2021.03.04 15:00 | ||||
読売ジャイアンツ | 3 | 終了 | 2 | 東京ヤクルトスワローズ |
東京ドーム |
第12回:「バッテリー強化」の行方は
キャンプでの取り組みは実を結ぶのか――。ヤクルトは2月の春季キャンプで古田敦也氏を臨時コーチとして招き「バッテリー強化」を図った。
昨季のチーム防御率は12球団ワーストの「4.61」。投手陣をリードする捕手の面々を見ても、中村悠平や嶋基宏のケガもあり、固定しきれずにシーズンを終えている。
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「優勝チームに名捕手あり」という野村克也氏の哲学のもと、ヤクルト黄金期の名捕手として君臨した古田氏。そのコーチングは、2年連続最下位からの巻き返しに向けて大きな財産となったはずだ。
選手たちは「古田の教え」を実戦に向けてどう生かしているのだろうか。2月のキャンプ中に行われた練習試合は、まさに絶好の機会となった。
一軍キャンプに参加した4年目の捕手・松本直樹は「古田さんはブルペンからピッチャーと意思疎通して、ピッチャーの持ち味をどう生かすのかというのを常に考えていた」と、“教え”を振り返る。
古田氏は、師匠である野村氏が口にしていた試合に臨むまでの「準備」の大切さを教えたかったのだろう。
松本は「ひとつのボールに対しての意図がバッテリーの中で共有してやれているのかなという風には思います」と、ブルペンから投手としっかり話し合いを行い、試合に臨めている手応えを口にしている。
さらに、古田氏のミーティングに参加した影響から「ピッチャー自身がすごく考えてピッチングをやっている」という実感を得たという。
その中でも「吉田大喜は、自分のボールに対しての理解というか、こういう風にバッターを打ち取るんだというのが明確にブルペンからも見える」と、2年目右腕が飛躍する予感をキャッチャー目線から感じ取っている。
吉田大喜は昨季のルーキーイヤーに2勝を挙げ、2年目は開幕ローテーション入りも期待されている。キャンプの成果を今季の成績につなげられるか、注目したい右腕だ。
小川泰弘が行うブルペン投球
一球一球に意思を持ち、根拠のある投球をすることが、打者を打ち取るために必要となる。
今キャンプ、ブルペンで松本を相手に投げ込んでいた小川泰弘は「2-0からフォーク」と口にし、打者を追い込んだ場面を想定して投球練習を行っていた。
この練習法の詳細について松本は「ただ低く投げるだけじゃなくて、バッターを誘うようなボールを投げるのか、意図を持って『このカウントでどこに投げるのか』という風に取り組んでいる」と、説明してくれた。
他の投手陣もこのような投球練習を行っているが、「小川さんはカウントを自分の中で指定して、右バッター、左バッターというのも指定して投げている。審判のストライクのジャッジも確かめている」と、小川は以前からこのスタイルの練習に取り組んでいるという。
小川は昨季10勝を挙げ、史上82人目のノーヒットノーランも達成している。171センチという小さな体で相手打者を抑え込めるのも、こうした実戦をイメージした練習の賜物であることは間違いないだろう。
今季3度目の実戦登板となった3月4日の巨人戦(東京ドーム)では、力のあるストレートと変化球のコンビネーションで巨人打線に挑み、4回途中7安打2失点の内容。82球を投じた。
すでに2年ぶり5度目の開幕投手に決定しており、「新しく課題も見つかりましたし、開幕に向けてしっかりと課題を潰していきたいです」とコメント。開幕勝利を見据えて調整を続ける。
先発投手陣の苦しい現状は否めないヤクルトだが、今季のチームスローガンにある「進化」を着実に体現していこうとする姿勢がチーム内にはある。
2月24日には、前ソフトバンクのバンデンハークの獲得を発表。3月1日には、廣岡大志との交換トレードで巨人から田口麗斗を獲得した。実績のある左右の投手を新たに補強し、逆襲へのシナリオが整いつつある。
古田氏が築いた黄金時代のようなバッテリーの再現はあるか。3月26日の開幕へ向け、ツバメたちが新たな道を進み始めている。
取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)