第14回:“レギュラーじゃない”選手たちの奮起は
「主力選手がいない中で、僕らみたいなレギュラーじゃない選手はすごいチャンスだと思って、ここで結果を出してやろうという強い気持ちで試合に入りました」
主力が相次いで離脱する緊急事態の中、塩見泰隆はこう言った。今季4年目の27歳。走攻守と非凡な才能を持ちながらもレギュラーをつかみきれていない。
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昨年も外野のレギュラー候補に挙げられ、開幕は5番に抜擢されたが、度重なるケガの影響もあって43試合の出場に終わった。それでも高津臣吾監督は、今季も開幕から6番スタメンで起用。「走る方も守備の方も、もちろん打つ方も高いレベルでいろいろ求めている」と、大きな期待を寄せている。
ヤクルトは3月31日、捕手の西田明央が新型コロナウイルスに感染したことを発表。さらに、青木宣親、内川聖一、川端慎吾のベテラン3人が濃厚接触者に特定され、自宅待機を余儀なくされた。そんな苦しい状況の中、外野のレギュラーである青木の離脱は、塩見にとって大きな“刺激”となったはずだ。
塩見は開幕戦から6試合連続安打。ここまで打率.345、1本塁打、8打点の成績を収めている。オープン戦では結果を残せず苦しんだが、打開を図るために周囲に助言を求めた。
「ヒットがほしいという思いが強くて、力んでフルスイングしていた」という塩見に、川端が「コンパクトに打ったら絶対に打てるよ」とアドバイス。「それを打席でやるようになってからはボールが見えるし、変化球にも対応できる」と手応えをつかんだ。
「今年こそはレギュラーを取るという気持ちで1試合1試合、頑張っていきたいと思います」。その言葉が、決意の表れだ。
6年目の山崎晃大朗も負けられない
塩見と同い年である6年目の山崎晃大朗も、外野の定位置取りへ負けられない。
山崎は昨季、7月の月間打率.329、得点圏打率も.320とレギュラーをつかんだかと思わせるほどの好調ぶりだったが、8月に入り急降下。キャリアハイの109試合に出場したものの、打率.245でシーズンを終えた。
今季初のスタメン出場は開幕3戦目の阪神戦。第4打席でレフトへ安打を放つと、その試合から4試合連続の安打。11-11と打ち合いになった4月1日のDeNA戦(横浜)では、7回二死二、三塁の場面でDeNAの5番手・平田から三塁線へ鮮やかな2点適時二塁打を放ち、2試合連続の猛打賞を記録した。
「チームが良いムードでしたし、投手も変わった直後だったので初球から積極的に打ちにいこうと決めていました。良い所に飛んでくれて良かったです」と、最大5点差から1点差に迫る価値ある一打に喜びをかみしめた。
必死のアピールが必要な20代の選手たち
開幕から好調だった青木、5番打者として機能していた内川が抜けた。右膝付近に自打球を当てた影響で坂口智隆も抹消されている。さらに、山田哲人は下半身のコンディション不良もあり万全とはいえない状態だ。
21歳の村上宗隆が不動の4番として座るが、その他はこれまでレギュラーを奪い取れていない20代の選手たちで競争していく。
31日の試合から5試合連続でスタメンに起用され、主に「6番」を任せられている24歳の太田賢吾には、チャンスメイクだけでなく、出塁率の高い村上を還すポイントゲッターとしての役割も求められる。
太田だけではない。将来のクリーンアップ候補として期待される同じく24歳の中山翔太、打撃だけでなく俊足でもチームに貢献したい23歳の渡邉大樹、育成から這い上がった3年目26歳の松本友らは、それぞれ必死のアピールが必要だ。
主力野手が不在の中、高津監督は「こんなこともあっての野球だと思うし、人生だと思う。つらいとき、ピンチのときをどうやって乗り越えるか」と前を向く。
巨人との3連戦を1勝1敗1分けで終えたが、チャンスであと1本が打てずに苦しむ場面も見られた。6日からは広島を相手に神宮球場で3連戦。開幕3連敗を喫した本拠地での今季初勝利をつかみにいく。
1年目に蒔いた種を2年目に収穫すると、今季のチームスローガンにも掲げた高津ヤクルト。いまこそ「真価」を発揮し、逆境をはね返す。
文=別府勉(べっぷ・つとむ)