昨夏の独自大会で急浮上!
1月29日(金)に出場32校が決定した今年の選抜高校野球。今秋のドラフト会議で注目を集めそうな逸材たちが大舞台への切符を掴んだ一方で、残念ながら吉報が届かなかったチームの中にも楽しみな存在がたくさんいる。
プロアマ野球研究所では、そんな選手たちにスポットを当てた『センバツ出場は叶わずも、プロが注目する「ドラフト候補」たち』という記事を寄稿。
今回はその記事でも名前を挙げている、岐阜の高校野球界に現れた“大型スラッガー”について、個別により詳しく取り上げていきたい。
▼ 阪口 樂(岐阜第一)
・投手兼一塁手
・186センチ/87キロ
・右投左打
☆一塁到達タイム:4.38秒
「特大の一撃」で全国的な注目
阪口の名前が全国的に知れ渡ったのは、昨年夏に行われた岐阜県の独自大会・帝京大可児戦のこと。
初回、左中間への先制ツーランを放つと、9回には加藤翼(中日5位)の149キロを完璧にとらえ、ライトスタンドの中段まで叩き込む。
加藤はこの試合、右手中指にできたマメの影響で8回からのリリーフとなっていたが、阪口の打席では明らかにギアを上げて150キロをマークしている。そんな加藤の全力投球を軽々とスタンドまで運べるところに、阪口の打者としての能力の高さがよく表れている。
筆者はこの試合をネット配信で見ていたため、秋は現地で必ず見なければならない選手の一人として考えた。そして、9月20日の岐阜県大会・3位決定戦の中京戦、10月31日の東海大会準決勝・県岐阜商戦に足を運んだ。
結果から先に書こう。中京戦は適時打を含む2安打・1打点に加え、投げても10回を10奪三振で2失点と勝利に大きく貢献したが、県岐阜商戦では第3打席に四球を選んだものの3打数無安打、投げても8回6失点で降板と悔しい結果に終わっている。
体格と打ち方は大谷翔平を彷彿
まず良さを感じたのが、上半身の力みがなく、自然体で構えてスムーズに鋭く振り出せる点だ。
小さくバットを引いてトップの形を作るが、無駄な動きもなく、バットが背中に入るようなこともない。一見すると楽に振っているようにも見えるが、ヘッドがきれいに走るのは得難い長所である。
加藤の150キロ近いストレートに対応してスタンド中段まで運ぶのもよく分かるスイングで、その体格と打ち方は大谷翔平(現・エンゼルス)を彷彿とさせる。
その一方で、課題が見えたのが下半身の使い方。右足を一度引いて、つま先で軽く地面に触れてから踏み出すスタイルだが、ステップの動きが単調で粘りがほとんど感じられない。
夏の大会での活躍は当然ながら相手に知れ渡っており、ストレートは見せ球程度にしか使ってこない打席ばかりだったとはいえ、変化球に簡単に形を崩される場面が非常に多く見られた。
実際、東海大会の3試合では10打数無安打。4番としての役割を果たすことができていない。筆者が見た2試合の結果を全て書き出すと、ファーストへの内野安打、二ゴロ、右安、二ゴロ、四球、二ゴロ、右飛、四球、三振と、打球方向が全て右へ偏っていることがわかる。もう少し球を呼び込んで、センター中心に打つ意識が欲しいところだろう。
中日のスカウト会議で有力候補に
ただし、夏の帝京大可児戦で放った一本目の本塁打は、緩い変化球を左中間に運んだもの。左方向へも飛距離が出るというのは大きな魅力である。
秋は背番号1でエースという役割も背負っており、その点が打撃にも影響していたことは否めない。ちなみに、投手としてもテイクバックできれいに肘が立ち、バランスの良いフォームで130キロ台後半のストレートを投げ込むなど、非凡なものを見せている。
とはいえ、阪口の将来性を考えると、やはり魅力があるのは圧倒的に打者の方だろう。投げない時は一塁を守っているが、本人も将来を考えて外野の守備にも意欲を見せているという。
一塁到達タイムも、流して4.3秒台をマークしているように脚力も決してないわけではなく、投手として140キロ前後のスピードを投げられる肩の強さがあるのも大きなプラスだ。
年明けに行われた中日のスカウト会議では、有力候補の一人として阪口の名前が挙がったという報道も出ており、今後も高い注目を集めることは間違いない。
先日行われたセンバツの選考委員会では、「岐阜第一」という名前は呼ばれたものの、扱いとしては“補欠校”の一角。夏のリベンジに注目が集まるところだが、県内にはこの春のセンバツでも有力校として注目を集める県岐阜商という強大なライバルが立ちはだかっており、ここを倒さなければ道は開けない。
悔しさをバネに、夏は全国にその名を轟かすことができるか…。東海地区が誇る大型スラッガーの今後に注目だ。
☆記事提供:プロアマ野球研究所