あまりに凄い柳田のOPS
今季、柳田悠岐(ソフトバンク)が数年に一度見られるかどうかという大記録を残すかもしれない。その記録とは、出塁率と長打率を足し合わせた数値である「OPS」だ。打率や出塁率、長打率単体よりも得点との相関性が高いとして2000年代以降にメジャーで重視されるようになり、近年は日本のファンにもよく知られるようになってきた。
OPSはその数値により「A」から「G」の7段階で格付けされる。「並」とされる平均的な数値は「.7000〜.7666」の「Dランク」。「.9000」以上になると「素晴らしい」と評価される「Aランク」になる。もちろん、「1」を超えるような数字は、Aランクのなかでもほんのひと握りの選手しか記録できない。
そのOPSにおいて、今季の柳田はとんでもない数字をここまでたたき出している。以下は、現時点で1以上のOPSを記録している選手たちだ。
▼ 2020シーズンOPSランキング(※1以上)
柳田悠岐(ソ)1.238(出塁率.506/長打率.732)
ロメロ (楽)1.106(出塁率.401/長打率.705)
鈴木誠也(広)1.103(出塁率.438/長打率.664)
浅村栄斗(楽)1.081(出塁率.424/長打率.657)
青木宣親(ヤ)1.047(出塁率.438/長打率.609)
岡本和真(巨)1.041(出塁率.377/長打率.664)
堂林翔太(広)1.005(出塁率.415/長打率.589)
「.9000」以上で「素晴らしい」とされるOPSの場合、「1」を超える選手がひとりも出てこないシーズンも珍しくない。ただ、今季はここまでいわゆる「打高」の傾向があり、7人の選手のOPSが「1」を超えている。ただ、そのなかでも柳田の数字は異次元レベルだ。ただひとり「1.2」を超えており、それこそずば抜けた数字となっている。
バレンティンを超え、落合、バース、王に迫れるか
もともと高い出塁率と長打力を併せ持つ柳田は、これまでもOPSでは上位に君臨してきた。昨季はケガに泣いたものの、2015年から2018年まで4シーズン連続でリーグトップのOPSを残しており、うち3シーズン(2015年、2017年、2018年)で1以上のOPSを記録している。それでも、自己最高は2015年の「1.101」である。
現在の「1.238」という柳田の数字は、シーズン60本塁打のプロ野球記録を打ち立てた2013年のバレンティン(当時ヤクルト/現ソフトバンク)がマークした「1.234」をしのぎ、歴代5位に相当する。
ちなみに、4位以上はトップから順に王貞治(1.293/巨人・1974年)、バース(1.258/阪神・1986年)、王(1.255/巨人・1973年)、落合博満(1.244/ロッテ・1985年)と並ぶ。いずれも三冠王による記録であり、柳田がいかにとんでもない数字を残そうとしているかがよくわかる。
もちろん、シーズン終了までこれだけの数字をキープすることはそう簡単ではないだろう。ただ、シーズンの3分の1弱を終えた時点での数字としてもすでに驚異的といえる。いまやチームメートとなったバレンティンの数字を超えて、歴代三冠王たちにどこまで迫れるか。柳田のこれからの打棒に注目していきたい。
▼ NPB歴代OPSランキング
1.293 王貞治(巨人/1974年)
1.258 バース(阪神/1986年)
1.255 王貞治(巨人/1973年)
1.244 落合博満(ロッテ/1985年)
1.234 バレンティン(ヤクルト/2013年)
文=清家茂樹(せいけ・しげき)