コラム

DeNAの救世主となるか? 窮地の中で好機を掴め【白球つれづれ】

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DeNA・牧秀悟

白球つれづれ2021~第11回・家貧しくして孝子顕る


 開幕まで、10日余りとなった15日、DeNAは前巨人・宮國椋丞投手の入団を発表した。

 昨年オフに自由契約となり、12月の12球団トライアウトにも挑戦したが、朗報はなく、忘れられかけていた。しかし、水面下で調査を進めていたDeNA側から今月に入ってテストの報せがあり合格。育成契約ながらNPB復帰の夢がかなった。

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 発表の席に立ち会った三原一晃球団代表の説明によれば「自由契約になった段階から注目していた。外国人の状況があったから、宮國投手を獲ったわけではない」という。

 確かに、2013年には巨人で開幕投手に指名されたほどの好素材。その後も毎年のように先発の6〜7番手候補として期待されながら近年は未勝利のシーズンが続き、一、二軍を行き来する状態が続いていた。186cmの長身から150キロ近いストレートを投じ、スライダーも鋭い。戦力層の厚い巨人では弾き飛ばされたが、ひとつきっかけを掴めば“大化け”も期待できる存在だ。

 球団としては、今季の外国人選手が未だに来日できないこととは無縁というが、果たしてそうなのか? 外国人だけでなく、チーム全体を見渡しても三浦大輔新監督が気の毒になるほど大きな危機の中で開幕を迎えようとしている。

 投手陣は大黒柱がいない。エース・今永昇太と3年前の新人王である東克樹が手術明けで出遅れは確定的。先発の一角を担った井納翔一は巨人にFA移籍した。貴重なセットアッパーだったスペンサー・パットンも退団。それらの穴らを埋めるべく獲得したフェルナンド・ロメロをはじめ、エドウィン・エスコバーやマイケル・ピープルズらの外国人投手に来日のメドが立っていない。

 オープン戦でも浜口遥大、大貫晋一、平良拳太郎ら先発投手要員の名前は挙がるが、内容はピリッとしない。猫の手も借りたい状況では、近いうちに宮國が支配下登録を掴んで、一軍のマウンドに上がっても不思議ではない。


チームのピンチは定位置獲りのチャンス!


 野手陣に目を転じても苦しいスタートとなる。12球団で唯一10人の外国人選手全員が未来日で、助っ人不在の影響を最も受けそうなのがこのチームだ。4番・佐野恵太の前後を固めるライター・オースティンとネフタリ・ソト選手が開幕に間に合わず、勝負強いホセ・ロペス選手も退団。打線の骨格を担っていただけ、容易に替えは利かない。さらに梶谷隆幸選手も巨人に移った。

 こんな八方ふさがりのようなお家事情にあって、孝行息子の出現を期待させるのがドラフト2位ルーキーの牧秀悟選手である。

 沖縄キャンプの紅白戦ではチーム1号の本塁打を放って注目を集めると、その後のオープン戦でもコンスタントに成績を残している。14日の楽天戦には「3番・一塁」で先発出場し、憧れの田中将大投手からマルチヒットを記録。球界を代表するエースからの快打は、首脳陣に開幕スタメンをアピールする格好の材料ともなった。

 中大時代は3年秋にチーム15年ぶりの優勝に貢献してMVP、大学日本代表の4番も務めた強打者だ。阪神の怪物ルーキー・佐藤輝明選手に注目度では譲っても実力では引けをとらない。本来なら一塁にはソトが回り、二塁の定位置を田中俊太や柴田竜拓選手らと争うはずだったが、コロナ禍の特殊事情で大役を任されそうだ。

 巨人の原辰徳監督は言う。「選手というのは、チームのために戦うのは当たり前だが、一方では個人事業主」なのだと。さらに加えるなら、プロの世界はレギュラーと控えの差も紙一重。チームのピンチは、レギュラーの座が約束されていない選手には最大のチャンスになる。

 育成から再スタートの宮國も、ソトの代役として3番に座る牧も、結果を残せば新たな景色が見えてくる。巨人時代にはさしたる成績を残せていなかった平良は移籍後に開花した。2年前は代打専門だった佐野が昨年は主将として4番を打ち、首位打者に輝いている。これ以上の生きた教材もないだろう。

 彼らが新たな風を起こした時にチームは勢いを得る。新戦力の動向はいつも興味深い。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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