Honda・片山皓心が圧倒的な存在感
3月9日から12日まで行われた社会人野球の『東京スポニチ大会』。春のセンバツの前、アマチュア野球の主要カテゴリーではシーズン最初の公式戦ということもあって、連日多くのスカウト陣がネット裏に詰めかけた。
先週は今年のドラフト候補について取り上げたが、今回は活躍が目立った“ルーキー”たちを紹介したい。なお、選手の年齢はすべて2021年の満年齢となっている。
まず、投手でルーキーながら圧倒的な結果を残したのが、Hondaの片山皓心(23歳/日立一高-桐蔭横浜大)だ。
昨秋の横浜市長杯では3試合を1人で投げ抜いてチームを優勝に導き、今大会では予選リーグの初戦でいきなり1失点完投勝利をマーク。
準決勝では、三菱自動車倉敷オーシャンズに敗れたものの、再び9回を1失点という見事な投球を披露して大会の新人賞を受賞している。
何度見ても素晴らしいのが、下半身の使い方だ。
軸足一本で真っすぐきれいに立つと、そこでためを作り、そのまま椅子に座るように“ヒップファースト”でステップ。スムーズに体重移動して腕を振ることができている。
上半身に無駄な力みがなく、リリースに力が集中しているのが特徴。腕を振って投げられる縦のスライダー、チェンジアップも高いレベルにあり、試合終盤にスピードがアップするスタミナも十分だ。
今大会で確認できた最速は143キロだったが、コンスタントに145キロを超えるようになれば、プロ入りの可能性は高くなるだろう。
目玉に続く注目投手は…?
片山と同じサウスポーで目立ったのが、JFE東日本の宇賀神陸玖(23歳/作新学院高-富士大)である。
高校時代は今井達也(現・西武)、入江大生(現・DeNA)に次ぐ3番手だったが、大学で順調にレベルアップ。今大会では予選リーグの初戦で先発を任されると、2回までに4三振をマークするなど抜群の立ち上がりを見せ、5回を2失点としっかり試合を作った。
今大会でのストレートの最速は143キロと驚くようなスピードはないが、コンパクトなテイクバックでボールの出所が見づらく、数字以上に勢いを感じる。スライダーとチェンジアップも打者の手元で鋭く変化し、どちらも決め球として使えるボールだ。
3回以降は少し制球を乱したが、序盤に見せたような投球を続けることができれば、来年のドラフト候補に浮上してきそうだ。
また、片山とともに新人賞に選ばれたのが、明治安田生命の森井徹平(23歳/日大高-日本大)だった。
大学では他の投手に隠れて目立った活躍はできなかったが、今大会はいきなり4試合中3試合にリリーフで登板。決勝トーナメント進出がかかった沖縄電力戦ではロングリリーフで5回と1/3を無失点、5奪三振と好投し、チームの逆転勝利に大きく貢献した。
175センチとそれほど上背があるわけではないが、投げる時の姿勢が良く、たくましい体格から投げ込む140キロ台中盤のストレートには威力がある。変化球もしっかりと腕を振って低めに集めることができ、制球力は申し分ない。前述したように大学までにそれほど多く起用されておらず、今後の伸びしろという意味でも楽しみな存在だ。
存在感を見せた“大型右腕”
右投手でもう一人、良いアピールを見せていたのが、TDKの大関竜登(23歳/真岡工高-白鴎大)だ。
昨年秋のリーグ戦では4勝をマーク。続く横浜市長杯は残念ながら登板機会はなかったが、大型右腕としてスカウト陣の注目を集めていた。
今大会の鷺宮製作所戦では、リリーフで登板して1回と0/3を2失点と悔しいデビューとなった。だが、先発を任された三菱自動車岡崎戦では、5回を被安打3、7奪三振の無失点で勝ち投手となっている。
何と言っても目立つのが184センチの長身で、ボールの角度は申し分なく、打者の手元で微妙に動く球筋が特長。スピードは140キロ台前半で、最速は142キロにとどまったが、体作りが進めばまだまだ速くなりそうな雰囲気がある。TDKには若手に楽しみな投手が多いだけに、チーム内のライバルと切磋琢磨をして、レベルアップを目指してもらいたい。
その他の投手では、リリーフで抜群の安定感を見せた東京ガス・益田武尚(23歳/嘉穂高ー北九州市立大)、ENEOS戦で6回までノーヒットの快投を見せた日本製鉄鹿島・大津亮介(23歳/九産大九州高-帝京大)といった面々も、1年目から主戦としての活躍が期待できそうだ。
野手で強烈なインパクトを残した選手は…
次に野手を見てみよう。最も強烈なインパクトを残した選手と言えば、Honda鈴鹿の栗原健(23歳/常葉菊川高-亜細亜大/外野手)である。
今大会は全3試合で「1番打者」としてフル出場。12打数5安打で1本塁打と見事な活躍を見せた。173センチと上背はないが、抜群のヘッドスピードと長打力が魅力だ。
加えて、三菱自動車倉敷オーシャンズ戦ではスリーベースの三塁到達で11.14秒をマークするなど、脚力は社会人でトップクラス。大学時代は思い切りの良さがなくなっていたが、高校時代のパンチ力を完全に取り戻した印象だ。3拍子だけでなく長打力も備えた存在として、今後もスカウト陣の注目を集めることになるだろう。
また、栗原以外にも、今大会はルーキーの外野手が目立っていた。
同じHonda鈴鹿の小川晃太朗(23歳/龍谷大平安高ー同志社大)は2盗塁と持ち味のスピードをアピールしたほか、昨年春に東京六大学で首位打者に輝いている明治安田生命の永広知紀(23歳/大阪桐蔭高-法政大)も、強打の2番打者として長打力を発揮。このほか、神奈川大学リーグで通算108安打を放ったJFE東日本の関龍摩(23歳/福井商高-関東学院大)も、社会人初打席でいきなりタイムリーを放ち、シュアな打撃を披露した。
内野手では、日本新薬の橋本和樹(23歳/龍谷大平安高-立命館大/三塁手)が沖縄電力戦で一発を放ったほか、数少ない高校卒のルーキーでは、ENEOSの度会隆輝(19歳/横浜高/二塁手)が社会人初ヒットをマークしている。
近年、社会人からプロ入りする野手は少ない傾向にあるとはいえ、能力の高い選手は決して少なくなく、実は即戦力として1年目から戦力となるパターンも多い。
今回紹介した選手たちが今後さらにレベルアップし、スカウト陣にアピールしてくれることを期待したい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所