奪三振数はリーグ断トツ
ここまで抜群の安定感を誇る中日・柳裕也。
5月24日、交流戦開幕前時点の防御率1.83と67奪三振はリーグトップ。セ・リーグを代表する投手として挑む交流戦で、どんな結果を出すか。
交流戦前最後の登板は、5月16日のヤクルト戦。
初回に村上宗隆に2ランを許したものの、2回からは立ち直って7回2失点。一発以外の失点を許さなかった。
チームが追いついて勝敗はつかず。9つの三振を奪い、67奪三振は2位の濵口遥大(DeNA)に16個の差をつけるリーグ断トツの数字である。
エース・大野も成長を実感したシーン
この日、目を見張るシーンが3回にあった。
「1点もやれない場面でよく抑えたと思います」とは、昨季の沢村賞投手・大野雄大の言葉だ。
まず2点を失った初回、打線は先頭の大島洋平が二塁打を放って無死二塁。内野ゴロ2つでも1点を返せる場面だったが、京田陽太と福田永将が連続三振。
ダヤン・ビシエドも左飛に倒れ、大島を本塁に迎えるどころか三塁にすら進めることができず、無得点に終わっている。
1点を返すかどうかで、投手の投球スタイルも変わる。
打線はチーム打率も得点数もリーグワースト。柳にとって3点目を奪われることは、敗北を意味する。
だから村上と2度目の対戦となった3回は、二死一・二塁から四球を出し、ホセ・オスナと勝負。外角いっぱいに投げきって、見逃しの三振に仕留めた。
1点差であれば、対村上の場面で大胆に投げられていたかは分からない。2点差であったから四隅を突き、あらゆる技術を駆使してスコアボードに「0」を刻んだ。
意識した巨人のエースとの投げ合い
右腕が成長を示したシーンは、4月30日の巨人戦でもあった。
敵地での試合で、かつ巨人の先発は菅野智之。
「1週間前から投げ合うことは分かっていました。意識してやってきました。球界を代表する選手なので、投げ合えるだけで勉強になります」
マッチアップは2019年8月8日のナゴヤドーム以来。2年前は勝敗つかず。白黒付ける再戦だった。
柳はブレなかった。
2回に早くも円陣を組む相手ベンチを見ても、味方の守備の乱れがあっても心を落ち着かせる。
「円陣は見ていました。自分の投球に集中しようと、そう思いました」
7回、先頭スモークの飛球は左中間へ。中堅・滝野は左翼・根尾と交錯し、グラブ内に当てるも捕球しきれず(記録はヒット)。続くウィーラーに右中間への適時二塁打を許した。
それでも、表情ひとつ変えずに投げきった。7回を被安打4、失点2。奪三振9のうち坂本・丸・岡本で計7つは圧巻。宿敵の絶対エースとの投げ合いを制した。
前回の交流戦は3戦3勝!
感情のコントロールについては「昨季、未熟な部分がたくさん出たので、今年は意識してやっています。うまく切り替えられたと思います」と語る。
マウンドに上がれば、コントロールできることと、できないことがある。操作できない外部要因に目くじらを立て、精神的に不安定になる。それじゃあ、あまりにもったいない。
菅野は「技術があれば、メンタルは関係ない」と語っている。技術の絶対的自信は感情をコントロールし、堂々と投げられる。
日本を代表する投手との投げ合いで柳が見せたのは、高い技術に基づくマウンドさばき。まさに菅野のスタイルだったのだ。
チームは昨季8年ぶりのAクラス入りを果たした。時間を掛けてようやく壊した壁に、再び阻まれるわけにはいかない。
交流戦は浮上のきっかけのひとつ。2019年の交流戦は3度登板して3勝した。
6月7日の楽天戦では7イニング、14日のロッテ戦は完投、そして21日の日本ハム戦も7イニングを投げ、いずれも1失点に抑えている。
2年ぶりとなる交流戦、竜投には頼れる男・柳裕也がいる。
文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)