。
注目の日本人選手も結果はさまざま。二刀流復活を目指すエンゼルスの大谷翔平選手は26日(現地時間、日本時間27日以下同じ)のアスレチックス戦に先発も、いきなり3安打3四球の大乱調で5失点。何と一死も取れずに最短KOを喫した。一方、今季からツインズに移籍した前田健太投手はホワイトソックス戦で先発勝利を飾っている。
日本が誇る安打製造機の現在地
今季からメジャーに挑戦する日本人は筒香嘉智(レイズ)、秋山翔吾(レッズ)と山口俊(ブルージェイズ)の3選手。国内にいればいずれも看板選手が、メジャーの高い壁に挑戦者として挑む苦難の道が始まった。中でも秋山の現在地に注目してみたい。
何とも微妙なチーム内の立ち位置である。記念すべきメジャーデビューとなった24日のタイガース戦は先発メンバーを外れて代打からの出場。それでもいきなり中前打を放ち和製安打製造機の片鱗をのぞかせる。守っても不慣れな左翼で背走からのジャンピングキャッチと、十分な存在感を示した。
次戦では「6番・左翼」で先発出場を果たすが無安打1四球。第3戦も先発出場し、すかさず左前打を放ち二盗を決めるが途中交代となった。3戦合計で7打数2安打1盗塁に幅広い守備を加味すれば上々の滑り出しにも映るが、レギュラーを確約されていない現状が浮き彫りになったことも確かだ。
定位置確保への課題
メジャーに渡った日本人野手の多くが語る最大の克服ポイントは「強い球」への対処である。160キロ越えのフォーシームは当たり前の上に、長身揃いだからボールに角度がある。さらにツーシームやカットボールの曲がりは日本人投手より鋭い。そこにスプリットやチェンジアップまで加わるのだから好成績を残せる打者は限られる。
第二のポイントはコンピュータ野球への対策だ。打者の得意な球種やコースを膨大なデータで分析している。秋山だけを見ても、第2戦の打撃内容は第2打席で中前に抜けそうな一打を二塁ベース後方に位置する遊撃手が処理、第3打席も三遊間のゴロをあらかじめショート寄りに守る三塁手が難なくさばいている。
近年、日本でもよく見かける守備シフトだが、米国流はさらにその上を行く大胆さと徹底ぶりだ。秋山の場合、開幕前の練習試合で左腕投手に結果が残せずに終わったことが首脳陣の現状評価につながっているとも現地記者は指摘する。
「今は試されている感じ、目の前の試合で結果を出して信頼を勝ち取っていくしかない」と語る秋山だが、筒香も似たような立場に変わりない。豪快な中越え本塁打で華々しいデビューを飾り、第2戦では4番も任されたが、次戦では途中出場とまだまだ息つく暇はない。
先人たちを振り返ると…
過去にメジャーに挑戦した日本人野手は、2001年のイチロー、新庄剛志選手を皮切りに、大谷も含めて17人。この中で全米中に広く認知され、メジャーリーガーも認めた実力者はイチローと松井秀喜氏に現在進行形の大谷までだろう。投手では野茂英雄氏にダルビッシュ有、田中将大あたりがエースの仲間入りを果たしている。
彼らには長く活躍できる共通項がある。メジャーリーガーも一目置くスペシャルな“一芸”を持っていることだ。
イチローの広角に打ち分ける打撃術は他の追随を許さず、俊足に強肩とすべてが特Aレベル。松井には外国人に負けないパワーと無類の勝負強さがあった。野茂のフォークボールに、ダルビッシュの多彩な変化球、田中にも伝家の宝刀・スプリットがある。
これを秋山と筒香に当てはめた場合、秋山はイチロー並みの卓越したバットコントロール、筒香には松井以来の長打力と勝負強さを伸ばすことが肝要となる。60試合という短い期間に首脳陣の信頼を勝ち取る難しさはある。だが、開幕カードはエース級の出番が多いが、これから連戦が続けば、怪腕ばかりが出てくるわけでもない。
大谷は例外として、日本人投手は優秀だが、野手は総じて非力でスターの道は険しいという見方が近年、定着しつつある。そんな中で渡米した大物野手の挑戦は、日本野球の進化を問う1年にもなる。やはり、メジャーの報道からも目が離せない。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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(※7月27日23時50分訂正)
第3戦に途中出場とありましたが、正しくは「先発出場で途中交代」となります。大変失礼致しました。訂正してお詫び申し上げます。
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— Cincinnati Reds (@Reds) July 25, 2020
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— Cincinnati Reds (@Reds) July 25, 2020