直近6試合で打率.360、3本塁打9打点の大活躍
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた異例ずくめのシーズンがはじまって2カ月。ここまで球界の注目を集めたひとりが、堂林翔太(広島)だ。
高卒3年目だった2012年、プロ入り初の開幕一軍を勝ち取ると、全144試合に出場し14本塁打をマーク。打撃自体は荒削りながら、その長打力と端正なルックスも相まって「鯉のプリンス」ともてはやされた。ただ、その後は大きな期待を受けながらも成績は低迷。近年は毎年のように、「背水の陣」「崖っぷち」という言葉とともに語られるようになっていた。
その堂林が、まさに背水の陣であり崖っぷちのプロ11年目を迎えた今季、突如として「覚醒」。開幕直後から打率4割をキープし、打率ランキングでトップを走り続けた。
しかし、7月下旬頃から打撃成績はがくっと急下降。打率は7月24日終了時を最後に4割を切り、それから1カ月もたたない8月18日のDeNA戦を終えたときには、ついに3割を切ってしまった。もちろん疲労の影響もあるだろうが、ファンからは、いわゆる「確変」終了かという声も聞かれた。
これまでの堂林といえば、オープン戦やシーズン序盤でどれだけ好調でもその調子を維持できないことが多く、ファンが今回の好調を信じ切れないのも無理はない。ただ、今季の堂林は違うかもしれない。その打率3割を切った8月18日のDeNA戦でも5打数1安打ながら2打点を残しており、そこから5試合連続で打点を記録。安打は6試合連続でマークしている。
8月18日からの6試合における成績は、25打数9安打、打率.360、3本塁打9打点。はっきりと復調の兆しを示している。
調子のバロメーター「右方向」に長短打を飛ばす
今季の堂林ほど派手ではなくとも、シーズンの限られた期間に大きな活躍を見せながら一気に成績を落としてしまう選手は珍しくない。しかし、シーズン中にしっかりと調子を戻してきたあたり、今回の堂林の覚醒は「本物」と見ていいのかもしれない。
その根拠をひとつ挙げるなら、「打球方向」になるだろうか。過去に堂林本人も「右方向への打球が自分の特徴であり、調子のバロメーター」と語っているように、もともと堂林の魅力のひとつは右方向に強い打球を飛ばせることだった。
直近6試合における堂林の打球方向を振り返ってみると、3本の本塁打の打球方向は「右」「左」「中」。広角にまんべんなく打っており、その本塁打を含む9安打の打球方向も「左」2安打、「中」4安打、「右」3安打である。堂林の「覚醒モード」第2幕がはじまったと言っていいのかもしれない。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)