最終回:新シーズンに向けて
残念なことに、2021年もまたコロナの話題で幕が開ける。世界中をパンデミックに陥れたウイルスの猛威は、収束の道をたどるどころか新たな変異種が発見されて拡大している。頼みのワクチンこそ一部の国で摂取が始まったものの、我が国では最短で2月末、全国民に行きわたるにはまだまだ長い日数を要するようだ。
1年間の延期を余儀なくされた東京五輪は、今年こそ開催をと願いたいが、こちらもまだまだ予断を許さない。夏までに全世界の感染に終息のメドは立っているのか? 仮に開催にこぎつけても、観客を迎え入れられるのか? 特に海外からの入国をどの程度まで認めるのか? 綱渡りの折衝は続く。
野球界でも「脱コロナ」の道のりは前途多難が予想される。20年の12月下旬にはソフトバンクの東浜巨投手がコロナ陽性判定を受けた。他にチームスタッフにも感染が判明するなど、球団は年末年始にかけて対応に追われている。
約1カ月後に迫るキャンプでも様々な問題がクローズアップされてきた。
巨人を例にとると、2月1日から宮崎でスタートする一軍本隊とは別に、ベテラン・外国人を中心とする「スペシャル(S)」班は、同月6日から沖縄でキャンプイン。若手主体の鍛える組と調整主体のベテランらを分けて、少しでも接触のリスクを少なくしようという狙いだ。また、キャンプの応援も「予約登録制」の有観客が決まっている。宮崎のメイン球場であるサンマリンスタジアムの場合、土日祝日は上限5000人で平日は同3000人に制限される。
もうひとつ、各球団で苦慮しているのが外国人の入国問題だ。
チームの明暗を左右する助っ人は…
例年なら1月下旬に来日して2月のキャンプインにはチーム合流するが、感染の再拡大を受けて政府は12月28日から1月末まで新規入国を停止すると発表。この時点で通常通りのトレーニングは望めない。仮に2月1日に来日が認められても2週間程度の隔離期間があるので、最短でも本隊合流は中旬以降となる。
今年も各球団に楽しみな新外国人選手の入団が決まっている。
巨人にはメジャー通算96本塁打を誇るE・テムズ選手、阪神には韓国球界で大活躍したR・アルカンタラ投手とM・ロハス選手やロッテには元マーリンズでイチローと同僚だったA・エチェバリア選手ら多士済々だ。外国人選手の場合、MLBでの実績は抜群でも、日本野球にマッチできるかが大きなポイント。打者で言えば長打力を期待されて打線の主軸を期待される。それだけにキャンプ、オープン戦と実戦を重ねておきたいところ。首脳陣にとっても打順の編成に見極めの時間が欲しいのが実情だ。
昨年の場合、ソフトバンクのA・デスパイネ、Y・グラシアル両選手のキューバ出国が遅れてチームに本格合流できたのは8月になってから。それでも彼らは来日経験が長かったので大きな混乱はなかったが、新外国人で同様のケースが起きればペナントレースそのものに大きな影響を及ぼしかねない。
年末の段階で日本ハムの吉村浩GMは「全球団が歩調を合わせて、最善策を見つけようとしている段階」と説明したが、今後はNPBから政府に早期来日の道筋をつけてもらうよう要望するなどの声も上がっている。
コロナ下の野球という観点から見れば、選手、スタッフから感染者を出さないこと、興業としての観客動員やファンサービスなど1年間で得た教訓やノウハウの蓄積は大きい。だが、一方でどれだけ感染対策を行っても安心、安全と言えないのもコロナである。
「ウィズ・コロナ」から「脱コロナ」へ。満員の球場に大歓声が届くのはいつの日になるのか。試練の2年目が始まろうとしている。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)