「城島の2」を受け継いで…
コロナ禍での“異例のシーズン”が閉幕し、プロ野球はオフシーズンに入った。契約更改などもスタートする中、阪神タイガースでは数選手の背番号変更が発表された。
たかが数字と言っても、込める思いは様々。新たな高みを目指す者、巻き返しへ心機一転をはかる者…。そこにはそれぞれの決意が強くにじんだ。
梅野隆太郎は、悩んだ。
「話が来て1週間以上は…。ギリギリまで時間をもらって返事をしました」
球団から打診され、捕手が背負うことの多い「27」も候補にある中で、無視できない番号があった。
「小さい時、ダイエーホークスでジョーさん(城島)が2番付けてて、カッコイイなと思っていたし。当時は下敷きとかも買いながら」
福岡出身の梅野にとって、「城島健司」はヒーローだった。
“打てる捕手”を体現して、メジャーでもプレーした憧れの存在。阪神時代に在籍期間が被ったことはないものの、数年前からプライベートで食事をともにし、数々の助言も授かってきた。
「それぐらい恥じないように。目標で終わらずに、恥じないプレーヤーとして。2で頑張ろうと思えたので、2にしました」
「城島の2」を背負うことの意味は分かる…いや、覚悟している。
のしかかるこれまで以上の期待と重圧。阪神時代の2010年に打率.303、28本塁打、91打点をマークした城島氏の成績と比べれば、その背中はまだ遠い。
「(数字は)全部伸ばしたいと思うし」の言葉は、偉大な先輩への挑戦の意味合いも強い。何より、欲するものは明確だ。
「目指すものは、この2番という数字でとにかくリーグ優勝、日本一となるためにやりたいなと思います。軽い決断でやったわけじゃなくて。自分の番号にできるチャンスでもある」
さまざまな想いを背負い、プロ8年目の戦いに挑む。
「26」で心機一転を…
一方、今季までその「2」は北條史也の番号だった。梅野が「2」を背負うことに伴い、来季からは「26」でプレーすることになる。
「成績もあんまり残せてないし、ケガもあったりして。気持ちを新たにというか、話をしていただいてからそういう気持ちになりました」
本人が返上したわけではなく、球団からの提案ではあったが、ひとつの“転機”として捉えていた。
高校時代のライバルだった藤浪晋太郎とともに、2012年のドラフトで入団。強打の遊撃手として期待されてきたものの、8年目を終えて定位置は確保できていない。
同世代の木浪聖也だけでなく、今季は高卒2年目の小幡竜平も台頭。来季は文字通り背水のシーズンになる。
「気持ちはもう次ですね。(背番号で)別にもう何も思ってない。変わるって決まってからは、自分の背番号(26)が良く見えるようになりましたね」
もがいた時間の多かった“相棒”への未練は断ち切っていた。
梅野がまだ見ぬ景色を目指すなら、北條は「26」でまだ見ぬ自分を呼び覚ます…。虎の背番号「2」を巡る新章が幕を開ける。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)