『B魂』第13回・山下舜平大
オリックスは昨秋のドラフトで福岡大学附属大濠高の大型右腕・山下舜平大投手を1位指名した。
担当は九州・沖縄地区を管轄する縞田拓弥スカウトだ。現役時代は内外野を守れるユーティリティプレイヤーとして活躍し、2018年限りで現役から退くと、そのままスカウトに転身。昨年もドラフト1位の宮城大弥投手を担当した。
縞田スカウトは山下という逸材を早くからチェックしていたが、甲子園球場で行われたプロ志望高校生合同練習会で150キロを計測して打者5人から3つの三振を奪うなど猛アピール。「かなり前からチェックしてたので、甲子園には正直出て欲しくなかった。なるべく他球団の方には見られたくなかった」と振り返ったほどの出色のパフォーマンスで、ドラフト上位候補としての立場を確固たるものとする。
とはいえ、まだまだ未完の大器。牧田勝吾編成部副部長も「確かに隠しておきたかった」としながらも、入札を外した際に1位で指名できる可能性はあると考えていた。そして、競合に敗れた後の1位指名を山下とすることには、誰も異論を唱えなかったという。
縞田スカウトは昨年、宮城について「今年の夏には一軍に出てくると思いますよ」と語っていた。開幕が延期したこともあり秋となったが、その言葉通り、実際に先発投手として一軍に昇格し、プロ初勝利も記録した。気になる山下に関してはどうなのかと話を向けると、「宮城に比べたら時間がかかるかもしれないけど、化け物になる“モノ”は持ってます」と一言。怪物に成る資質は十分にあるとの見方を示した。
さらには興味深い言葉も。「球団の方針もあるので」と前置きした上で、「僕個人としては抑えをやっても面白いんじゃないかなと思います。高校時代は先発完投もしてましたけど、球も速いですし、短いイニングならさらに実力が発揮できるのかなと。投げる体力は問題ないです。体も強い」と、抑えとしての適正があることも指摘。どちらの道に進むにせよ、山本由伸のように後ろからスタートして、先発に転向する道も面白いかもしれない。
昨年は、宮城がプロ初勝利を挙げた試合で、同期入団の紅林弘太郎が適時打を放った。その時の話になると、縞田スカウトは「スカウト冥利に尽きますね」と語り、現役時代さながらの屈託のない笑顔を見せた。今年も将来性を十二分に感じさせる新人たちが入ってきたが、縞田スカウトは育成1巡指名の川瀬堅斗投手(大分商業高)も担当しており、今後が楽しみな存在だ。
そんな中、スカウトたちの目線は早くも今秋のドラフトに向けられている。すでに楽しみな存在がいることを示唆した縞田スカウトは、チームの戦力になるべき逸材を探し出すため、今日もその目を光らせている。
取材・文⚫︎どら増田