第19回:強化されたセンターライン
ヤクルトのキャプテン・山田哲人が上り調子だ。5月の打率は.231と低調だったが、6月に入り交流戦の後半から徐々に本領を発揮。福岡ペイペイドームで行われた6月12日・13日のソフトバンク戦で7打席連続安打を記録し、3本塁打をマークする活躍を見せた。
6月は12試合で打率.319、6本塁打、13打点の成績を収めている。12日の試合では、6回の第3打席でライトのポール直撃の15号ソロを放つと、続く8回の第4打席ではレフトスタンドへ勝ち越しの16号2ラン。「ホームランというよりも後ろにつなぐ気持ちでした。インコースの球でしたが上手く反応して打つことができました」と、自画自賛した。
さらに翌13日は、5回の第3打席にレフトスタンドへ17号2ラン。「緩い球でしたが、前に出されることなくしっかり自分のポイントまで待つことができました」と、打撃の好調さをうかがわせるコメントを残している。
ヤクルトは交流戦を10勝8敗で乗り切り、2018年以来の勝ち越しに成功。18日から再び同一リーグとの戦いを迎えるが、ここまで巨人と並ぶリーグ2位。不動の二塁手である山田が復調し、昨年に比べてセンターラインが強化されている。
捕手のポジションでは、中村悠平が存在感を発揮している。高津臣吾監督も中村の変化について「いろいろなところに意識を置くようになった」と評価。プロ13年目、31歳になった男が「扇の要」として投手陣を引っ張っている。
外野に目を向けると、4年目の塩見泰隆がセンターのポジションをつかみ取ろうとしている。ライバルである6年目の山崎晃大朗との併用で起用されることが多かったが、5月の後半から「1番」スタメンでの出場が続いている。5月は.383と高い打率を残した。
しかし、6月は12試合で打率.204と下降気味なのが気になる。レギュラーの座を不動のものにするためにも、再び調子を取り戻してアピールしていきたい。
正遊撃手の座をつかむのは誰か
ヤクルトの長年の課題でもあるのが遊撃のポジションだ。現在はプロ8年目の西浦直亨と、ドラフト4位ルーキーの元山飛優の2人が正遊撃手の座を争っている。
西浦は、今季ここまで48試合に出場して打率.208、2本塁打、13打点となかなか打撃の状態が上がってこないが、5月22日のDeNA戦(神宮)ではチーム唯一の得点となる決勝の2号ソロを放つなど、勝負強さも秘めている。守備面では安定感が増してきただけに、打撃面でもっとアピールを続けていきたいところだ。
一方、元山は守備を「一番の武器」としている22歳。ここまで43試合に出場して打率.230、2本塁打、13打点という成績だが、「1打席1打席ムダにしないように。監督にアピールできるように」との言葉通り、6月2日の楽天戦(神宮)から5試合連続でスタメンに起用されると、4戦連続安打を記録。必死にチャンスをものにしようとしている。
ただ、2日の楽天戦で1点ビハインドの7回無死一、二塁の好機に送りバントを失敗し、逆転ムードの流れを断ち切ってしまった。元山自身も「バントをしっかり試合で決められるように」と話していただけに、今後は流れを呼び込む細かなプレーも大事にしていきたい。
高津監督は「いろいろなところで判断して今日のスタメンとかを決めています」と話す。西浦と元山に対しても「いろいろなところを比べている部分がある」と、今後も2人を競わせていく。
果たしてどちらが山田と不動の二遊間コンビを形成できるのか。強く生まれ変わろうとしているチームの中で、レベルの高い争いを期待したい。
同率で並ぶ巨人を振り払い、7ゲーム差の首位・阪神に必死で食らいついていきたいヤクルト。残りの前半戦は巨人と5試合、阪神とは6試合が組まれている。オリンピックによる中断前でこれ以上離されるわけにはいかない。
取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)