コラム 2020.08.28. 07:09

長野の「公立高校」から夢のプロ入りなるか?飯山のエース・常田唯斗にスカウト陣が熱視線

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飯山の常田唯斗選手 [写真提供=プロアマ野球研究所]

長野の注目大型投手


 8月17日に幕を閉じた、『2020年甲子園高校野球交流試合』。全国各地で行われた独自大会も全日程を終了し、これからはいよいよドラフト会議へ。プロ志望届を提出した高校生の候補たちも話題となっている。

 10月26日のドラフト会議に向けて、プロアマ野球研究所(PABBlab)では、この夏に活躍が光った選手について積極的に紹介していきたいと思う。

 今回は、昨年夏の甲子園で打ち込まれたものの、この1年で大きな成長を遂げた“大型右腕”を取り上げる。


2年夏の甲子園では悔しい想いも…


 長野県飯山高校は、2007年4月に飯山南高校と飯山照丘高校が合併し、さらに2014年には飯山北高校も統合されて誕生したという経緯を持つ公立高校だ。

 県内の公立高校では唯一スポーツ科学科が設置されており、降雪量が多い地域ということもあってアルベールビル、リレハンメル冬季五輪のノルディック複合団体で金メダルを獲得した河野孝典氏(飯山南高校出身)など、多くのスキー選手を輩出している。


 硬式野球部も近年は県内で安定した成績を残しており、昨年夏に初の甲子園出場を果たした。そして、その原動力となったのが、常田唯斗(ときだ・ゆいと)だ。

 背番号11ながら、3回戦の東京都市大塩尻戦と、準決勝の上田西戦では先発として好投。決勝の伊那弥生ケ丘戦でも5回途中からのロングリリーフで好投し、チームの優勝に大きく貢献している。

 しかし、迎えた夏の甲子園では、仙台育英を相手に1-20と大敗。常田自身も4回1/3を投げて被安打14の13失点(自責点9)と、ほろ苦い全国デビューとなった。


悔しさをバネに飛躍


 それでも、その苦い経験を糧に、右腕は大きな成長を遂げる。

 自粛期間が明けたこの春にはコンスタントに140キロ台中盤をマークするようになり、練習試合でも多くのスカウトが視察に訪れているという。そんな常田の成長ぶりを確かめに、長野県独自大会の準決勝を取材した。


 対戦相手は県内でも1、2を争う強豪の上田西。昨年の秋季大会でも敗れた相手であるが、そんな難敵を相手に常田は快投を見せる。

 立ち上がりに打者3人を打たせてとると、2回と3回には全て空振りで4奪三振をマーク。序盤の3イニングをパーフェクトに抑える。

 4回は内野安打2本からピンチを招き、適時二塁打を浴びて2点を先制されたものの、そこからもリズムを変えずに好投。5回以降の5イニングをわずか3安打に封じ、最終的には3-2と見事に逆転勝ちを収めて見せた。

 3日前に行われた岡谷南との試合では、16三振を奪いながらも10安打を浴びて6点を失ったが、この日は終始、安定感抜群の投球。立ち直った姿をアピールした。


飯山高初のプロ野球選手へ…


 体つきを見ても、昨年夏の甲子園と比べて一回り大きくなり、バランスも良くなったように見える。

 フォームの特長は、上半身の力を上手く抜いて腕が振れるところだ。100%の力で腕を振っているようには見えなくても、しっかりとボールが指にかかっており、ストレートのスピードはコンスタントに140キロ台をマーク(この日の最速は146キロ)。

 少し重心の高さは気になったものの、体重が後ろに残るようなこともなく、左右のコントロールも安定していた。


 変化球で目立ったのは、新チームになってからマスターしたというカットボールだ。

 スピードは135~138キロとストレートとあまり差がなく、打者の手元できれいに横に滑るため、ボール球でも空振りを奪うことができる。

 120キロ台のスライダーでカウントをとり、対になるチェンジアップもしっかり低めに集められていた。ストレート主体で完璧に攻略された昨年夏とは全く違う投手に変身したと言ってよいだろう。


 一日空いて行われた佐久長聖との決勝戦では、今大会6試合目の先発という疲れもあってか、打ち込まれて2年連続の優勝は逃したものの、その総合力は全国でも上位であることは間違いない。

 長野県内の高校から近年プロ入りした投手と言えば、直江大輔(松商学園→2018年・巨人3位)がいるが、高校3年時点の実力も、潜在能力の高さも常田が上のように感じた。

 既にプロ志望届も提出しており、あとは指名を待つばかり。飯山高校から初のプロ野球選手誕生も、十分に期待できるだろう。


☆記事提供:プロアマ野球研究所
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