コラム 2021.02.16. 07:09

球史に残る珍名も…変わった登録名や本名を持つ“助っ人列伝”

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名字ではなく「アレックス」で登録された理由は? (C) Kyodo News

漢字表記では「王天上」


 キャンプも折り返し地点を過ぎ、調整も徐々に実戦のフェーズに突入。この時期はどうしても新戦力に注目が集まる中、今年はコロナ禍の影響でまだチームに合流することができていない新外国人選手もおり、果たして万全の状態で開幕を迎えることができるのか…。例年以上に見極めが難しくなってきそうだ。


 今季もメジャー通算196本塁打を誇るジャスティン・スモークや、同96本塁打を誇るエリック・テームズといった大物が巨人に加入。ライバルの阪神には韓国で昨季47本塁打を記録しているメル・ロハス・ジュニアが入団するなど、多くの新助っ人たちが日本でのデビューを控えている。

 そんな中、今回取り上げたいのが、「個性的な名前」で日本の野球ファンにインパクトを残した男たち。これまでに来日した1000人を超える外国人選手の中で、特に思い出深い選手を振り返ってみたい。


 “王貞治”を超えるように…。そんな願いから、漢字表記の「王天上」という登録名でプレーしたのが、1979年に来日したフランク・オーテンジオ(南海)である。

 メジャー出場はわずか9試合だったが、185センチ・97キロという恵まれた体格で3Aでは本塁打を量産。デンバー時代の1977年には43本塁打・127打点の大暴れで二冠王に輝いた実績をひっさげ、期待の大砲候補として日本にやってきた。

 当初は「世界の王に失礼だ」ということから「オーテンジオ」としてプレーをしていたのだが、3月13日のオープン戦で大洋の遠藤一彦から左中間に来日1号を叩き込むと、さらに斉藤明夫から満塁弾も放ち、2発・5打点と打棒爆発。この活躍が認められ、翌日からは漢字表記へと変わった。


 27日の広島戦でも2打席連続弾を放つなど、オープン戦で王貞治(3本)を上回る5本のアーチを描いたことから、「“本家”の王超えだ!」と報じられたことでも話題に。ところが、いざシーズンが開幕してみると、日本の投手特有の変化球攻めに大苦戦。打率は.248、本塁打は23本をマークしたものの、93三振と完全に名前負け。王を超えたのは、三振数と盗塁数(2)だけだった。

 ちなみに、2年目もシーズン途中に二軍落ちを経験するなど、最後まで期待に応える活躍は見せられず…。1980年、シーズン途中の7月に解雇され、日本を離れている。


日本語読みだとまずかった…


 お次は、ファーストネームこそ王天上と同じ「フランク」ながら、姓が日本語で卑猥な意味を連想させるということで問題になったのがマンコビッチという選手。2Aでプレーし、陸軍除隊後の1962年7月に大毎に入団したものの、さすがに本名ではまずいという配慮から、「マニー」で登録されている。

 肝心な野球の実力はというと、2A時代からチームメートだった捕手のニック・テスタが「ナックルもシュートも一応は投げられる。彼はきっとやってくれるよ」と太鼓判を押すなど、本人も「10勝はしたい」と意気込んで日本球界にやってきたが、成績は12試合で0勝0敗、防御率3.72という中途半端なものに。肩口から入るカーブをカモにされ、1勝も挙げられないまま1年で退団した。


 他にも、2000年代に大毎の後身であるロッテをはじめ、巨人やヤクルト、西武の4球団でプレーしたブライアン・シコースキーも、本来は「シコルスキー」に近い発音なのだが、同様の配慮からか、「シコースキー」で登録された。こちらは10年間で37勝・58セーブと、息の長い活躍を見せている。

 さらに、1986年に南海入りしたデビッド・ホステトラーも、当初は「ホステトラー」で登録される予定だったが、「ホステスやホテトルを連想する」という理由から、ファーストネームの「デビッド」になったということもあった。この選手は1年目こそ門田博光のあとの5番を任されるなど、打率.285で25本塁打・74打点とまずまずの成績だったが、2年目は成績を落として寂しく退団・帰国した。


「オチョアにすると、おっちょこちょいみたい」


 デビッドとは対照的に、ファーストネームを登録名にして日本で成功したのが、2003年に中日入りしたアレックス・オチョアだ。

 「オチョアにすると、おっちょこちょいみたい」という山田久志監督の鶴の一声によって「アレックス」登録となった男だが、2005年にセ・リーグ史上初の“開幕戦サヨナラ満塁本塁打”を放つなど、広島時代も含む6年間通算で打率.289、97本塁打と活躍を見せた。


 また、一度は登録名を用いながら、すぐ本名に戻したのが、1998年にヤクルトでプレーしたトラビス・ドリスキルだ。

 「キル」が「Kill(殺す)」に通じるなど、語感が良くないことから「ドリスキー」としてデビューしたが、紅白戦や練習試合も含めて6試合で15回を投げ、被安打27の自責点14と散々。開幕前に二軍落ちの危機を迎えた。

 ところが、そこから心機一転、登録名を本名の「ドリスキル」に変えると、3月22日のオープン戦・オリックス戦で2回を5奪三振の無失点。見違えるような好投に、「あれだけ放ってくれれば。古田(敦也)からも合格点が出とったぞ」と、野村克也監督もゴキゲン。

 しかし、シーズン開幕後は7試合で0勝1敗、防御率4.80と“元の木阿弥”になり、4月30日に登録抹消。7月に退団となった。


「メンチ勝つ!」の見出しは不発


 日本人におなじみの食べ物と同名の登録名で注目を集めたのが、2009年に阪神でプレーしたケビン・メンチだ。

 メジャー通算89本塁打の長打力を買われ、年俸1億8千万円で契約。在阪スポーツ紙は、メンチのバットが勝利を呼ぶシーンを想定し、「メンチ勝つ!」の見出しを用意していた。

 だが、オープン戦は打率.143と極度の不振。シーズン開幕後も、4月4日のヤクルト戦で2度のチャンスにいずれも三振に倒れるなど、期待を裏切りつづけ、怒った虎ファンからは「ミンチにしたるぞ!」の罵声も…。

 そして、5月に2度目の二軍降格を味わうと、その後は一軍に復帰することができないまま、7月にシーズン途中帰国。140キロ台の直球を打ち損じ、変化球にも対応できないのでは、打率.148に0本塁打という数字も致し方なかった。

 一方、広島とロッテで通算7年プレーしたネイサン・ミンチーは、外国人投手史上初の“両リーグ2ケタ勝利”を達成するなど、通算74勝と活躍。メンチとは大違いの数字を残している。


 最後に、2000年にヤクルトにテスト入団したドナルド・レモンも、本名ながら“親会社の商品イメージにふさわしい登録名”として記憶に残る一人だ。

 4月14日の広島戦では史上6人目の1イニング4三振を記録したが、31試合で3勝7敗1セーブ、防御率3.91と今ひとつ振るわず、1年限りで退団。翌年からレモン味の新商品「ヤクルトレモリア」が発売されただけに、たった1年のすれ違いが惜しまれる。


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)

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