コラム 2021.06.02. 11:21

まさかの誤審で記録がストップ…交流戦で「不運」に泣いた男たち

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連続試合安打がストップし、苦笑いを浮かべるラミレス (C) Kyodo News

連続試合安打記録が…


 連日各地で熱戦が繰り広げられている『日本生命セ・パ交流戦』。

 ベースボールキングでは、交流戦の開催に合わせて過去の“交流戦珍事件”を振り返る特集を展開中だ。




 2年ぶりの開催となる交流戦。ふだんとは違う戦いとはいえ、当然ながら通常のペナントレースと同様、記録はしっかりと残る。

 今回は、個人記録がかかった交流戦の試合で、快挙を目前にしながらも思わぬ“不運”によって記録が幻となった男たちを紹介したい。

 まず一人目が、誤審によって連続試合安打がストップしてしまった、巨人時代のアレックス・ラミレスである。



 2008年6月6日のロッテ戦。この日まで歴代9位タイ、外国人では歴代3位(いずれも当時)の27試合連続安打の快挙を続けてきたラミレスだったが、1回の第1打席で三ゴロに倒れると、2打席目・3打席目はいずれも二ゴロと、足踏みが続く。

 そして、3-3の8回二死で迎えた4打席目も、久保康友の外角変化球を引っかけ、ボテボテの当たりが三塁へ。ラミレスはあきらめることなく、一塁へ全力疾走。すると、サード・今江敏晃からの一塁送球より早く一塁ベースに達したように見えた。


 ところが、山本隆造一塁塁審の判定は「アウト!」──。

 「100パーセントセーフと思った」というラミレスは顔色を変えて抗議したが、判定は覆らなかった。

 だが、スローVTRを見ると、タイミングは完全にセーフに見え、翌日のスポーツ報知に掲載された写真でも、ラミレスが一塁ベースを踏んだとき、送球はまだファースト、フリオ・ズレータのミットの手前だった。明らかに誤審である。


 結局、試合は3-3のまま延長戦に突入。ラミレスにもう1打席回ってくる可能性も残っていたが、10回にプロ初打席の加治前竜一のサヨナラ本塁打が飛び出し、5打席目は幻に。

 「終わってしまったことは仕方がない。審判がVTRを見て、『間違った』と思ってくれればいい」と割り切るラミレスに対し、翌日「昨日は間違えてごめん」と山本審判が謝罪したという話も伝わっている。


開幕連勝記録が…


 つづいて、開幕からの連勝記録がかかった試合で9回を1失点に抑えながら、不運にも敗戦投手になったのが、オリックス時代の西勇輝だ。


 2014年5月28日の中日戦。開幕から無傷の8連勝と白星街道を驀進中の西は、この日も中日打線を6回まで内野安打1本に抑える快投。7回二死から森野将彦、エクトル・ルナの連続長短打で1点を許したものの、9回を3安打、9奪三振で1失点に抑えた。

 ところが、皮肉なことに味方打線も6回を除く毎回走者を出しながら、大野雄大から福谷浩司、岩瀬仁紀の3投手リレーの前に決定打を奪うことができず、終わってみれば、0-1の惜敗…。

 本来なら勝ち投手になってもおかしくない内容だったのに、「人間ツイてないときは、こんなもの」の典型のようなまさかの展開。連勝が止まった西は試合後、顔を真っ赤に紅潮させ、報道陣の問いかけにも一切答えることなく、バスに乗り込んだ。


 その後、広報を通じて「(7回の)ピンチを抑えられず、チームが連敗してしまい、とても悔しいです」のコメントを発表。ナゴヤドームでの試合とあって、お隣り三重県の母校・菰野高野球部の後輩たちも応援に駆けつけていただけに、無念さもひとしおだったはずだ 

 だが、「西はしっかり投げた。失点後も気持ちを切らさず投げられる投手に成長している。今後も際どい試合で投げていくことになるので、今後に生かしてほしい」という森脇浩司監督の激励に応え、右腕は同年キャリアハイの12勝を記録。6年ぶりのCS進出にも大きく貢献している。


オリックスにさらなる不運が続く


 交流戦でのオリックスの不運はなおも続く…。

 西の連勝ストップから3日後の5月31日の巨人戦。今度はもう一人のエース・金子千尋(現・弌大)が、幻のノーヒットノーランに泣いた。 


 1回表、巨人の攻撃を3者連続三振に切って取った金子は、3四球を許したものの、8回までに11三振を奪い、無安打無失点。

 9回も一死から四球と送りバントで二死二塁としたが、阿部慎之助の中前に抜けるかという打球をショート・安達了一がジャンプ一番好捕。見事9回をノーヒットノーランに抑えきった。


 しかし、3日前の中日戦同様、味方打線も巨人の先発・菅野智之、2番手・山口鉄也から8回までに8安打を放ちながら、決定打を欠き、ゼロ行進を続ける。

 9回裏、何とかして金子に史上79人目(90回目)の栄誉をプレゼントしようと、安達の遊撃内野安打と送りバントで一死二塁と一打サヨナラのチャンスをつくる。皮肉にもここで金子に打席が回ってきたことから、森脇監督は勝負をかけて代打・駿太を送った。

 駿太は敬遠され、二死後、原拓也も四球で満塁としたが、エステバン・ヘルマンが右飛に倒れ、スリーアウトチェンジ。この瞬間、金子のノーヒットノーランは幻と消え。試合も延長12回の末、0-1の敗戦…。

 惜しくも記録を逃した金子は「ノーヒットだったのは知っていましたが、最後まで0-0でいっていたので、そちらに気持ちがいくことなく、最後まで投げられました。9回裏にサヨナラなら記録(達成)で、それはそれでうれしいけど、僕の使命はチームに勝ちをつけること。それができなかった」と悔しさをのぞかせた。


 一方、7回まで無失点に抑えた菅野は、2日前に祖父の原貢氏を亡くしたばかり。「天国で見ているじいちゃんのために」と気力を振り絞って投げつづける姿がファンの胸を打った。

 残念ながら快記録こそ生まれなかったが、金子vs菅野の息をのむような投手戦は、そのドラマ性も含めて、交流戦史に残る屈指の名勝負と言えるだろう。


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)
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