「一軍の戦力になる力はない」
いよいよ、春季沖縄キャンプが迫ってきた。中日が一軍・二軍の振り分けを行うスタッフ会議を開いたのは1月14日。その日のうちに一軍・北谷組、二軍・読谷組のメンバーは発表された。
ドラフト1位の高橋宏斗(中京大中京)は、選手寮「昇竜館」で読谷組だと把握した。翌朝起きて、紙面上にあるメンバー表を見回した。
「自分の中で一軍の戦力になる力はないと分かっていました。二軍スタートですけれど、前向きに捉えてしっかりアピールしていきたいと考えています。(監督から何か)伝えられたことはなかったです。焦らないでやっていくというのもあるんですけれど、実力の世界で結果を出さないとクビになる。そこはしっかり自分の中でプレッシャーを感じてやっていきたいと思います」
新人合同自主トレのキャッチボール相手は、ドラフト2位の森博人(日体大)だった。最速155キロの看板が嘘じゃないと証明するように、腕を振る。
高卒の高橋と、大卒の森。「キャッチボールでも勉強になります」と金の卵。ほかにも、又吉ら竜戦士が汗を流していれば、どうしても視界に入る。期待値や伸びしろ抜きの現状の実力を考えて「一軍で戦力になれる力はない」と分析していた。
ワクワクと緊張を噛みしめながら…
どうステップアップし、未来のエースへ進化していくのか…。成長のヒントになるきっかけを、メンバー表で探していた。
読谷組には、球界最年長で名球会の会員である福留孝介がいる、そして2年連続で最多安打のタイトルに輝いた大島洋平もいる。2人で合計3995安打。ブルペンで制球よく投げていれば、球界トップクラスのバットマンが突然、打席に入る日が来るかもしれない。
「野球をしている人なら誰でも知っている球界を代表する選手。自分の球がどういう球であるとか、どういう球がバッターにとって嫌な球なのか聞いてみたい。そういった経験をしていくためにも、自分の中でいい準備をしていきたい」
ベテラン選手に打席に入ってもらうためには、1月中にブルペン入りし、2月1日のキャンプインを不安なく迎えなければならない。適度な間隔を設けながら、複数回、ブルペンに入る。
立場はドラ1。制球に問題がなければ、そんな情報はすぐに回る。ここまでのハードルをクリアして、ようやく、先輩打者をブルペンの打席に入ってもらう準備は完了する。
「練習に対しての意識の高さというのは見習っていきたいと思いますし、やはり球界を代表するバッターなので、どういう投手がバッターにとって嫌なのかというのは聞いていけたら、自分の中でもプラスになると思う。同じスタートを切るからには、自分の中でプラスにしていきたいなと思います」
まずは見て学ぶ。そして、機会があればブルペンでの“即興対戦”を経験してみたい。
「9イニングを通して、安定したフォームで投げる体はつくり上げられていません。ピッチングは下半身の安定性が大事で、筋力を増やさないといけないと思っています」
高橋宏斗のキャリアはスタートしたばかり。背番号19は、ワクワクと緊張の2つを噛みしめ、実感しながらキャンプのイメージを膨らませていく。
文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)