高い制球力と投球術が魅力
コロナ禍に揺れた2020年が終わり、新たな年がスタート。年明け早々から「緊急事態宣言」が発出されるなど、まだまだ予断を許さない状況が続いているが、時計の針は止まってはくれない。ドラフト戦線は既に動き始めている。
プロアマ野球研究所では、今年も引き続きドラフト候補を取り上げ、その実力を分析してご紹介していきたい。
今回は、スケールの大きさが魅力の“大型高校生右腕”を紹介する。
▼ 達孝太(天理)
・投手
・193センチ/85キロ
・右投右打
<主な球種と球速帯>
ストレート:136~145キロ
カーブ:105~111キロ
スライダー:120~126キロ
フォーク:120~124キロ
☆クイックモーションでの投球タイム:1.14秒
「13奪三振」見事な完投勝利
達の名前が一躍知れ渡ることになったのは、2019年・秋の近畿大会だ。
決勝の大阪桐蔭戦で先発を任されると、8回途中まで投げて被安打5の失点4と力投。公式戦初先発とは思えない落ち着いたピッチングで、チームの優勝に大きく貢献した。
つづく明治神宮大会では中京大中京に打ち込まれたものの、昨年8月に行われた甲子園交流試合では1回をパーフェクト、2奪三振と好投を見せるなど、改めて素材の良さを示している。
そんな注目の右腕は、コロナ禍の新チームでも輝きを放った。
実際にプレーを見ることができたのは、京都で行われた近畿大会・初戦の乙訓戦のこと。立ち上がりこそ相手打線の積極的な打撃にヒットを許す場面はあったが、走者を背負っても落ち着いた投球を披露。
中盤以降はストレートの勢い、変化球の精度がさらにアップして、7回に1点を失ったものの被安打は5、13奪三振で見事な完投勝利を飾った。
高校生離れした変化球の精度
最大の長所は193センチという長身でありながら、体の使い方に無駄がない点だ。
まず、目立つのがその姿勢の良さ。体つきは細いとはいえ、左足を高く上げても背筋が曲がることがなく、打者から見るとかなりの高さに見える。
そして、良い意味でフォームがコンパクトで、体の近くでスムーズに腕を振ることができる。ストレートのこの日の最速は142キロで、アベレージは130キロ台後半。150キロを超える高校生投手が珍しくない昨今では、少し物足りない数字ではあるが、肘の位置が高く、ボールの角度は相当なものがある。
また、これだけ大型でありながら、変化球の精度も高校生離れしている。
組み立ての中心となるのはスライダーとチェンジアップ。どちらもしっかりと腕を振って低めに集めることができ、打者の手元で変化するため空振りも取れる。
この日の試合では、右打者の内角にスライダーを投げ込み、打者が思わず腰を引くという場面もあった。加えて、チェンジアップを右打者の膝元に狙って投げられるというのも高等技術である。
高校生の場合、ストレートも変化球も基本的に外角が圧倒的に多いだけに、これらのボールは見て、非常に新鮮な印象を受けた。
この日は13個の三振を奪いながら、球数はわずか104球。この数字を見ても、いかに高い制球力と投球術を兼ね備えているか、よくわかる。
課題は球威不足も着実に成長
課題は、とにかく力強さをアップさせることだ。
三塁側からフォームを見るとそれは顕著だが、脚の長さから考えてもステップの幅はまだまだ狭く、踏み出してから腕を振るまでの“間”も非常に短い。現在の球威では、低めの変化球を見極められた時にストレートで押すことは難しいように見られた。
実際、翌日の大阪桐蔭戦では連投の疲れも影響したことはあるが、二巡目以降につかまり、7回11失点でコールド負けを喫している。今後のことを考えると下半身の力強さと柔軟性アップがポイントとなりそうだ。
いくつかの課題にも言及したが、193センチという超大型でありながら、角度のあるストレートと質の高い変化球を低めに集められる投手としてのセンスは間違いなく只者ではない。昨年秋と比べても、この1年で着実に成長しており、スケールを残したまま完成度も高くなっている。
試合後、本人はボールの角度を意識している点はもちろんだが、計測できる機器を用いてボールの回転数アップに取り組んでいると話していた。このあたりの話題がサラっと出せる点も非常に好感が持てる。
春のセンバツ出場は極めて微妙な状況だが、春以降も達の投球に注目が集まることは間違いない。
☆記事提供:プロアマ野球研究所