コラム 2020.08.10. 12:09

「適切な休養戦略」で能力全開 楽天・ロメロがホームランダービートップへ

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楽天時代のステフェン・ロメロ (C) Kyodo News

1位に3人が並ぶ大激戦!


 3カ月遅れの開幕からもうすぐ2カ月…。8月戦線に入って各チームがシーズンの3分の1を消化したところだが、パ・リーグは激戦が続いている。

 リーグ奪還を狙う日本一3連覇王者・ソフトバンクと、積極補強で今季にかける楽天が24勝19敗1分で同率の首位。先週は激しい直接対決で火花を散らした一方、上位がやり合っている隙に浮上してきたのがロッテと日本ハム。ロッテは両者に1ゲーム差まで迫っており、さらに日本ハムがロッテと0.5差にピタリと追走。上位4チームが「1.5差」の中にひしめく大混戦となっているのだ。


 そんな中、チームの争いと比例するように、個人の争いも激化してきている。パ・リーグの本塁打王争いを見てみよう。

▼ パ・リーグ本塁打ランキング
1位 14本 ステフェン・ロメロ(楽天)
1位 14本 浅村栄斗(楽天)
1位 14本 山川穂高(西武)
4位 13本 中田 翔(日本ハム)
5位 12本 柳田悠岐(ソフトバンク)
6位 11本 レオネス・マーティン(ロッテ)
7位 10本 井上晴哉(ロッテ)


 8月9日まで終えた時点で、2ケタ・10本以上を記録しているのがこの7名。7月終了時点では13本でトップだった浅村栄斗、それを追う12本の中田翔と山川穂高という三つ巴の争いだった中、ここに来て急浮上しているのが楽天のステフェン・ロメロである。

 今季から楽天に加入した来日4年目の助っ人。8月の月間成績は7試合に出場して打率.481(27-13)という大暴れで、5本塁打に11打点をマーク。もともと上位にいた打率ランキングだけでなく、本塁打ランキングにも殴り込みに来た。

 オリックスに在籍した過去3シーズンの通算本塁打は69本。もちろん、長打力がない選手ではなかったが、ここまでアーチを量産するイメージはなかったことだろう。

 本塁打1本あたりに必要な打数を示す「本塁打率」を見てみると、昨季までの3シーズンは通算で16.35。これに対し、今季はここまで10.07と大きく向上。その打棒に磨きがかかっていることがよく分かる。


指名打者起用や休養日で好コンディションをキープ


 変わったことと言えば、まずチームが変わったため本拠地球場が変わった。しかし、楽天生命パークが京セラドーム大阪と比べて本塁打が出やすいかといえば、そんなこともない。

 では、ほかの変化は…?ひとつ浮上してくるのが起用法だ。

 ロメロはもともと故障の多い選手で、過去3シーズンの出場数も103試合・119試合・81試合とフルシーズン稼働したことがない。能力の高さは誰もが認めるところでありながら、膝やわき腹、そして首といった度重なる故障により、戦線離脱を余儀なくされている。オリックスが契約延長をしなかったのも、その故障の多さという部分が大きかったのではないか。

 そこで、楽天首脳陣はその故障癖を把握したうえで、起用法を工夫。指名打者の枠を浅村やジャバリ・ブラッシュと併用することで負担を軽減しつつ、打線に欠かせない存在でありながら定期的に休養日を設けるなど、長期離脱を避けるための長い目で見た運用により、ロメロのコンディションをなるべく高い状態でキープできるように努めているのだ。


 打率.348はリーグ2位、本塁打はトップタイで、33打点はリーグ5位。健康な状態で試合に臨めれば、何試合か欠場していてもリーグでトップクラスの成績が残せるということ。むしろ、適切な休みを与えることで、その能力を余すことなく引き出していると言える。

 昨季はリーグ3位に入りながらも監督を交代し、積極的な補強で“さらに上”を目指しに来た楽天。充実した戦力もさることながら、それを最大限に生かすための戦略が奏功しているからこそ、現在の順位があるということ。

 熾烈な上位争いを繰り広げるチームはもちろん、各部門でタイトルレースを盛り上げる4年目の助っ人から目が離せない。


文=清家茂樹(せいけ・しげき)

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