各地でルーキーが存在感
3月26日(金)のプロ野球開幕から早6週間…。3・4月の戦いが終わり、各チームが35試合前後を消化した。
今季序盤の隊列が定まってきた中、ここまでを振り返って見ると、例年以上にルーキーたちの活躍が目立っているように思う。
セ・リーグでは、広島の栗林良吏がすっかり絶対的なクローザーに定着したほか、阪神の佐藤輝明もリーグ3位の9本塁打にトップタイの25打点をマーク。DeNAの牧秀悟も打撃3部門でトップ10内にランクインするなど、早くもルーキーが投打の中心的存在となっている。
パ・リーグを見ても、楽天の早川隆久が4月中に3勝をマーク。日本ハムの伊藤大海は勝ち星にこそ恵まれていないが、歴代4位となる23イニング連続奪三振を記録するなど苦しむチームの中で奮闘。
これまで名前が挙がった上位指名組だけでなく、西武のドラフト4位・若林楽人が両リーグ断トツの14盗塁を記録して盗塁王レースを牽引するなど、いたるところから新人の奮闘ぶりが伺える。
空前の「ルーキー当たり年」──。
今回はそのイメージが正しいかどうか、過去3年間の全ルーキーが記録した成績を検証。今季ここまでの成績と見比べてみた。
【2018年】
投手:36勝34敗5セーブ28ホールド
野手:538安打34本塁打192打点70盗塁
【2019年】
投手:49勝54敗8セーブ48ホールド
野手:640安打41本塁打229打点64盗塁
【2020年】
投手:34勝30敗0セーブ21ホールド
野手:220安打11本塁打73打点21盗塁
【2021年】
投手:9勝10敗8セーブ8ホールド
野手:126安打21本塁打76打点22盗塁
※5月6日終了時点
広島のルーキートリオが大活躍
5月6日を終えた段階での試合数は、全体の4分の1程度。それを考えれば、今年は投手・野手ともに過去3年間を大きく上回りそうなことはすぐに見て取れる。
もう少し細かく見ていくと、まず先発投手では、早川と伊藤に2ケタ勝利の期待がかかる。
ルーキーで2ケタ勝利をマークする投手が2人以上出れば、2014年の大瀬良大地(広島)と石川歩(ロッテ)以来だ。
このほか、阪神の伊藤将司が2勝に、ロッテの鈴木昭汰も1勝をそれぞれマークしている。鈴木は高い奪三振率、伊藤将司は安定したコントロールが魅力で、これから勝ち星を伸ばす可能性も高いだろう。
さらのDeNAの入江大生や、ヤクルトの山野太一といったところも、プロの洗礼を浴びる形にはなっているものの、早くからチャンスをもらっているようにチームの期待は大きい。
では、リリーフ投手はどうだろうか。
やはり目立つのが広島のルーキートリオ。栗林良吏と森浦大輔、大道温貴が躍動している。ちなみに、先ほど触れた今年のルーキーの成績のなかで「8セーブ・8ホールド」とあるが、これはこの3人が叩き出したものだ。
このなかでも、圧倒的な存在感を見せているのが栗林である。常時150キロを超えるストレートと鋭く落ちるフォークで、イニング数を大きく上回る三振を奪っている。
“ルーキー”という枠に留まらず、今季の12球団のクローザーのなかで最も安定していると言っても過言ではないだろう。
本塁打は年間100本近いハイペースで量産
つづいて野手。こちらは投手よりもさらに目覚ましい活躍を見せている。
今季ここまでにルーキーが記録した本塁打は21本。すでに昨年の記録を上回っており、このペースでいけば、年間で100本近い数字となる計算だ。
佐藤が9本、牧が6本を放っているほか、若林やブランドン、渡部健人といった西武勢に加え、ヤクルトの元山飛優も既にプロ初ホームランを放っている。
これに加えて、阪神の中野拓夢も規定未達ながら打率.344を記録する好調ぶりでレギュラーを奪う勢いがあるほか、ヤクルトの並木秀尊は持ち味のスピードを発揮し、“足のスペシャリスト”としてチームに欠かせない存在となっている。
過去を振り返ると、2017年には源田壮亮(西武)が155安打、京田陽太(中日)が149安打を放ち、いきなり大活躍を見せた。
しかしながら、ここまで強打者とリードオフマン、それぞれのタイプがバランスよく揃っている年は、過去10年を遡っても見当たらない。
また、二軍ではキャンプで話題を振りまいた巨人の秋広優人を筆頭に、オリックスの来田涼斗や西武の山村崇嘉など、高卒ルーキーが早くから中軸を任されるなど、将来的に成長が楽しみな選手も非常に多い。数年後には、“過去最高の野手陣”と評される可能性も大いにありそうだ。
現時点で大豊作ともいえる今年のルーキーたち。今後も球界に新たな風を送り込む選手の活躍にぜひ注目してもらいたい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所