存在感を発揮する“即戦力野手”
2月1日に幕を開けたプロ野球の春季キャンプも、あっという間に半分が終了。各チームは近づいてきた新シーズンの開幕に向けて、徐々に実戦での調整を増やしている。
今年の1月、このサイトで『今後のドラフト戦線にも影響?オリの「28歳・子持ちルーキー指名」に見る新たな可能性』というコラムを掲載。25歳以上の社会人選手であっても指名対象となるケースが増えていることに触れたが、このキャンプでも社会人出身のルーキーが奮闘中だ。
思えば近年も、一昨年は近本光司(阪神)、昨年は小深田大翔(楽天)といったところが大活躍を見せているように、1年目から期待以上の存在感を発揮する社会人出身選手、特に野手が増えているように感じる。そこで今回は、「社会人出身野手」にフォーカスを当ててみたい。
プロでの成功率が半端ない!
2015年~2019年の5年間のドラフトで、社会人からNPB入りした野手は全部で34人に達する。2016年と2019年の2年間は、ともにわずか3人と少なかったが、それでもレギュラークラスとして活躍している選手は多い。改めて各球団の主力となっている選手を並べてみると、以下のような顔ぶれとなった。
▼ 西武
・源田壮亮(トヨタ自動車→16年・3位)
[通算成績] 541試 打率.273(2164-591) 本10 点176 盗119
▼ ロッテ
・藤岡裕大(トヨタ自動車→17年・2位)
[通算成績] 330試 打率.237(1099-261) 本11 点96 盗25
▼ 楽天
・小深田大翔(大阪ガス→19年・1位)
[通算成績] 112試 打率.288(378-109) 本3 点31 盗17
▼ オリックス
・福田周平(NTT東日本→17年・3位)
[通算成績] 324試 打率.256(1047-268) 本3 点77 盗59
▼ 巨人
・大城卓三(NTT西日本→17年・3位)
[通算成績] 285試 打率.267(753-201) 本19 点88 盗1
▼ 阪神
・糸原健斗(JX-ENEOS→16年・5位)
[通算成績] 415試 打率.277(1402-389) 本7 点124 盗14
・近本光司(大阪ガス→18年・1位)
[通算成績] 262試 打率.281(1060-298) 本18 点87 盗67
・木浪聖也(Honda→18年・3位)
[通算成績] 205試 打率.256(660-169) 本7 点57 盗4
▼ 中日
・木下拓哉(トヨタ自動車→15年3位)
[通算成績] 203試 打率.239(460-110) 本10 点48 盗0
・阿部寿樹(Honda→15年・5位)
[通算成績] 308試 打率.268(981-263) 本21 点130 盗5
▼ DeNA
・戸柱恭孝(NTT西日本→15年・4位)
[通算成績] 402試 打率.215(1118-240) 本18 点110 盗0
・神里和毅(日本生命→17年・2位)
[通算成績] 289試 打率.276(843-233) 本14 点73 盗37
▼ 広島
・西川龍馬(王子→15年・5位)
[通算成績] 478試 打率.298(1413-421) 本33 点172 盗21
約4割がレギュラーに!
このように、現在レギュラークラスになっている選手を数えて見ると、指名された34人中13人ほど。ドラフトもバッティングと同じで「3割打てば(当たれば)一流」という言葉があるが、既に現時点で4割近くがレギュラーになっていることを考えると、成功率はかなり高いと言える。
また、ここに挙げた以外の選手でも、杉本裕太郎(JR西日本→15年・オリックス10位)や塩見泰隆(JX-ENEOS→17年・ヤクルト4位)、菅野剛士(日立製作所→17年・ロッテ4位)、山野辺翔(三菱自動車岡崎→18年・西武3位)ら、レギュラー獲りに期待がかかる存在が控えており、ほかにも足立祐一(パナソニック→15年・楽天6位)や岸田行倫(大阪ガス→17年・巨人2位)、田中俊太(日立製作所→17年・巨人5位/現・DeNA)、若林晃弘(JX-ENEOS→17年・巨人6位)、柘植世那(Honda鈴鹿→19年・西武5位)らが貴重なバックアップ要員としてチームに欠かせない存在となりつつある。
ちなみに、34人のうち一軍出場を果たせないまま引退したのは、松崎啄也(日本製紙石巻→15年・巨人8位)だけ。これを見ると、社会人出身の野手が一軍の戦力になる確率は極めて高い。
一方で大卒選手の成功率は…?
比較という意味で、同じ5年間で大学から支配下指名でNPB入りした選手を調べてみると、55人という数字となった。この中でレギュラークラスになっているのは以下の顔ぶれだ。
▼ 楽天
・茂木栄五郎(早稲田大→15年・3位)
[通算成績] 534試 打率.280(2027-568) 本51 点199 盗41
・田中和基(立教大→16年・3位)
[通算成績] 295試 打率.235(891-209) 本28 点81 盗37
・辰己涼介(立命館大→18年・1位)
[通算成績] 228試 打率.227(565-128) 本12 点53 盗24
▼ オリックス
・吉田正尚(青山学院大→15年・1位)
[通算成績] 533試 打率.323(1902-614) 本91 点307 盗17
・大城滉二(立教大→15年・3位)
[通算成績] 499試 打率.236(1436-339) 本10 点98 盗41
・中川圭太(東洋大→18年・7位)
[通算成績] 156試 打率.248(508-126) 本5 点45 盗12
▼ 巨人
・吉川尚輝(中京学院大→16年・1位)
[通算成績] 220試 打率.271(722-196) 本12 点64 盗24
▼ 阪神
・高山 俊(明治大→15年・1位)
[通算成績] 429試 打率.253(1267-320) 本20 点135 盗21
・大山悠輔(白鴎大→16年・1位)
[通算成績] 451試 打率.268(1506-403) 本60 点247 盗11
▼ 中日
・京田陽太(日本大→16年・2位)
[通算成績] 544試 打率.249(2091-520) 本16 点149 盗68
▼ DeNA
佐野恵太(明治大→16年・9位)
[通算成績] 286試 打率.296(749-222) 本30 点117 盗塁1
高山・京田・田中は新人王となり、佐野と吉田は首位打者を獲得するなど、見事な成功を収めている選手もいるが、人数は11人と意外と少ない結果となった。
これ以外では、柴田竜拓(国学院大→15年・DeNA3位)や山崎晃大朗(日本大→15年・ヤクルト5位)、太田光(大阪商業大→18年・楽天2位)といった面々が、レギュラーに近いポジションにいるものの、この3人を当たりとカウントしても、成功率は3割には届かない。
過去5年間では社会人が優勢
ということで、「過去5年間」に関して言えば、早く戦力となる野手を求めるのであれば、大学生よりも社会人の方が有効だったと言える。
今年のルーキーも数は少ないものの、中野拓夢(三菱自動車岡崎→阪神6位)や今川優馬(JFE東日本→日本ハム6位)、三好大倫(JFE西日本→中日6位)といったところがキャンプからアピールを続けており、開幕一軍入りの可能性もありそうだ。
一方、今年のドラフト候補となると、藤井健平(NTT西日本)や船曳海(日本新薬)、山本卓弥(Honda熊本)、火ノ浦明正(NTT東日本)など、打撃に魅力のある外野手が多いのが特徴。内野手では、大型でスケールが魅力の中川智裕(セガサミー)と、小柄ながらスピードとミート力が光る水野達稀(JR四国)のタイプの異なる2人のショートが面白い。
ここで挙げた6人は、昨年の都市対抗でも結果を残しており、最初のアピールには成功したと言える。今年も継続して結果を残していけば、ドラフト戦線を賑わす存在になることは間違いないだろう。
☆協力:プロアマ野球研究所