センバツNo.1注目選手
3月19日(金)に開幕する『第93回選抜高等学校野球大会』。2月23日には組み合わせ抽選会も行われ、1回戦の対戦カードも決定した。
「春はセンバツから」という言葉もあるが、今年のドラフト戦線もこの大会から大きく動いていく。プロアマ野球研究所では、この春の大舞台に出場する有力候補も積極的に紹介していきたい。
今回は、好投手が揃う今大会の中でも“注目度No.1”と言える右腕を取り上げる。
▼ 小園健太(市和歌山)
・投手
・185センチ/85キロ
・右投右打
<2020年・秋季近畿大会成績>
3試(22回) 防御率0.41 WHIP0.59
奪三振21 被安打10 与四死3 失点1(自責1)
奪三振率8.59 被安打率4.09 四死球率1.23
<主な球種と球速帯>
ストレート:138~152キロ
カーブ:110~113キロ
スライダー:123~128キロ
カットボール:128~136キロ
ツーシーム:125~135キロ
☆クイックモーションでの投球タイム:1.22秒
「最速152キロ」が先行して報道されるが…
冒頭でも触れたが、今大会における最大の注目選手と言えば、市立和歌山のエース・小園健太となるだろう。
入学直後から“140キロ超えの1年生”と評判になり、2年夏には早くも最速152キロをマーク。和歌山県内の独自大会では1試合のみの登板となったものの、智弁和歌山を相手に4回を投げて1失点と好投を見せた。余談にはなるが、ベースボールキングのYouTubeチャンネルで展開している『みんなのドラフト』の企画でも、昨年の11月の段階で「2021年ドラフト候補の筆頭」として小園を紹介している。
筆者が実際にそのピッチングを見たのは、秋の近畿大会の初戦・東播磨戦だ。予定の都合で最後まで見ることはできなかったが、序盤のピッチングからも、その大器ぶりは十分にうかがうことができた。
まず、前述したように“最速152キロ”という数字がどうしても先行して報道されるが、決してスピードばかりが目立つ投手ではない。むしろ、小園の長所を挙げていった時に、「ストレートの速さ」というのは4番目くらいに来るという印象である。
最も魅力に感じた点が、「打者を見ながら投げられる」というところだ。
特に立ち上がりは制球重視だったが、相手がどのボールを狙っているのかというところをよく見極めながらピッチングしているように見えた。
初回に投じた球数はわずか10球だったが、明らかなボール球はなく、スライダーやカットボール、ツーシームを上手く混ぜながら、打者にフルスイングを許すことがなかった。高校生、特に2年秋の段階だと、まずは自分のことだけで精一杯ということも多いが、小園はそのような雰囲気は全くない。自分のベストボールを投げるというよりも、相手打者の力量を見ながら、抑えるために必要なボールを操ることができているのだ。高校2年でこのような雰囲気を持っていることは、150キロのスピードを投げるよりも貴重だろう。
変化球の質も“超高校級”
もちろん、打者を抑えるのに必要なフォームの良さも備えている。特に目立つのが「下半身の使い方」だ。
軸足に体重を乗せようという意識が強く、ステップにも粘り強さが感じられる。沈み込むような動きがなく、体重移動も極めてスムーズだ。
逆に、上半身には無駄な力が入っておらず、肘の使い方も柔らかい。下半身と上半身の連動性も良く、バランスの良さも感じられた。時折、変化球の時に体が一塁側に流れるのは気になったが、それも極端ではなく十分修正できる範囲のように見える。185センチという長身でありながら、これだけ体の使い方が上手い投手も珍しいだろう。
そして、投げるボールでストレート以上に驚かされたのが「変化球の質」だ。
特に打者の手元で横に滑るカットボールと、鋭く落ちるツーシームは高校生レベルのボールではない。ツーシームは2種類を投げ分けているとのことだったが、その通り速さと変化の大きさにもバリエーションがあった。この変化球をしっかりコーナー・低めに集められたら、高校生ではなかなか対応は難しいだろう。
昨秋の時点でも十分に1位候補であることは間違いないが、ドラフトの目玉となるために求めたいのは、やはり「ストレートのアベレージの速さ」だろう。
佐々木朗希(ロッテ)は別格としても、奥川恭伸(ヤクルト)や高橋宏斗(中日)の2人も、最終学年ではコンスタントに150キロ台をマークして一躍目玉となっただけに、小園にもそのような期待は当然かかってくる。
その期待に応えるようなストレートを投げることができれば、2021年のドラフトの目玉としての地位はますます確固たるものになるだろう。
☆記事提供:プロアマ野球研究所