ヤクルト投手陣に見えてきた光明
開幕からセ・リーグ首位をひた走る阪神、リーグ2連覇中で今季も優勝候補筆頭に挙げられる巨人を3位で追走するのがヤクルトだ。そんなヤクルトが2015年以来となるリーグVを飾るための最大の課題というと、なんといっても投手力である。
2019年、2020年と2年連続でリーグ最下位に終わったヤクルト。山田哲人、村上宗隆、そして新外国人選手であるサンタナ、オスナといった強打者を擁する打線は球界屈指の破壊力を誇る。しかし、最下位に沈んだ直近2シーズンのチーム防御率は、ともに他球団に大差をつけられてのリーグワーストであり、本拠地が打者有利の神宮球場ということを差し引いても投手陣の立て直しは最重要課題だ。
現在、ヤクルトのチーム防御率は「4.21」。チーム防御率4.63でペナントレース最下位に沈むDeNAにこそまさっているものの、他の4球団には大きく水をあけられている。今季開幕からしばらくは中継ぎ陣の奮闘もあって踏ん張っていたが、ここにきてその中継ぎ陣が打ち込まれる場面も増えてきた。
その状況を踏まえると、中継ぎ陣の負担を軽減すべく先発陣の奮起が不可欠となる。その先発陣では、開幕投手を務めた小川泰弘やベテラン・石川雅規が出場選手登録抹消中で、スアレスもこのところ打ち込まれるシーンが目立つ。しかし、一方で光明も差してきた。
新型コロナウイルス対策の隔離期間を終えてすでにスタメンに名を連ねているオスナ、サンタナの両外国人野手に続いて、新外国人投手のサイスニードが5月9日の巨人戦に初登板を果たした。また、5月8日のイースタン・リーグDeNA戦で4回1安打無失点と好投したバンデンハークも間もなく一軍に昇格すると見ていいだろう。
プロ入り4年目となる金久保雄斗は先発を中心に3勝、奥川恭伸も5月5日の阪神戦で6回2失点と結果を残し、プロの水に慣れてきた感がある。
「即戦力」の期待に…
しかし、本来であれば一軍でバリバリ投げているべき投手もいる。2019年、2020年のドラフトで上位指名された大卒投手たちだ。
ヤクルトは、奥川を1位指名した2019年ドラフトの2〜4位、2020年ドラフトの1位、2位で計5人の大卒投手を指名している。もちろん、最重要課題である投手陣立て直しのために即戦力と期待しての指名だろう。ところが、その5投手は、一軍で好結果を残すところにまで至っていない。
奥川に次いで2019年ドラフト2位で入団した吉田大喜は開幕一軍入りを果たしたものの、結果を残せず開幕直後の4月1日に登録抹消。5月9日にようやく再昇格したばかりだ。同年ドラフト3位の杉山晃基はリリーフで登板した5月4日の阪神戦で2/3回4失点と打ち込まれ、現在の防御率は「6.35」。同年ドラフト4位の大西広樹と2020年ドラフト1位の木澤尚文はまだ今季一軍昇格を果たせていない。2020年ドラフト2位の山野太一は4月1日のDeNA戦に先発するも1回1/3で7失点と期待を大きく裏切ってしまい、翌日に登録抹消となった。
他球団を見てみれば、パ・リーグ新人王候補筆頭の早川隆久(楽天)、鈴木昭汰(ロッテ)、伊藤大海(日本ハム)、大道温貴(広島)ら新人大卒投手が即戦力としてチームに大きく貢献している。「彼らのようにヤクルトの上位指名大卒投手も活躍してくれていれば……」ともどかしい思いを抱えているファンも多いのではないだろうか。
ただ、見方を変えれば、ヤクルトには上がり目があると見ることもできる。ドラフト上位指名の選手がそろってチームに貢献できずとも、ペナントレース3位からさらに上位への進出をうかがっている状況だ。シーズン中に5人の大卒投手のうち、ひとりでもふたりでも一軍の戦力として定着するようなら、ヤクルトがセ・リーグの台風の目となっていく可能性もあるだろう。
※数字は5月9日終了時点
【ヤクルト2019、2020年ドラフト上位指名大卒投手の今季成績】
吉田大喜(2019年ドラフト2位):3試合4回 0勝0敗0H0S 6奪三振 防御率13.50
杉山晃基(2019年ドラフト3位):3試合5回2/3 0勝0敗0H0S 2奪三振 防御率6.35
大西広樹(2019年ドラフト4位):一軍登板なし
木澤尚文(2020年ドラフト1位):一軍登板なし
山野太一(2020年ドラフト2位):1試合1回1/3 0勝0敗0H0S 3奪三振 防御率47.25
清家茂樹(せいけ・しげき)