コラム 2021.04.19. 20:00

善戦ヤクルトにキーマンあり【白球つれづれ】

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ヤクルト・中村悠平選手

白球つれづれ2021~第16回・攻守の要として


 ヤクルトが猛虎の進撃に飲み込まれた。甲子園での連敗で阪神には開幕カードから5連敗。それでも19日時点で8勝8敗(3分け)と5割をキープしている。考えようによっては他のチームには3敗しかしていない。開幕前、大方の予想は最下位となっていたことを考えれば善戦のすべり出しといっていい。

 負け方にも意味がある。18日の同カード。一時は0対8のワンサイドゲームとなったが、終盤に反撃に出ると最後は3点差まで迫った。この試合は異例の「警告試合」となったが、村上宗隆、塩見泰隆選手が死球を受け、逆に大山悠輔選手にぶつける一触即発の展開。

 もちろん、故意の死球ではないが、ヤクルト側から見れば、初戦でも山田哲人選手と塩見がデッドボールを喫している。その日の阪神先発が制球に難のある藤浪晋太郎投手だったとはいえ、それだけヤクルト主力には厳しい攻めが必要だったという事だろう。


獅子奮迅の「2番・捕手」


 緊急事態の中で開幕を迎えた。新型コロナウィルスの陽性判定と濃厚接触などで青木宣親、内川聖一ら主力選手を含む6人が一時選手登録を抹消されるなど、チーム内外で動揺が走った。

 そんな一大事にあって、獅子奮迅の働きを見せてきた選手がいる。選手会長の中村悠平捕手だ。若き主砲・村上の驚異的な一発や、塩見の成長も見逃せないが、目を見張る大変身では、この男だ。

 実は「瓢箪から駒」の2番・捕手の誕生だった。コロナ禍で満足な打順も組めない。中村と正捕手を争っていた西田明央選手も戦列離脱。困り果てた高津臣吾監督が打った勝負手が2番打者に中村を起用すると言うもの。これが見事にはまる。

 度重なる故障で、昨年はわずか29試合しか出場機会がなく、打率も「.175」と不振にあえいでいたチームリーダーが、安打を重ねていく。今月15日のDeNA戦では初回に先制アーチ。接戦を5投手の継投で競り勝って同カード3連戦3連勝を決めた。

 2番打者と言えば、今やエンゼルス・大谷翔平選手の代名詞。近年では巨人の坂本勇人選手ら強打者が座ることも珍しくない。しかし、捕手の2番となると、最近では阪神・梅野隆太郎、西武・森友哉ら、ある程度打撃力を兼ね備えた選手に限られる。だが、中村の場合は決して強打者ではない。今季1号は自身2年ぶりの一発。2番・捕手としては球団史上初の快挙だ。

 打率もこの時点では3割を超えている。今では指揮官も「いろんな作戦をこなしてくれる」と、つなぎ役としても高い評価を与えている。本来の2番である青木が戦列に復帰しても中村の打順を代えることはなかった。それほどチームに欠かせない打者になったということだ。


合言葉は「俺たちで勝つ!」


 大変身の裏には大物OBの存在が大きい。今春の沖縄キャンプに臨時コーチとして指導にあたった元監督の古田敦也氏である。就任1年目の昨年、高津監督が掲げたのは投手陣の立て直しだった。だが、結果は惨憺たる有様でチーム防御率は「4.61」。2年連続12球団ワーストで最下位に沈んだ。

 古田氏招請の背景には投手を含めたバッテリー間の再強化がある。特にヤクルト黄金期の名捕手は中村らに「信頼されるキャッチャーになれ」と檄。ブルペンでは1球1球の配球の意図から捕球、送球まできめ細かいアドバイスを送った。打撃に関してもかつての首位打者からの一言が突き刺さった。

 「教わる一つひとつが宝物、財産、金言です」と中村は語っている。かつてはレギュラーが当たり前だったものが、選手として曲がり角に立ったとき、大先輩からの指導が何よりの教材と刺激になった。

 投手陣の台所は相変わらず苦しい。小川泰弘にアルバート・スアレスくらいしか勝ち星の計算できる先発投手はいない。それでも、将来のエース候補である奥川恭伸や4年目の金久保優斗らがプロ初勝利を挙げるなど、明るい材料も見え始めた。チーム防御率も現時点では3点台半ばで去年より大幅に改善されている。

 「俺たちで勝つ!」。開幕前に捕手陣が集まって作った合言葉である。投手が弱体なら、少しでも捕手の力で失点を食い止める。少しでも打撃で貢献して勝利を呼び込む。心技体の充実が中村快発進の源だ。

 捕手とは激務のポジションである。ケガはつきものの上、相手チームの研究にも神経をすり減らす。このまま「2番・捕手」を続けられれば最高だが、再び下位打線に回っても今季の中村の存在感は変わらない。2015年にはベストナイン、ゴールデングラブ賞に輝いた実績の持ち主。6年ぶりの脚光を手放すつもりはない。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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