コラム

「野球の日」に本拠地デビュー 中日・根尾昂、“2年目のドラ1”の現在地

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外野で奮闘する2年目の根尾昂 (C) Kyodo News

8月9日=「野球(8・9)の日」


 代打コールで場内が盛り上がった。上限5000人に限定したナゴヤドームとは思えない熱気が充満する。


 2年目のドラ1・根尾昂が、8月9日「野球の日」の巨人戦で本拠地デビュー。2-2の同点で迎えた延長10回、二死走者なし。代打のアリエル・マルティネスがスイングした際に負傷。カウント1ストライクからスタートする“代打の代打”として登場した。

 結果は空振り三振。田中豊樹の151キロ速球との力勝負で負けた。試合後は「あのような形で、代打で出るのは初めてです。僕はどんな状況だろうと結果を出さなければいけなかったので、何とか出塁したかったです」。唇をかんだ。


打は苦戦も守りで魅せる


 昨季は2打席2三振。今季も14打席無安打が続いた末、11日の広島戦(マツダ)でようやくプロ初安打を記録した。デビューから通算17打席目、待望の一本だった。


 このように期待される「打」の方で苦戦が続いていた中、昨秋からチャレンジしている外野守備で見せ場をつくったのは成長の証。6日のDeNA戦(横浜)、初回二死満塁で打席は倉本。陣取った左中間から左翼ポール近くへの飛球に反応する。

 「とにかく落下点に早く入ることを考えでいました」。快足を飛ばして何とか追いつくと、フェンスを気にしながら左手を伸ばし、白球をグラブに収めた。

 さらに、3回二死二塁の場面では、倉本の左前への打球に猛チャージ。ポテンヒットを2バウンドで処理すると、「刺しにいく気持ちは持っていました。回ってくれたのでラッキーでした」と語った通り、本塁へのワンバウンド送球で二走・ソトを見事に刺した。


英智コーチの想い


 捕球からスローイングまでの課程には、地道な練習の繰り返しがある。

 昨年12月にアジアウインターリーグで実戦を経験。台湾出発前、英智外野守備走塁コーチから餞別(せんべつ)としてアドバイスを受けとっている。そこで説かれたのが、ステップの重要性だ。

 「肩がいいから、どんな体勢でも投げられる。でも、崩れたまま投げるといずれ肩を壊す」

 ボールを転がして、足を動かして捕って送球動作に入る。基本を繰り返した成果が、1つのアウトとして形になった。


 英智コーチといえば、2000年代の竜を守備と走塁で支えた名選手。なぜ、根尾に口酸っぱく言ったのが“ステップ”だったのか。もちろん自身の経験。そしてもうひとつが、消えていったドラ1の記憶だった。

 チームの二軍マネジャーに、中川裕貴さんがいる。岐阜・中京高から2004年にドラフト1位で入団。内野から外野に転向した期待の逸材もまた、肩が強かった。そのため、無理な体勢からでも投げることができた。

 無理はたたる。肩を痛め、プロ通算5安打でユニホームを脱いだ。英智コーチと中川マネジャーは現役同士だった。

 「裕貴を見ていたから」と英智コーチ。中川マネジャーは「(英智さんに)いろいろ教えてもらいました。ステップももちろんです。基本の繰り返しでした」と振り返る。今はスタッフという立場。アドバイスすることはなくても、2年目のドラ1を見守っている。


フルスイングの先に広がる未来


 アピールポイントの打撃はなかなかうまくいかない。

 ウエスタン・リーグでは打率.282で2本塁打。6試合連続安打を放ち、一軍切符をゲットしている。武器はとらえる精度を上げたフルスイング。一軍昇格後、長いトンネルに入りこんでいた時期も、フルスイングは変えていない。


 なかなか期待に応えられない現状は苦しいだろう。だが、期待されなくなったらもっと苦しいに決まっている。根尾が背負っているのは野球界の未来なのだ。

 フルスイングの先には「何かあると思っています」と、背番号7は語る。思い切り振った者にしか見えない景色がある、と思う。

 野球の神様は見ている。ちょっとぐらい打てないのが何だ。壁があるならたたき壊せ。出場機会を与えられることで生まれる、ひがみやねたみの声は打ってねじ伏せろ。肩で風を切り、堂々とスター街道を歩めばいい。


文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)
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