コラム 2021.03.16. 07:09

宜野座旋風に、ライアンの全国デビューも…歴史に名を刻んだ「21世紀枠」出場校

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成章(愛知)に甲子園初勝利をもたらした投手は…? (C) Kyodo News

“宜野座旋風”が甲子園を席捲


 いよいよ3月19日(金)に開幕が迫る『第93回選抜高等学校野球大会』。この大会ならではのシステムと言えば、「21世紀枠」と呼ばれる特別な出場枠だろう。

 秋の大会の勝敗のみではなく、文武両道の模範的な姿勢や困難な状況に打ち勝っての快進撃、または地域貢献の活動などなど…。多角的な選出基準によって、なかなか甲子園出場のチャンスに恵まれない学校に付与される聖地への切符。2001年から導入されて今やすっかり定着しているが、一方で基準のあいまいさや、一般選出校に比べて実力的に劣るチームも少なくないことから、批判的な声もある。


 そんな賛否両論が渦巻く「21世紀枠」だが、過去に出場した57チームの中には、ファンの記憶に残る戦いぶりを見せた学校もあった。

 最初に名前が挙がるのが、制度導入の初年度・2001年に出場した宜野座(沖縄)だ。

 「村近辺の出身者でチームを構成し、地域密着度も高い」という理由で選出されたように、21人の3年生のうち11人が宜野座中の出身。そのチームが前年秋の沖縄大会を制し、九州大会でも8強入りを果たしたこともあって、実力的にも一般選出校と遜色がなかった。


 初出場の甲子園でも、初戦で岐阜第一を7-2と圧倒。“歴史的1勝”を挙げると、桐光学園と浪速も下し、なんと堂々の4強入り。「これで、選ばれなかった学校に、“自分たちも戦える”ということを伝えられると思う」と安富勇人主将が語ったように、“宜野座旋風”が翌年以降も21世紀枠を継続させる追い風になったのは言うまでもない。

 なお、宜野座は同年夏にも連続出場を果たし、春に敗れた仙台育英に7-1で雪辱。そして、2年後の2003年には、九州大会準V校として、一般枠で2度目のセンバツ出場を果たしたことも特筆に値する。


創部103年目の甲子園初勝利


 ヤクルトのローテーションを支えている“ライアン”こと小川泰弘。彼が世に出るキッカケをもたらしたのが、2008年の成章(愛知)だ。

 1906年創部の同校は、2006年・2007年と2年連続で21世紀枠に推薦されながら、補欠2位・補欠1位とあと一歩届かず…。それでも、東三河地区の中核を担う進学校であることと、福祉協力校としてのボランティア活動が評価され、“3度目”の正直が実現した。


 「地元のチームを強くしたい」と、中学のチームメイトとともに同校に入学したのが小川。170センチと小柄ながら、内角胸元を直球で突く強気の投球が身上。甲子園でも、開会式直後の第1試合となった駒大岩見沢戦で、持ち味の制球力を武器に、内角を効果的に攻める。

 成章は4回に1点を先制したが、その裏にエラーで追いつかれ、5回にも挟殺プレーの際の悪送球で1点を勝ち越されてしまう。だが、バックに足を引っ張られても、エースは気持ちを切らすことなく、6回以降を散発の2安打・無失点に抑える。

 この我慢の投球が功を奏し、8回に味方打線が3安打を集中。3-2と逆転に成功すると、9回一死二塁のピンチも、小川が後続2人をいずれも内野ゴロに打ち取り、創部103年目の甲子園初勝利を挙げた。

 同年は安房、華陵も完封勝利で成章に続き、21世紀枠3校が揃って初戦突破という史上初の快挙も実現している。


残念だった「前代未聞の暴言」


 一般選出校に勝利した結果、対戦校監督の球史に残る大失言とともに記憶されているのが、2010年の向陽(和歌山)だ。

 海草中時代の1939年夏にエース・嶋清一が5試合連続完封、しかも、準決勝~決勝と連続ノーヒットノーランの快挙で優勝。翌40年も連覇を達成した偉業に加え、その後、若くして戦死した嶋投手の生涯を通じて平和について学んでいること、部員全員が進学塾に通いながら、平日2時間半の練習をやりくりして前年秋の近畿大会に出場したことなどが評価され、3枠目の最後で選出された。


 1回戦の相手は、2年連続出場で前年秋の中国大会の覇者・開星。下馬評は相手有利ながら、4回に敵失に乗じて広げた二死一・三塁のチャンスに連続タイムリーで2点を先制。試合の主導権を握る。

 エース・藤田達也も変化球が低めに決まり、7回まで被安打3の無失点と付け入る隙を与えない。9回に白根尚貴の二塁打で1点を失い、なおも無死二塁のピンチも、落ち着いて後続3人を打ち取り、2-1で逃げ切り勝ち。実に45年ぶりの甲子園での勝利を挙げた。

 藤田は「100点満点。嶋さんが支えてくれたと思う」と大先輩に感謝。部員全員に2007年に発刊された嶋投手の伝記を読ませた石谷俊文監督も「勝つとしたら、こういう勝ち方かなと思っていた」とナインの健闘をたたえた。


 一方、敗れた開星・野々村直通監督の対応が大きな波紋を呼んだ。

 悔しさのあまり、「今日は日本中に恥をかきました。21世紀枠出場校に負けるのは末代までの恥。こんな試合にしかならないのは、自分に能力がないということ。もう野球をやめたいし、死にたい。腹を切りたい」とコメント。センバツの特色と言える21世紀枠にケチをつけられた形の高野連はこの発言を問題視し、世論も「前代未聞の暴言」と炎上した。

 そんな騒ぎをよそに、向陽は2回戦で山崎福也(現・オリックス)、高山俊(現・阪神)らの日大三に1-3で敗れたものの、準V校相手の善戦で、実力でも一般選出校に引けを取らないことを証明した。


 このほか、24年ぶりに帰国した北朝鮮の拉致被害者である蓮池薫さん・祐木子さん夫妻のスタンド応援風景が話題になった2003年の柏崎、組み合わせ抽選直後に「もう勝った!」とガッツポーズする相手ナインにカチンときて、優勝候補から意地の1勝を上げた2005年の一迫商、OBである東国原英夫氏の宮崎県知事当選を祝うかのように、初出場の甲子園で完封勝利を飾った2007年の都城泉ヶ丘なども印象深い。

 今年は八戸西(青森)・三島南(静岡)・東播磨(兵庫)・具志川商(沖縄)と、2013年以来となる史上最多タイの4校が出場するが、この中から新たな記憶に残る好チームが生まれるか注目される。


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)
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