中日・木下雄介の悪夢を乗り越えるための戦いがはじまった (C) Kyodo News

◆ 開幕一軍をほぼ手中に収めていたなかで…

 歩く姿は痛々しい…。右肩脱臼のリハビリでナゴヤ球場に通う中日・木下雄介投手(27)。その肩はいつも固定されている。

 外すのはリハビリの最中だけ。右投げ右打ちの右利き。日常生活はなるべく左手を使い、食事の時は箸を左手で操る。

 悪夢は3月21日、本拠地で行われた日本ハムとのオープン戦。それまで登板全5試合を無失点で切り抜け、開幕一軍をほぼ手中に収めたなかの6試合目。チームにとってもこれがオープン戦最後の試合だった。

 出番は8回。二死を奪い、打席には淺間大基。4球目を投げたところで、突然、右腕を押さえてうずくまる木下。ショッキングなシーンを目の当たりにした与田剛監督やチームメイトも慌てて駆け寄る。動くことができない男は担架に腰を掛け、そのままグラウンドを後にした。

 診断は脱臼。関節が外れるから、周囲の筋肉や腱の損傷も大きい。そこからリハビリ生活がはじまった。

◆ 「ケガなく乗り切りたい」順調な歩みも…

 開幕前の不運は今季だけではない。

 昨季は春季沖縄キャンプの最終盤でノックのボールを追いかけ、左足首を脱臼。その後、手術を受けている。

 その時は全治約4カ月。松葉杖の生活を強いられながら、何とか復帰。昨季は18試合に登板した。

 そして迎えた2021年シーズン。「ケガなく乗り切りたいです」。キャンプ前はこう話し、順調にメニューを消化。オープン戦でも結果を出した。

 まさに最後の最後のところで、今年も試練が待っていた。

◆ 右腕を支えるチームメイトの存在

 同期入団や、同学年による助け船が救いとなっている。

 肩を脱臼した当日は、二軍メンバーの笠原祥太郎が荷物を運ぶため、バンテリンドームナゴヤに駆けつけてくれた。

 同じ2017年入団の京田陽太も合わせて、3選手は家族ぐるみのつきあい。京田は頬を伝う涙を隠そうともせず、木下の心中を察しながら励ましのメッセージを送っている。

 形は違っても、右腕を気遣うのは主将・高橋周平も同じだった。

 「1年前もそうだし、なんでこんなになっちゃうんだよ」。まず、やり場のない感情を共有。そして、主将自身が足繁く通う岐阜県内の治療院の存在を伝え、勧めた。

 そこには、竜戦士や他球団の選手も複数通っている。多少の違和感や痛みを抱えながらプレーするのは、アスリートにとっての日常。持てる能力の最大限のパフォーマンスを発揮するための助けとなる場所。主将が「最後の砦。あそこいってダメなら、もうダメ」と表現する場所だ。

 負傷から数日たって、木下はバンテリンドームナゴヤへ足を運んだ。現状報告など、やるべきことはある。その時だった。すれ違いざまの高橋から「もう行った?早く行けよ」と声を掛けられた。

 強気な態度なのは主将らしさ。木下からすれば、まずはケガを受け入れ、球団から用意されたメニューをこなす日々で目いっぱい。ただ、復帰に役立つ情報を自ら探し、つかみ、試して、合うか合わないか判断するプラス・アルファもアスリートにとって必要だと分かっている。すぐに行くかどうか。「考えなくちゃいけない」と感じたという。

◆ 「できることを少しずつ」

 生きるのは、転ぶたびに起き上がってきた過去の経験。徳島・生光学園高から駒大へ進むも、右肩の故障で退学している。地元・大阪へ戻り、不動産会社に勤めていたこともある。

 悶々とした日々を送る木下を野球へ戻したのは、高校時代の四国選抜のチームメイトの存在。同じく徳島・小松島高の増田大輝(現・巨人)が四国IL・徳島でプレーしていることを知り、野球熱が戻った。再び徳島に戻り、増田と同じユニフォームに袖を通したのだった。

 150キロ超の速球を取り戻す日は来るのか…。

 まずは日常生活から。ウエート・トレーニングやプールでのウォーキング、さまざまなメニューをこなして筋力を補強し、ボールを握る。二度と脱臼しないように細心の注意をしながら、一歩ずつ、地道な作業は続いていく。

 木下には笠原や京田や高橋、そして足を売りに巨人で活躍する増田の存在がある。妻がいて子どももいる。

 「できることを少しずつやっていきます」

 リハビリが一筋縄でないことは百も承知。先の見えない道を、足元を確認しながら歩いて行く。右腕は1人ではない。道を照らしてくれる仲間はいる。

文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)


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