コラム

“ノーノー未遂男”髙橋光成は何かをつかんだのか?【後半戦を熱くするキーマンたち】

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西武・髙橋光成
2020.09.08 18:00
埼玉西武ライオンズ 2 終了 0 オリックス・バファローズ
メットライフ

後半戦を熱くするキーマンたち~第2回:髙橋光成(西武)


 9月に入ると西武が上昇気流に乗ってきた。

 9日終了時点(以下同じ)における今月の成績は6勝2敗。同日のオリックス戦を序盤の猛打で圧勝すると、早々に3連戦の勝ち越しを決め、これで4カード連続の勝ち越し。直近の10試合にさかのぼっても8勝2敗だから、8月のどん底状態(9勝15敗1分け)を完全に脱したと言っていいだろう。

 このレオの復調を引っ張るのが髙橋光成投手だ。1日のロッテ戦では7回一死まで無安打の好投。さらに8日のオリックス戦でも8回までノーヒットノーランの投球を演じ、快挙まであと3アウトに迫った。結果は9回先頭の代打・西野真弘選手に中前打を喫して天を仰いだが、それでも4年ぶりとなる完封を記録した。9月に入って打たれたヒットはこの2本だけ。防御率0.00は非の打ち所がない。

 プロ5年目となる昨年、初の10勝をマークして、更なる飛躍が期待されたエース候補生。前橋育英高時代には夏の甲子園で全国優勝。ドラフト1位で入団と経歴も申し分ない。近年はマリナーズに移籍した菊池雄星投手と共にオフはトレーニング。投球術の習得に努めると共にメジャー流の筋トレにも励み、190センチ、105キロと外国人並みのボディーも手に入れた。

 ストレートは優に150キロ超。切れ味鋭いスライダーと角度のあるフォークも有効だ。開幕直後は2連勝と順調な滑り出しを見せたが、7月から突如の変調で勝てない日々が続いた。あまりの不甲斐ないピッチングに二軍調整も命じられ、7~8月の2カ月間で1勝6敗と暗闇に迷い込んだ。


復調への予兆


 そんな中で光明を見出したのが8月中旬のオリックス戦だった。それまでは早い回で相手打線につかまり、失点を重ねていたが、この日は粘りの投球で7回を1失点。続く日本ハム戦でも3失点ながら6回を投げ抜いた。この直後から“ノーノー未遂”が始まる。復調への予兆はあった。

 投手とは繊細なポジションである。打者が3回に1度、ヒットを打てば3割打者ともてはやされるのに対して、投手は極論すれば9回二死までパーフェクトな投球をしていても、あと一死、あと一人から崩れて負け投手になることもある。それは極論だとしても、ひとつの投球が「ボール」と判定されるだけで局面はガラリと変わる。「2ボール、2ストライク」が「3ボール、1ストライク」になるだけで余裕を失い、自らの投球を見失うケースもしばしば見受けられる。

 巨人の菅野智之投手のような大エースなら球威もあり、針の穴を通すコントロールもある。だが、髙橋光のような発展途上の投手は得てして、自滅する場合が多い。最初からベストピッチを心掛けるのは当然として、すべてイメージ通りの投球が出来なくなると、コントロールに苦しみ四球から連打。いわゆる「独り相撲」で崩れていく。

 春先には菊池に勧められて読書で心を磨いた。スランプの間にはチームの大先輩である栗山巧、中村剛也選手らから打者の心理を聞いて学んだという。こうした努力の成果なのだろうか、今月に入っての好投は力だけでなくコントロールも安定している。つまり、いい手ごたえが心に余裕を生み、それが快投につながっている。


“鷹キラー”にかかる期待


 春先に渡辺久信GMが今後の投手王国構想を語ったことがある。

 「ニールに髙橋、今井、松本がいて、ルーキーの宮川もいいし、平良も将来性十分。もちろん抑えの増田や平井もいる。これまでは打線におんぶにだっこ、だったけれど、これからは投手陣が楽しみ」

 レオ黄金期のエースとしてチームを支えて来たGMだからこそ、投手陣再建に掛ける思いは人一倍強い。だが、現実は今季もチーム防御率はリーグ最下位、道のりはまだまだ険しい。

 投手の調子は山あり谷あり。髙橋にとってもこのままノーヒットノーラン級の快投が続くことはないだろう。逆に調子の悪い時にどうしのげるかも、真のエースへの条件となる。

 首位・ソフトバンクとの差は依然として大きい。これに肉薄するには連勝に導くヒーローの出現が絶対条件だ。しかも髙橋は昨年来、5連勝の実績も持つ“鷹キラー”。一皮むけた23歳が、今度は混パをさらに熱くするのか――。正念場である。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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