高校球界屈指のサウスポーへ
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、残念ながら今年の全国高校野球選手権および代表校を決める地方大会は中止となってしまった。それでも、各地で代替大会は行われることになり、早い地域では既に佳境を迎えているところもある。
プロアマ野球研究所(PABBlab)では、そんな代替大会での活躍が期待される、もしくは活躍が光った選手についても積極的に紹介していきたい。
今回は、北海道に現れた“高校球界屈指のサウスポー”を紹介する。
中学時代には軟式の大会で“全国制覇”
中日が1月にドラフト1位候補として名前を挙げた高田琢登(静岡商)と、以前取り上げた松本隆之介(横浜)に並んで、高校生サウスポーで評判となっているのが根本悠楓(苫小牧中央)だ。
高田と松本は中学時代から硬式球を扱うリトルシニアでプレーしていたが、根本は白老町立白翔中学の軟式野球部に所属していた。
しかし、当時から決して無名だったわけではない。中学3年時には、全国中学校軟式野球大会でエースとして全国制覇を成し遂げている。
しかも、ただ優勝しただけではない。決勝戦では、7回を投げて(中学野球は7回制)一人の走者も許さない完全試合を達成しているのである。
これだけの結果を残したサウスポーということで、強豪校からの誘いもあったが、地元の苫小牧中央に進学することとなった。同じ地区には駒大苫小牧がいることもあり、ここまでチームとして目立った実績は残せていないものの、根本自身は順調にレベルアップ。昨年秋には、既に140キロ台中盤のスピードをマークしているという。
そんな根本の実力を確かめに、7月24日に行われた室蘭支部大会の北海道栄戦に足を運んだ。
140キロ後半のストレートが魅力
この試合、根本は「5番・投手」で先発出場。立ち上がりからいきなり連続三振を奪う順調な立ち上がりを見せると、2回の6番打者に投じたストレートは、球場のスピードガンで150キロを表示した。
ただ、ネット裏で計測していた自前のガンでは144キロで、スタンドに詰めかけたスカウト陣のガンも軒並みその程度だったことを考えると、150キロという数字は少し信憑性に欠けるものである。本人も試合後に「力は入れたボールでした。ただ、(球場側の)誤作動だと思います」と話していた。
試合は4回に3点を先制した苫小牧中央が終始ペースを握り、根本自身も被安打5・与四球1・奪三振8という危なげない内容。連打を許さず、そのまま完封勝利を挙げた。
対戦相手の北海道栄は、春4回・夏1回の甲子園出場を誇る、室蘭地区では駒大苫小牧と並ぶ強豪。そんなチームを相手に、ほとんどチャンスを作らせなかったあたりに、根本の実力が垣間見えた。
本人は「好調時と比べると少しストレートが走っていなかった」と話したが、7回と8回以外のイニングは全て140キロ台のスピードをマーク。5回には、球場のガンもネット裏のガンもともに145キロを表示するボールもあった。絶好調ではなくても、これだけ高いアベレージのスピードをマークできる高校生サウスポーはそうはいない。
制球力と変化球も高いレベル
そして、ストレート以上に目立ったのが高い制球力と変化球だ。
8回に1つ四球を与え、2回にもボールスリーとなった場面が一度あったものの、それ以外は常にストライク先行のピッチングをすることができていた。高めにボールが浮くシーンもほとんどなく、投球のテンポの良さも素晴らしいものがある。
変化球もカーブとスライダー、チェンジアップにツーシームを操るが、どのボールもしっかり低めに集め、相手打者に的を絞らせなかった。高校生の本格派サウスポーで、これだけ制球力がある投手は本当に珍しい。
特にスライダーは、視察したスカウトの一人も「久しぶりにいいスライダーを見た」と話しており、きれいに横に変化する必殺のボールだった。ちなみに、この日のスタンドに詰めかけたスカウト陣は総勢10球団。大学・社会人の関係者の姿もあり、根本への注目度の高さがよく分かるだろう。
中一日置いて行われた26日の苫小牧工との地区代表決定戦でも、被安打2・14奪三振で完封勝利をマーク。南北海道の本大会に出場を決めている。ちなみに、根本が入学してから、苫小牧中央が支部大会を突破するのはこれが初めてのことである。
さらにレベルが上がった舞台で、果たしてどんなピッチングを見せるのか。8月3日から始まる南北海道大会でも、根本のピッチングにぜひ注目してもらいたい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所