老獪な投球で阪神・佐藤を手玉に。元同僚の杉内に並んだ和田
6月6日の対阪神戦、ソフトバンクのベテラン・和田毅が偉大な記録を成し遂げた。
2007年以来、14年ぶりとなる甲子園球場で登板した和田は、セ・リーグの首位をひた走る阪神の強力打線を相手に7回無失点、8奪三振という圧巻のピッチングを披露。なかでも大物ルーキー・佐藤輝明との3度の対戦は変化球を中心に組み立てた頭脳的な投球でいずれも三振を奪うなど、見所十分なものだった。
これで今季4勝目を挙げた和田だが、この勝利は同時に自身の交流戦での通算26勝目を達成したことになる。交流戦の勝利数歴代最多だった、かつての同僚・杉内俊哉の記録に並んだ。
今季18年目を誇るベテランだからこそ成し遂げられた記録だが、交流戦が創設されて今季で15年目ということを考えたら、和田に肉薄する勝利数を誇る投手は当然いる。もしかすると、和田や杉内の記録を更新する投手が出てくるかもしれない。
残り6試合で上位3人の先発登板は?
以下は、交流戦での通算勝ち星が多い投手になる(現役投手は6月6日終了時点での成績)。
▼ 交流戦通算勝利数トップ10
26勝 杉内俊哉(巨人他)
26勝 和田 毅(ソフトバンク)※
25勝 涌井秀章(楽天)※
25勝 石川雅規(ヤクルト)※
23勝 久保康友(DeNA)
22勝 内海哲也(西武)※
21勝 田中将大(楽天)※
21勝 成瀬善久(オリックス)
20勝 岸 孝之(楽天)※
19勝 館山昌平(ヤクルト)
※=現役
所属=NPBの最終所属球団
勝ち星が多い投手のトップ10に名を連ねる投手のうち、実に8名がパ・リーグのチームに所属経験があるように、交流戦でセを圧倒してきたパ・リーグの投手が多かった。やはりそのなかでも抜きん出ているのは、交流戦最多優勝を誇るソフトバンクでの在籍経験が長い杉内と和田。両者とも交流戦が創設される直前にプロ入りして、交流戦の試合数が年間36試合もあった初期の頃から先発ローテーション入りしていたことで、勝ち星を稼いだ。
その2名に肉薄しているのが、現役の涌井秀章と石川雅規である。交流戦が創設された2005年にプロ入りした涌井はプロ初勝利もヤクルトとの交流戦で挙げている。17年目を迎えた今季も6月4日の対広島戦で勝利して、通算25勝となっている。今季中に、勝利数としては最多の26勝に並ぶ可能性もあるだろう。
上位投手のなかで唯一、セ・リーグのチーム生え抜き投手として名を連ねたのがヤクルトのベテラン左腕・石川。交流戦1年目の対ソフトバンク戦でバティスタに死球を与えた際、一塁へ向かおうとするバティスタが自らに迫ってくると勘違いしてマウンドから逃げ出すという珍エピソードがあったが、交流戦での強さは目を見張るものがある。今季もシーズン2度目の登板となった6月4日の対西武戦で、5回1失点のピッチングで勝ち星を挙げた。
今年の交流戦では、涌井、石川、和田にもう一度先発登板のチャンスがありそうだ。残り6試合となった今季の交流戦、この3人のベテランならではの投球術に注目してみたい。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)