高校生野手の注目候補は…?
全国各地で熱戦が繰り広げられた高校野球の“代替大会”も、8月をもってすべての戦いに幕。今年の高校3年生たちが挑む公式戦がすべて終了した。
春から大会の中止が相次いだこともあり、プロ入りを目指す選手にとっては例年よりも圧倒的にアピールの場が少なくなってしまった。しかし、そんな中でもアピールに成功した選手もいる。
そこで今回は、この夏の少ないチャンスを掴んで輝きを放った高校生ドラフト候補をピックアップ。その選手を「狙うべき球団」も、あわせて紹介していきたい。
ここでは、前回の投手編に続いて野手編をお送りする。
「野手No.1」は履正社・小深田大地
投手と比べると、上位指名が確実視されるような選手は見当たらない今年の高校生野手。その中で一人、“No.1”として名前を挙げるとなると、小深田大地(履正社)になるだろう。
昨年夏の甲子園でも「3番・三塁」で全試合に出場。2年生ながら主軸としてチームの優勝に大きく貢献すると、新チームになってからも順調に成長を続けている。
この夏も実戦不足で苦しむ野手が多い中、大阪大会では6試合で5割を超える打率をマーク。まさに格の違いを見せつけた。
安定した下半身を生かしてゆったりと小さい動きでタイミングをとり、どのコースにもスムーズに振り出すことができている。さらに、合わせるだけでなく強く振り抜くこともでき、長打力も高校生ではトップクラスだ。
また、あまり触れられないが、サードの守備も安定している。過去数年間で上位指名された高校生野手と比べても、総合力では全く引けをとらないだけに、2位以内で指名される可能性は十分にありそうだ。
特に強打者タイプの若手が少ない阪神や中日などは、狙いたい選手となるだろう。
明石商・来田涼斗も注目度が高い
早くから注目度の高かった選手では、来田涼斗(明石商)も見逃せない存在だ。
運動能力の高さに加えて長打力も備えた強打者で、外野手としてはNo.1と評価する球団が多いだろう。甲子園で行われた交流試合では少し力んだか、自分のスイングができずに1安打に終わったが、自慢のスピードは十分にアピールした。
また、兵庫大会の3回戦・加古川東戦では、打った瞬間それと分かるスリーランを含む5打点の活躍も見せている。
本人は高校からのプロ入りに対して慎重な姿勢を見せているが、志望届を提出すれば、もちろん上位で指名される可能性もあるだろう。
プロ側の視点から考えると、外野の若手有望株がやや薄いDeNAなどは狙い目の選手となるか。
「右の強打者」のおすすめは?
重宝される右の強打者タイプでは、井上朋也(花咲徳栄)と元謙太(中京)の注目度が高い。
井上は交流試合でノーヒットに終わり、埼玉大会でも思うような結果を残すことはできなかったが、スイングの安定感は高校生離れしたものがある。公式戦前に行われた練習試合でも特大の一発を放っているように、遠くへ飛ばす力も十分だ。
とくに、将来の中軸候補が不足している地元・西武は狙いたい選手の一人だろう。
一方、元は昨年夏の甲子園で満塁ホームランを放って注目を集めたが、この一年で体つきが一回り大きくなり、さらにスイングに迫力が出てきた。
186センチと大柄でリーチも長いが、リストワークが良く内角をさばけるのは大きな長所。また、投手として140キロを超えるスピードを誇り、内外野を守れる器用さも魅力である。
同じタイプの若手が少ないロッテなどには、ぜひ狙ってもらいたい選手である。
「リードオフマン」のおすすめは?
3拍子揃ったリードオフマンタイプでは、土田龍空(近江)と細川凌平(智弁和歌山)の近畿勢が有力候補となる。
土田は昨年夏の甲子園では手痛いエラーを喫したものの、高校生ショートではNo.1と言える守備力の持ち主だ。
とにかくプレーにスピードがあり、守備範囲の広さと球際の強さも申し分ない。まだ細身だが、全身を使ってしっかり振り抜くことができており、滋賀大会では木製バットでも強い当たりを放っていた。
坂本勇人の後釜候補として、巨人は狙いたい選手のひとりだろう。
細川は広角に打ち分ける打撃技術が光る左の巧打者。
交流試合では5打数ノーヒットと持ち味を発揮することはできなかったが、和歌山大会では度々鋭い当たりを放ち、リードオフマンとしての役割を果たした。
今年から取り組んでいるショートの守備はまだ課題はあるが、強肩と俊足は高レベルで昨年まで守っていた外野手としての能力はピカイチである。
若手の外野手が少ないヤクルトが、青木宣親の後継者として狙うのも面白い。
捕手の有力候補はこの2人!
最後に捕手では、強打が光る牧原巧汰(日大藤沢)と、地肩の強さならNo.1の二俣翔一(磐田東)の2人が面白い。
牧原は昨年夏の神奈川大会で3本、今年夏の代替大会でも2本のホームランを放っており、抜群のヘッドスピードから繰り出す打球は高校生離れしたものがある
。捕球から送球の流れもスムーズで、コンスタントに1.9秒台前半をマークするスローイングも高校生ではトップクラスだ。
一方の二俣は、セカンドベースを過ぎてもまだまだ伸びていきそうなスローイングが魅力の強肩キャッチャー。
投手としても140キロ台中盤のスピードを誇り、とにかくボールが強い。練習試合では木製バットに苦労している姿も見られたが、しっかりと振り切る力強いスイングも魅力だ。
若手の捕手が少ないヤクルトやオリックス、日本ハムの3球団は、ぜひ狙いたい選手になるだろう。
☆記事提供:プロアマ野球研究所