ソフトバンク・周東は初タイトル目指す
いよいよ残りわずかとなってきたプロ野球の2020年シーズン。ここからは個人の争いにも注目が集まっていくところだが、中でもおもしろいのが両リーグの盗塁ランキングだ。
パ・リーグでは、昨年大ブレイクしたソフトバンクの周東佑京が34盗塁でリーグトップを快走中。この争いの常連である日本ハム・西川遥輝と熾烈なバトルを演じており、初めてのタイトル奪取へ向けて奮闘している。
さらにその下には、今季ブレイクしたロッテの和田康士朗が21盗塁で3位、さらにオリックスの佐野皓大が16盗塁で同4位タイと、フレッシュな新顔が上位に続々ランクイン。
また、セ・リーグを見ても、巨人の“代走の切り札”である増田大輝が19盗塁でリーグ2位。周東や和田、佐野、そして増田といういわゆる「足のスペシャリスト」たちに共通しているのが、いずれも規定打席に到達していないことだ。
周東や佐野はここに来てスタメンでの起用も増え、レギュラー定着を目指している最中であるが、彼らは約束された出番があったわけではない中、数少ないチャンスをモノにして盗塁数を着実に増やしてきた。
巨人・増田は「76年前の記録」を超える…?
一本の単打や四球から、たちまちチャンスを作る“足のスペシャリスト”たち。特に今後の優勝争いや日本シリーズでは、彼らの働きぶりが勝利のカギを握るといっても過言ではない。
中でもより「スペシャリスト」に特化しているのが、巨人の増田大輝だ。
今季はここまで65試合に出場しているが、そのうちスタメン起用は5試合だけ。多くが代走からの出場となっている。
そんな状況で、盗塁数19は現在のところリーグ2位。トップの阪神・近本光司(23個)に食らいついており、もしここから逆転で盗塁王に輝くことがあれば、76年前の“ある記録”を上回ることが確実だ。
ご存知の通り、盗塁王のタイトルは規定打席に到達できなくても選出の対象になる。過去に規定打席未満で盗塁王に輝いたのは、1リーグ時代を含めて10人。それが以下の通り。
▼ 規定打席未到達の盗塁王
1944年:93打席=呉 昌征(阪神/19盗塁)
1951年:304打席=土屋五郎(国鉄/52盗塁)
1966年:158打席=山本公士(阪急/32盗塁)
1967年:301打席=西田孝之(東京/32盗塁)
1969年:394打席=柴田 勲(巨人/35盗塁)
1981年:306打席=青木 実(ヤクルト/34盗塁)
1993年:372打席=緒方耕一(巨人/24盗塁)
1995年:335打席=緒方孝市(広島/47盗塁)
2002年:343打席=赤星憲広(阪神/26盗塁)
2011年:407打席=藤村大介(巨人/28盗塁)
この10人の中で、圧倒的に打席数が少ないのが1944年の呉昌征だ。この年は太平洋戦争の戦火が激しくなり、6球団が各35試合を戦うという異例のシーズンだった。
現在42打席で19盗塁の増田大が盗塁王に輝けば、76年前に呉が記録した93打席を下回ることは確実だろう。正真正銘の“足のスペシャリスト”として、チーム残り22試合で近本を捉えることはできるだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)