第8回:低迷チームに「4番」の成長
高津ヤクルトの1年目は41勝69敗10分けの成績で、2年連続最下位という結果に終わった。高津臣吾監督が最も重要視した投手陣の再建も、12球団ワーストの防御率4.61という数字が示すように課題は来季へ持ち越しとなった。
投手層の薄さを打線でカバーしたかったが、チーム打率はリーグワーストとなる.242と思うように機能せず、得点圏打率も同ワーストの.243とチャンスで精彩を欠いた。そんな中、開幕から全試合4番に座り続けた村上宗隆は、打率.307、28本塁打、86打点と堂々の成績を収め、得点圏打率は「.3518」でリーグトップと勝負強さを発揮した。
さらに、出塁率はリーグトップの「.427」で、史上最年少で最高出塁率のタイトルを獲得。ベストナインにも3年目にして初めて選出され、年俸も高卒野手としては最速で1億円に到達した。新人王を獲得した昨季からさらに成長を続けており、低迷するチームに希望の光を照らしている。
チームへの思い胸に
村上にとって、チームへの思いを胸に戦った1年でもあった。印象的だったのは10月21日、神宮球場での巨人戦。石川雅規の今季2勝目がかかっていた試合で、村上は6回に左越えに逆転2ランを放ち、チームを勝利に導いた。
「これぞ4番」と呼べる、意地の一振り。この日、村上は初回に巡ってきた無死満塁の場面で三振。チャンスで打てなかった悔しさと、6回1失点と好投していたチームメイトに「勝ち星をつけたい」という思いが生んだ一撃だった。
勝利への渇望や仲間のために――。自身の成績だけではない。チームを思い打席に立つことについて、村上はこう話してくれた。
「チームの4番なので、何とかチームに貢献できるように頑張りたいと思いますけど、4番を打って1年目なので、今の自分はシーズンが開幕したときよりもいろいろな経験をしてきている。自分が成長する中でこれからチームも一緒に勝てるように頑張りたいなと思います」
来季も村上「4番」でチームの展望は
現在20歳の若き4番は、まだ成長過程。高津監督は、村上を来季も4番として起用し続けることを明らかにし、ポジションを一塁手で固定する案もある。そして4年目の来季は、チームを上位に押し上げる活躍がより一層期待される。
4番と共にチームは成長し、這い上がる。今オフ、去就が注目されていた山田哲人と石山泰稚の残留が決定。山田に関しては来季から新キャプテンを務めることも決まっている。さらに25日には、FA宣言していたエース・小川泰弘の残留も決定した。投打の主力が3人揃って残留を決めたことは何よりの“補強”となった。
打撃陣は着実に厚みを増している。新戦力として外国人野手2人を獲得。そのホセ・オスナとドミンゴ・サンタナに加え、ソフトバンクを自由契約となった内川聖一の入団も決定している。
チームは来季のスローガン「真価・進化・心火」を掲げ、高津監督は「勝ちにこだわる」野球を目指すと約束。指揮官としての2年目は、真価が問われる1年と位置づけている。
投手陣のレベルアップに加え、4番の村上を中心とした打線で上位争いを繰り広げたい。特別なシーズンを終えたツバメたちは、来季へと向かう。
文=別府勉(べっぷ・つとむ)