コラム 2020.10.31. 08:30

“打倒”パ・リーグに必要なもの【原巨人は黄金期を迎えたのか?】

無断転載禁止
セ・リーグ連覇を果たし、トロフィーを掲げる巨人・原監督=東京ドーム
2020.10.30 18:00
読売ジャイアンツ 3 終了 3 東京ヤクルトスワローズ
東京ドーム

第5回:まだまだ道半ば


 原巨人が本拠地・東京ドームで行われたヤクルト戦を引き分けて優勝した。2位の阪神を8.5ゲーム引き離して2年連続38度目のリーグ優勝だから完勝と言っていい。

 しかし、優勝決定ゲームとしては何とも複雑で、難解な方程式を解くような戦いとなった。5連敗で迎えた大一番はマジック1なので、勝てば文句なしの優勝。ところが引き分けの場合は中日が負けて、なおかつ阪神が負け、もしくは引き分けがVの条件とややこしかった。そのよもやの展開となる。

 まず中日が大敗。巨人はと言えば、終盤までリードしていたが、8回に守護神のR.デラロサまで投入しながら追いつかれて雲行きが怪しくなる。一方、阪神は9回二死までこぎつけながらDeNAのJ.ロペスに2ランを浴びて同点。共に同点のまま延長戦に突入するが、先に阪神の引き分けが決定。その結果、巨人は延長10回、ヤクルトを無得点に抑えた時点で栄光のゴールが待っていた。

 場内アナウンスでも、中日の負けと阪神の引き分けが告げられてファンの拍手が大きくなった。通常シーズンなら延長12回まで戦うが、今季はコロナ禍の特別ルールで10回打ち切り。27日にパ・リーグ優勝を決めたソフトバンクは胴上げもなかったが、原辰徳監督はマスクと手袋をした打撃投手ら裏方の手で宙に舞う。どれもこれも異例な年を象徴するようなフィナーレとなった。


原スタイル


 「我々は個人軍ではなく、巨人軍」。指揮官が好んで使うフレーズだ。

 チーム愛と勝利至上主義を前面に押し出す“原スタイル”は、時に坂本勇人、丸佳浩らの看板選手にもバントを命じ、白星を目前にした先発投手を交代させるケースもあった。全員を将棋の駒のように駆使しながら白星を積み重ねてリーグ連覇は見事である。

 しかし、このタイトルにある「黄金期を迎えたのか?」と問えば、答えは「ノー」と言うべきか?

 確かに9月終了時点までの巨人は無類の強さを誇った。同月の成績は19勝6敗1分け。他球団もお手上げの1強状態だった。ところが、10月に入ると9勝14敗3分け(30日現在)の急減速。

 「我々が鞭をいれて、その分、疲れが出た」と指揮官も振り返るように、中川皓太、高梨雄平、大江竜聖と言った中継ぎ、抑え投手が故障や打ち込まれる場面も出て来た。吉川尚輝と松原聖弥の「ヨシマツコンビ」で固定されかけた1,2番も怪しくなり、強打の大城卓三捕手のバットが湿りだすと、下位打線の得点力が低下していった。


対照的なパ王者


 パ・リーグに目を向けると、勝負どころの秋にソフトバンクが盤石な闘いを見せ出したのとは対照的である。

 幸い、クライマックスシリーズのあるパ・リーグに対して、いち早く日本シリーズ進出を決めた。今年の開幕は11月21日だから本番まで3週間あまりある。この間にどれだけ、選手のコンディションを引き上げて9月までの強い巨人に戻すかが日本一奪還の鍵となるのは言うまでもない。

 短期決戦では相手主力打者をいかに封じるか、ラッキーボーイの出現もシリーズの流れを変える。近年は先発投手以外に「第二先発」という形でシリーズ独特な投手起用も見られる。この辺りはベンチの戦略と決断力が求められるところだ。

 監督復帰1年目となった昨年はセ・リーグを制覇したものの、ソフトバンクに4連敗。野球の違いを見せつけられた。その屈辱を晴らすためにも再戦を希望するのが原監督の本意に違いない。


ジャンプのとき


 「我々はまだホップ、ステップの段階。まだまだ発展途上のチームだが、正々堂々と戦って日本一を目指します」。

 巨人の日本一は原監督時代の2012年に達成して以来遠ざかっている。しかもそこから7年間はパ・リーグのチームが頂点に立ち続けている。今年は開催中止となったセパ交流戦でもパの圧倒が続いている。セ・リーグ全体に覆うパリーグへのコンプレックスを打破するためにも、盟主の看板のためにも負け続けるわけにはいかない。

 10月に襲った“秋バテ”を克服して、いかに態勢を立て直すのか? 原マジックの成否もそこにかかっている。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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